趙北部にある『宜安』を取るために七十万の戦力を用意した秦と燕に斉の軍勢と本来は秦軍を包囲殲滅するために四十五万の戦力を用意した李牧達、趙軍は『宜司平原』にて交戦を始めた。
李牧の指揮もあって対抗こそは出来ているがしかし、それでも向こうは七十万の大軍で押し寄せているので戦況は劣勢である。
「あともう少し、もう少し粘れば青華雲がやってくれます」
元々はとことん、秦軍を追い詰めるために隠居に近い生活をしていた青華雲を李牧は説得して連れてきていた。
青華雲はこの中華大陸の中でもずば抜けた弓手が得る『中華十弓』の中でも現一位という、正に弓手の中で最強である。
故に粘りながら戦えば、青華曇が次々と敵軍の将を射殺す事によって戦況を覆す事は李牧にとって、確定的であった。
そして戦況が覆れば逆転勝利し、敵軍を壊滅に追いやる事も自らの頭脳と自分が連れてきた戦力ならば出来ると思っていたのだが……。
「……おかしい、何故戦況が覆らない……」
粘れど粘れど、状況は覆らずどんどん、敵軍に押し込まれていってしまっている。青華曇の実力ならばしくじる事は無いと信じていたのだが……。
「報告っ、李牧様、青華曇様が討死しましたぁっ!!」
「っ!? ば、馬鹿なっ……そ、そんな事がある筈が……青華雲なのですよっ、それに誰が討ち取ったのですか!!」
「それが敵も名乗りを上げなかったので何者かは……」
「くっ、とことんやってくれますね李信……一度、態勢を立て直します」
李牧は追い詰められ続けているのと青華曇が討たれたとの報告で驚愕と混乱に追いやられながらも犠牲を出してでも撤退するしかないのでその犠牲を少なくしようとしていたのだが……。
「さぁて……『秦』の旗を掲げよっ!!」
李牧が必至な説得と出す事の出来る財宝をギリギリまで出して交渉する事で援軍を得られた『中山国』の者達が趙の旗を放り捨て、『秦』の旗を掲げながら趙軍のほうへと牙を剥いた。
『今こそ逆賊、李牧を討ち取る時だぁぁぁぁっ!!』
更に李牧の援軍要請に応じた幾つかの国や都市の軍勢が裏切った。そもそも、その軍勢らは李牧を討ち取るために敢えて援軍要請に応じたので当然の事ではない。
「う、裏切りだぁぁぁっ!!」
更に密かに趙軍に潜り込んでいた飛信隊の秘密部隊の者は趙軍を大きく混乱させるために叫んでいった。
当然、趙軍の指揮系統は乱れ、李牧を裏切っていない者達は疑心暗鬼に陥ってもいた。
「っ、う、裏切り……そんな……」
「な、なんだよこれ……どいつもこいつも裏切り者ばっかりじゃねえかぁ!」
「李牧様を裏切るとは正気かぁぁぁぁっ!!」
「愚か者共がああああっ!!」
李牧は数にして十万が裏切り、しかも指揮系統は乱れているので次々と追い詰められていく。
李牧の側近を務める男で口元を布で覆っている
「頃合いだな。いくぞ、李牧を今日こそ滅ぼすんだ」
そうして、どんどんと崩れて良く趙軍の様子を見て李信は動く事にし、麾下千の騎馬隊に指示をする。
『ウオオオオオオオオオオッ!!』
騎馬隊は咆哮にて応じ、そうして今、李信は戦場へと駆け始めたのであった……。