趙の王都邯鄲には自分が実質的に追放される前に長城を築く事で堅固で強靭な守りを築いた。とは言っても弱点は分かっている。
というより、秦の動きを制限するために長城の守りを築いたのだ。
そして李牧は趙の北部にある『宜安』を守るために『雁門』より、自分達の動きが伝わらないように情報操作しながら北部の者達を説得したりなどしていずれ、『宜安』を攻めに来る秦軍に対抗するための戦力をかき集めながら、準備をしていたのだ。
こうして李牧たちは秦軍の動きを探りながらも『宜安』近くにある平原、宜司平原で迎え撃つ構えをし、四十五万の大軍で包囲殲滅をする予定であった。
しかし、そんな李牧の動きを李信は読んでいた。そして、飛信隊においては重要な力となっている李信の秘密部隊の諜報力であり、情報収集力であり、情報操作力と必要とあらば、どんな者とも交渉し、協力を取りつける外交力、多種多様で臨機応変な戦術に戦略を編み出す知力を駆使する事で趙軍の大戦力をさらに上回る戦力、燕軍と斉軍をも加えた七十万の大戦力で包囲してみせたのである。
一つでも気取られると李牧は直ぐに動きを変えるので李牧が兵力を集め始めた時に飛信隊の秘密部隊の精鋭を潜り込ませながら、情報を操作する事で李牧自身の策が上手く行っているようにしたのだ。
そうして自分の包囲が上手く行くと思わせた事でそれをさらに上回る包囲であり、圧倒的戦力差を用意した李信にまんまと誘い込まれてしまったのである。
通常、平地戦では圧倒的戦力差のある戦いが行われる事はめったにない。
弱小の軍のほうが開戦を避けて籠城するか退却するか降伏するからだ。
それが開戦となるには弱小の軍の方に引けぬ理由があるか、特別な秘策があるかとなる。
だが、今回は李牧の方が大軍かつ、彼の用意した策が通用したと思わせた事で開戦状態となったのだ。
「ふっ、くくく……ははははははっ、本当に楽しませてくれるじゃねえか李信。圧勝ってのも俺達は大好きだぜ……せっかく、李信が用意してくれたんだ。お前ら、思う存分、趙軍を潰すぞ」
『うおおおおおおっ!!』
桓騎は李牧を嵌めてみせた李信の手際、大軍を用意してみせたのも含めて大笑いしつつ、李信が用意した戦局を活かせるに動く事を決め、部下達へと指示をしたのであった。
「……李信はこの私をも上回る怪物だな……ふっ、見事よ。ゆくぞ、ここで李牧を葬るぞっ!!」
『はっ!!』
王翦も又、李信の戦略を賞賛しながら、李信の戦局を無駄にしないために動き始める。
「ふっ、流石は我が夫だな。さあ、李牧を討ち取り、趙を終わらせるぞ」
『うおおおおおっ!!』
楊端和も又、李信を賞賛しながら士気も高らかに動き始める。
「ははははっ、あの李牧を嵌めたか……やはり、情報操作力も李信はとんでもないようだな。ふっ、さあ李牧の首を獲りにいくぞっ!!」
『おおおおっ!!』
オルドも改めて李信と飛信隊の力に驚愕しつつ、動き始める。
「始めろ」
『おおおおっ!!』
李信も飛信隊を動かし始め、そうしてそもそも圧倒的戦力で包囲しているが故に皆、秦軍と燕軍、斉軍は趙軍へと一斉に突撃したのであった……。