趙の北部にある『宜安』を取るために燕と合同、更には斉の軍を傭兵として雇う事で七十万の大軍で秦軍は攻め込んだ。
それに対し、趙軍は四十五万で対抗する事になり、『宜司平原』で交戦する事となる。
本来なら戦力差が圧倒的な状態で交戦する事はめったにないのだが、今回、見事な情報戦略を持って、四十五万の軍隊を率いる李牧に秦軍を包囲殲滅できると思わせた。
四十五万の軍を隠し、そうしてこの『宜司平原』に誘い込む事に成功したと誤認させたまま、逆に李信は七十万の戦力で包囲殲滅できる状態にしたのだ。
こうして、七十万の大軍で包囲殲滅するために全軍が動く。
「(やられましたよ、李信将軍……ですが、まだです。まだ、私達には
李牧は李信の情報戦略に敗北したのを認めながらもしかし、この戦に向けてなんとか隠居の身から出陣させる事が出来た者の事を思う。
「成程、これは確かに厄介だ」
そして、秦軍の動きを見て呟くのは華の模様をあしらった戦衣を着ている弓手の男であり、名を
そして彼こそこの中華の大陸において弓使いの中でも優れた者に与えられる『中華十弓』の名を与えられた者であり、しかも現一位……つまりは最強の弓手であった。
「やるしかないな」
青華雲は動き、李牧に命じられた通り両軍が動く事で生じる意識の間隙を縫って移動し、遠くより敵将を射抜いて秦軍の武威を削ごうとしていたが……。
「っ!?」
瞬間、青華雲は自分の頭に矢が刺さる感覚を確かに体感する。
「馬鹿な、いったいどれほどの弓使いがっ!!」
言いながらも矢が刺さった感覚から逆算し、敵の弓使いが仕掛けてきた方向を推測して弓を構える。
「っ!!」
そして、矢が飛来してきたので撃ち落とす。
「がっ!?」
しかし、別の方向から飛来していた矢に左肩を射抜かれてしまう。
「(一人だけでなく、二人……いや、違う)」
少なくとも『中華十弓』の座を得られるほどに優れた弓の腕を持つ弓手がいる事を青華雲は察した。
「がっ……は……」
その直後、別の方向から続けて向かってきた矢により、心の臓を射抜かれる。
そして、倒れゆく青華雲の額に別方向から矢が飛来し、彼の額を射抜いた。
「(三人もいたとは……)」
青華雲は三人も『中華十弓』の座を手に出来る弓使いがいたことを把握しながら、戦士したのであった。
「良くやったぞ、曹仁、曹淡」
「いえ、李信将軍の手助けあってこそです」
「本当に凄いです、李信将軍」
青華雲の情報を得ていた李信は戦場を見ながら、彼が密かに動いていたのを自らの優れた感覚で探知して殺気を矢として放つ事で動きを止め、後は飛信隊において優れた弓使いで李信と共に弓の鍛錬も行っている曹淡に心の臓を射抜かせ、曹仁には額を射抜かせる事で中華十弓の現一位、青華雲を討たせたのであった……。