キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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十三話

 

 千人将縛虎申率いる騎馬隊に同行した信は自身の力を最大限に振るい、目標であった丘の奪取を丘に布陣していた魏の副将である宮元を討つ事で果たした。

 

 するとこの戦には参加していない筈の王騎と彼の副官である騰がこの丘へとやってきて、その移動に同行した壁と尚鹿とも縛虎申は合流し、一旦陣を設け直す。

 

 そして壁は王騎に自分たちを率いて進軍するよう、要請するも王騎は丘に来たかっただけで援軍に来た訳ではないと言った。

 

 

 

「童、信……武将には知略型と本能型の二つの型があります。ちょうど魏の総大将の呉慶さんは知略型でこの戦の総大将、麃公さんは本能型です……知略対本能は武将の中の永遠の題目ですよぉ」

 

 王騎は信に解説している間にも呉慶の布陣は変化をし、更にその陣へと駆ける軍勢の姿も見えた。その軍勢を率いるのは後ろに髪を流し、三白眼に鋭い犬歯に三又になびく顎髭と荒々しい見た目の老将である麃公だ。彼の武器は矛と盾である。

 

 戦は武将のものであると王騎は言い、呉慶は戦を理詰めの盤面と捉えるもので麃公の捉え方は燃え盛る一つの大炎だと言う。

 

 そうして、呉慶の陣へと麃公率いる騎馬隊は突撃し、そのまま蹴散らした。

 

 

 

 

「信、俺達もいくぞっ!!」

 

「はいっ、では王騎将軍……武将同士の戦をその身で感じ取ってきます」

 

「ンフフフ……何事も経験ですからねぇ、更に楽しませてくれる事を期待していますよぉ、童、信」

 

「はい、尽力しますっ!!」

 

 

 縛虎申の声に応じながら、王騎と会話を交わすと縛虎申と共に騎馬で丘を駆け下り出し、それに壁と尚鹿軍も続いた。

 

「おおおっ!!」

 

 縛虎申の騎馬隊と共に信は呉慶の布陣の中で愚鈍な隊へと突撃し、そうして巧みに馬を操り人馬一体の技を繰り出しながら、剣による壮絶なる剣捌きを繰り出す事で切り伏せていく。

 

 

 

「な、なんだこのがっ!?」

 

「お、おの……ぐばあっ!!」

 

 信の武勇は脅威となって魏軍を圧していく。

 

「く、この俺が「邪魔だ」」

 

 将やあるいは隊長だろう者も問題無く、剛閃を繰り出す事で切り裂き、討った。そのまま、麃公軍を挟み込んでいる左軍へと縛虎申の騎馬隊と共に向かう。

 

 そうして、並走する事で呉慶の軍を麃公の軍と共に挟み込んでいるという重圧をかけた。すると麃公軍が攻勢へと転じる。信はそのまま周囲を観察し……。

 

 

 

「ふっ!!」

 

 何か妙なものを感じ取り、そこへ向かって突撃する。

 

 呉慶が配置した『将狩り』の異名を有する朱鬼と麻鬼の軍が待ち伏せをしているのを見たからだ。

 

「単騎とは馬鹿め「死ねっ!!」

 

 信の姿を見て、麻鬼が始末しようと向かっていく。構わず剣閃を振るい、その首を切り飛ばした。

 

「な、きさ……」

 

 驚愕する朱鬼もまた、剣閃を振るう事で切り伏せて討ち取った。

 

「(なるほど……この(わっぱ)か)」

 

 麃公は麻鬼と朱鬼の二人を信が切り伏せるのを見ながら、この戦に大炎を巻き起こし、戦況を変えた者が信であるのを確信し……。

 

 

 

「ついて来い、小童(わっぱ)ぁっ!!」

 

「っ、はいっ!!」

 

 麃公に声をかけられた事で続いていく。そして、軍を率いる彼の戦意が兵に、自分にさえ伝わり、昂ぶってくるのを信は感じた。

 

 

 

「(これが将軍という存在……)」

 

 信は将軍の存在とその何たるかを肌身で感じ取った。

 

 

 

「先程の剣捌き、見事だったぞ」

 

「騎馬の技もな」

 

「ありがとうございます」

 

 麃公軍の兵に声をかけられたので応じる。そうして……麃公軍と共に駆けつつ、立ちはだかる敵を切り伏せていき……。

 

 目前に総大将である呉慶が剣を持って立ちはだかり、麃公も動きを止める。

 

 こうして、麃公は盾を捨てると呉慶との一騎打ちを始めた。

 

「麃公ぉぉぉぉぉっ!!」

 

「呉慶ぃぃぃぃぃっ!!」

 

 剣と矛にて切り結んでいく二人の一騎打ち……。

 

 

 

「麃公将軍は分かろうとしているんだ……」

 

「ほう、分かるか小僧……そう、武は麃公様のが上だ。だが、麃公様は相手を知ろうとするところがあるのだよ。不思議な方なのだ」

 

 切り合いをしながら、麃公は呉慶を追い詰めていきながら、会話をする。そうして、呉慶は滅ぼされた国の者であると言った。そんな呉慶の意見に……。

 

「下らん負け犬の感傷だな」

 

 

 そう断じて……。

 

「来い呉慶、秦国大将軍の名において引導を渡してやる」

 

「麃公ぉぉぉぉぉっ!!」

 

 そうして、共に相手へと馬にて突撃した二人――麃公が呉慶を矛で切り伏せ、討ち取ったのである。

 

 

 

 

「中々見事な大炎であったぞ、呉慶!!」

 

 麃公は呉慶を讃えつつ、こうして秦軍は勝ち鬨を上げる。

 

 その後は魏兵が五万を超える兵で復讐に走るかと思いきや、それは無かった。それだけ、呉慶という存在が魏にとって大きかったからであり、皆、泣き崩れていたのだ。

 

 唯一、別の丘に陣取り、この場へと向かおうとした副将白亀西の前に丘の陣で睨みを利かせていた王騎が立ちはだかり、撤退させたのである。

 

 

 

 秦軍はこの蛇甘平原での戦に勝利した。ならばこのまま更に攻め込むかと思えば……。

 

「一度昇華した大炎、すぐさま起こすは至難この上無し、全軍に告ぐ、帰国じゃあっ!!」

 

 帰国を麃公は宣言し……。

 

 

 

 

「王騎、亜水まで来い。酒を飲むぞ」

 

「残念ですが用事がありますので、私はこれで」

 

「王騎……酒じゃあっ」

 

 麃公は王騎を酒に誘う。そして、更に……。

 

「小童、名はなんという?」

 

「信です、麃公将軍」

 

「そうか、お前も来い。語ろうぞ」

 

「ココココ……良かったですねぇ、童、信。気に入られたようですよぉ」

 

 信も亜水に来るようにと麃公に誘われたのであった……。

 

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