キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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百三十話

 

 李信は北東部軍を動かす事で『狼孟』から趙軍が奇襲を仕掛けてくると読んでおり、それを逆手に取った。仮にも二十一万の軍に奇襲を仕掛けるのは目的を壊滅でなく、敗走にしたとしても当然、困難だ。

 

 必然的に精鋭の力がいるようになる。逆に言えばそれだけ、城を守る力が薄くなっていく。

 

 奇襲部隊にしても奇襲してくると分かればどうとでも対応できるので李信は趙の奇襲部隊の撃退した上で守備の力が弱まった『狼孟』を取る戦略を使い、見事に成功させた事で趙北部攻略に際しての拠点をまた一つ手に入れたのである。

 

 そうして、そのまま『番吾』攻略に向けて進軍している桓騎に王翦と楊端和軍、そして自分の動きを隠すために桓騎達と動きを合わせて動いている『飛信隊』で構成された秦軍の本軍へと合流すべく、動き出す。

 

 『狼孟』から向かう飛信隊は本軍で行動している飛信隊より、五千程選抜した精鋭達である。

 

 その精鋭たちに傭兵部隊の扱いとなっている斉の軍、そして狼孟攻略のために用いられた軍も加え、城を守れるだけの戦力を残しつつ、本軍との合流地点へと向かう。

 

 そして合流地点は『宜安』のすぐ近くにある小城、『赤麗(あかれい)』だ。

 

 『宜安』攻略が長引いても戻る根城となるものを取っておけば軍の消耗は減る。それに今回はこれに加えて『狼孟』を取っているので、最悪そこに戻る事さえ出来、戦力補充の手を取る事が出来るのだ。

 

 ともかく、李信達は『赤麗』へと『狼孟』から進軍する。

 

 そもそも『狼孟』から進軍するのが向こうの警戒対象外なのもあって、ほぼ素通りで進軍する事が出来……。

 

 

 

『李信将軍、お待ちしていました』

 

 『赤麗』へと向かう本軍と合流を果たす事が出来、当たり前だが飛信隊が喜んで出迎えた。

 

 

 

「『赤麗』はどう動くと見る、李信将軍?」

 

 合流を果たした事で『赤麗』からもう少しという場所で野営をしつつ、李信は本軍の将である桓騎に王翦と楊端和軍との軍議を始め、王翦から問いかけられた。

 

 

 

「もうすでに俺のところの諜報部隊が情報を掴んでいるんですが、城の戦力は『番吾』に移されています。ああ、財宝は移されていないので部下たちに振る舞って構いませんよ。桓騎将軍」

 

「くく、代わりに又、何か頼みを聞けと?」

 

「頼まねばならない時はよろしくお願いします」

 

「くく、まぁお前との仲だからな。了解だ」

 

「ありがとうございます」

 

 桓騎は仕方ないといった態で苦笑しつつ、頷き李信は頭を下げた。

 

 

 

「幾らなんでも重要拠点近くにある城をあの李牧がただで渡すのか?」

 

「無論、そんな訳が無いですよ。ある程度戦が続いたところで『赤麗』の守りにつけた俺達の将を狙って毒を使ってきます」

 

 楊端和の質問に李信は答えた。

 

 

「随分と具体的だな」

 

「協力者がいますからね。どこの国にも不穏分子はいる……特に国を滅ぼされた恨みというのは恐ろしい物ですしね」

 

 王翦の質問に答えると……。

 

 

 

「……中山国(ちゅうざんこく)か」

 

「その通り……少し前より色々と交流しておりました。それとは別に幾つか趙北部の者の中にも俺達に協力してくれる者達がいます。李牧自身、大分、人心を失っていますしね」

 

 王翦の意見に李信は頷き、言った。

 

 

 

 中山国は元は白狄(はくてき)の国であったが六十年位前に趙に攻め滅ぼされた国である。

 

 そんな中山国の者達と李信は李牧が雁門に逃げた時くらいに先んじて密かな交流をしており、李牧との番吾に向けた戦において潜り込むようにしていたのである。

 

 実際、李牧は趙北部の力を結集するべく動いており、色々と中山国とも交流をしつつ、自分の軍勢に迎えた。迎えてしまったのだ。

 

 そして趙北部の中でも幾つか李信は李牧が動けない間に交流と取引を交わしている。よって、実は李牧が集めた軍勢の中にも李牧に敵対する軍が紛れ込んでいる状況なのだ。

 

 

 

「くくく、そうしたのはお前でもあるんだから本当、恐ろしいやつだな李信。こいつはまた面白そうな事になりそうだ」

 

「ええ、そしてこの戦で李牧を仕留めます」

 

 笑う桓騎に対し、李信はそう告げたのであった……。

 

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