趙にて李牧が趙王の死を巡って、政争に敗れて邯鄲から追いやられてしまうまでに行っていた工事は郭開が引き継いでいた。
『平陽』と『武城』から後方、砦と小山を土塁で繋ぐ事により、二百五十里は続く『長城』を築き、頑丈な城としたのである。
無論、このまま攻めるとかなり、時間がかかってしまう。だが、それなら攻めなければ良い話だ。
それにこの長城を築いた事で趙は確かに秦の北上に対して中々の防衛網を成立させた。
だが、逆に南への脱出経路を自ら封じてしまった事になるのだ。
それが故に李信は趙北部の『宜安』と『番吾』を攻め取る事で蓋をして脱出口を無くす手を取る事にした。
それに対抗するために李牧も手を打ち始めている情報を李信は掴んでいる。だが、そもそも彼はこういう状況になるよう、数年前から仕込んでいた。
「この戦いでお前を討ってやるぞ。李牧」
趙が李牧とある程度の和解をし、再び李僕たちを邯鄲に迎え入れ、総司令にした情報も掴みながら、李信は李牧との決戦に備えて手を打っていく。
オルドに次に一緒に共闘して攻める地を教えながら連絡を取り合い、秦王である政と実は密約を交わしている『斉』王に対し、秦の動きを傍観する方向性が故に斉軍の将と兵が不満を溜め込んでいるのを聞いて斉の将と兵を傭兵として雇う商談をした。
無論、相場の倍の給金だったりいろいろ高い買い物になったが、斉王である王健王は『我が軍の不満を解消してくれるのは悪い事では無いな。李信将軍のお陰で『合従軍』の時は得が出来たし、その商談、受けよう』と李信との商談を受け入れたのであった。
これにより、秦軍は精強な斉の武力を手に入れる事が出来た。
そして、更に趙北部を牽制している『閼与』にいる楊端和の元へ行き、『宜安』と『番吾』を取るための戦略と軍略を楊端和軍において影の参謀を担っている『百眼族』のハダマとウダマに相談しに向かった。
「かふ、んく、ふ、あぁ、り、しん……」
「そのまま、俺に身を委ねてろ」
更に楊端和と男女の仲にある者たちとして愛と快楽を貪りあった。
そうした用が済むと次に新年がくる中、咸陽へと『宜安』と『番吾』を攻める戦略を送っており、その中には秦の北部軍と東部軍を合わせて大軍とし、『太原』を通して趙北部に侵入する事も伝えていた。
その許可が下りたので李信は新年が来る中、絶対に李牧がこうした動きをある程度予測していると確信し、『狼孟』から精鋭による奇襲を仕掛けてくるのに備え、逆に『狼孟』を攻め取るために斉から傭兵として送られた将と兵と共に秦の北部と東部軍を集めながら、訓練を施していく。
「楽しみだな、李牧」
用意周到に準備をしていく中、李信は李牧へと呟くのであった……。