キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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百二十九話

 

 李信は趙北部の『宜安』と『番吾』を取るために『閼与』から向かう自軍と桓騎軍、王翦軍と楊端和軍とは別の軍を動かすようにした。

 

 秦の北東部軍を動かし、『太原』から東へと進軍させる事で閼与から向かう本軍と合流するようにしたのである。更にこれに加えて趙東部を占有しているオルドにも連絡して軍を送ってもらっているし、斉国と交渉する事で傭兵という扱いで顔聚と雷磐と史穴勝の三軍を送ってもらっている。

 

 そうして李信は飛信隊から僅かな二万程の兵と顔聚達、斉からの軍を加えて『狼孟』から北東部軍へ趙軍が奇襲してくるだろうと前もって読んでいたのでそれに対応するために密かに動いたのだ。

 

 更に北東部軍にも趙の狙いを伝えていたので北東部軍の総指揮官を務める曹波広へは陽動として動くように伝えていた。

 

 これにより、趙軍の奇襲部隊へと李信達は逆に奇襲を仕掛け、趙軍が動揺している間に曹波広が呼応して挟撃し、趙軍の奇襲部隊を壊滅させた。

 

 

 

 勿論、全滅ではなく降伏して二万近くは捕虜になっていたりはするが……。

 

 だが、実は李信の手はこれだけでは無かった。

 

 更なる仕込みをしていたのである。

 

 

 

 時間は丁度、趙の奇襲部隊が『狼孟』から秦軍の北東部軍への奇襲に向かって少しの時間帯まで戻る。

 

「『狼孟』より趙軍が数万程、進軍を開始しました」

 

「ふっ、ならばいくぞ」

 

 『狼孟』から少し離れた場所でとある軍が潜伏していた。実は李信によって、秦の北東部軍とは別の地方よりは派遣された三万ほどの軍である。

 

 大勢で動く北東部軍をこの部隊のための陽動として使っていたのだ。

 

 そうして、その軍は『狼孟』へと進軍を開始し……。

 

 

 

「っなあ!? 何で秦軍が此処にいそいで「それは困る」がっ!?」

 

「くくく、隙がありすぎるな」

 

 更に李信が年が明ける少し前から少数の商隊として潜伏させた飛信隊の諜報と工作部隊により、『狼孟』は城としての機能を失った事で大した守りも出来ずに秦軍によって中に入られ……。

 

「こ、こんな事が……これも李信将軍の策だというのか……ならば、どこまで……」

 

「ふふ、あの方曰く……『策というのは相手の手を呼んで嵌め殺しにするようなものでは無く、状況がどう転ぼうとも必ず何らかの旨みを得られるようにする事なのだそうだ』」

 

 城を占領された事で『狼孟』を守っていた者達は捕虜となりながら、項垂れてしまいそんな者の呟きに秦軍の将の一人が答えたのだった……。

 

 こうして、李信は北東部軍の幾つかの軍も連れて『狼孟』へと入城する。

 

「本当に恐ろしいお方だ。まさか、城まで取ってしまうとは」

 

「お見事というほかない」

 

「まったくもって……」

 

 

 顔聚と雷磐と史穴勝は奇襲部隊の壊滅どころか城まで取った鮮やかな李信の軍略を敬意の念を持って賞賛した。

 

「城の守りを薄くしてくれるなら、攻めない理由が無いからな」

 

 李信はそう、応じつつ本当の進軍ルートである『狼孟』から秦軍本体への合流へと向かうのであった……。

 

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