現在、秦軍は王翦軍が趙の王都邯鄲に近い『武城』を攻め落とすべく動いている。そして、もう一つ、邯鄲に近い『平陽』は李信と桓騎が攻め落とすべく動いていた。
もっともその前に桓騎軍は趙の大将軍であった扈輒を誘い、討ち取るべく無理な進軍をし続けた事で多大な犠牲を出したのでその回復のために時間がかかった。
桓騎軍に従っていた王賁率いる『玉鳳』もかなり厳しい『影丘』を指示された結果、李信とオルドの援軍あって、大きな犠牲は無かったがそれなりの消耗はしたのでこちらも回復には時間がかかった。
そして扈輒を討ち取る過程で捕えた龍白公軍とその他含めて数万の捕虜を何もしないどころか食糧と水も与えて解放したので、龍白公軍以外で敗走した趙兵を纏める事で軍を立て直し、龍白公が攻めてくるのを警戒した。
オルド軍は燕国に扈輒の首を持ち帰っているのでおらず、飛信隊だけで対応しなければならないのでそれなりの犠牲を覚悟しなければならなかった。
しかし、龍白公はせめてもの恩返しなのか前線を築くだけで攻めてはこなかったのだ。
これにより、李信は桓騎と王賁の軍が回復するのを待つ事が出来た。
多少の礼と『龍白公、貴公の武人としての誇りに感謝する。全力をぶつけ合う戦をしよう』というような文面を書いた文を龍白軍へと送ると……。
『望むところ』
龍白公からそうした返答があった。
李信は桓騎と共に龍白公軍が築いている前線に向かって進軍し……軍を展開する。
これに応じて龍白公軍も軍を展開した。
そして、李信に桓騎と龍白公軍による戦が始まった。
「ふっ、ふふふ……これは扈輒様が敵わぬわけだ」
龍白公は李信と桓騎の戦略と戦術に自軍が翻弄され、圧されていくのを聞き、実際に見ながら苦笑する。全く敵わなかったのだ。
勿論、本来ならばこんな事にはならなかった。桓騎軍と王賁軍の準備が終わらぬうちに攻めれば秦軍に被害を出しながら苦戦させる事が出来た筈なのだ。
しかし、龍白たちはそうしなかった。
李信は自分達を捕えながら命を奪ったり、拷問などもせずに食事や水も振る舞い、更には解放する時も食糧と水をくれたのだ。
そんな李信からの恩に応えるには秦軍が兵を再編するのを待つくらいはしなければならないと思った。
何もせずに恩知らずな真似をするのは武人として、人として恥だと思ったのだ。
そうして李信からの文も貰い、全力をぶつけ合う戦を始めた。そうして負けている事に文句は無い。
「いくぞ、龍白公」
「おう、来い。李信」
そして本陣へと迫って来る李信を見ながら、龍白公は向かっていき……。
「はあっ!!」
「うぐっ!?」
李信はその手に政の剣を持って、紅飛を駆けさせながら龍白公へと接近していく。そうして剣を振るうと龍白公の攻撃を切り払い、返す一撃にて首へと剣を添えた。
「どうする?」
「負けだ、降伏する」
そうして、李信の問いに龍白公は降伏の道を選んだ。そうしてやはり、数万の兵と龍白公に彼の息子たちは捕虜となり……。
「李信将軍、『平陽』の重鎮の中に私の知り合いがいる。説得して降伏させよう」
「それは助かる。任せた」
「心得た」
そうして龍白公は自ら『平陽』が秦軍に降伏するように説得する事を申し出、李信は承諾。
その後、少しして『平陽』は李信達に対して降伏し、李信達は『平陽』の無血開城を成し遂げたのであった……。