秦が燕と斉と協力して趙北部の『宜安』と『番吾』の二つを攻め落としたその事は当然、『楚』と『韓』に『魏』にも届いた。
そうして今回の秦と燕に斉による勝利は楚と韓に魏を驚かせていたが、一番驚かせたのは趙の三大天であった李牧が李信によって討ち取られた事である。
「あーあ、とうとう李牧が討たれちまったか。趙北部もしっかりと獲られちまってるし、もう趙は終わりだな」
楚の女丞相である媧燐は秦と趙の戦においての報告を聞いて趙が滅ぶのを察した。
「つうか、ここまでやられたら本当、囲まれてじわじわ兵糧攻めするだけで済む……まじでオルドの野郎はどんだけ、秦と仲良しこよしやってるんだ。さっさと共倒れしやがれっ!!」
次の秦の方針を考えつつも相変わらず、秦と共同戦線で戦った燕のオルドに対しては怒っていて、さっさと秦と燕で同盟決裂して争い合えとも願っている。
「それに……全く動かねぇと思っていたら、『斉』め、秦と協力関係を結んでいやがったな……」
媧燐は更に李信が率いる『飛信隊』の中に斉国の将軍である顔聚と副将二人である雷磐に史穴勝がいた事、今までの斉国の動きを考えて秦となんらかの取引を結んだとも察したのだ。
「本気で色々考えねぇとなぁ……まじで怪物だ、李信は」
改めて李信は恐るべき相手だと認識しながら、考えを巡らせ始めるのであった……。
次に魏においては……。
「うーん、どう考えても趙が滅びますよねぇ、これ……あぁ、それに趙を終わらせにかかりながら他国の侵略にも余力を十分、回せますから不味いですねぇ」
軍師の玻璃は今回の秦国の動きなどを整理しながら嘆息していた。
「燕国はもう、同盟してるような状態だし斉も同じような状態みたいですし、本当、属国を視野に置くのもありかもしれませんよ。秦国、怖すぎますもん、特に李信」
「それだけでなく、まだまだ大将軍が秦には控えていますから……戦力と国力の差が……」
玻璃の意見に続いて月華広も改めて秦国の強大さに戦々恐々とした。
「……まさか、これ程の事が出来る者がいようとは」
「時代がまた変わるか」
韓においても当然、今回の秦の動きに驚愕する者多数である。
そうして、今回もいろんな国を驚かせ、あるいは恐怖させた李信はというと……。
「大将軍となって、こういう屋敷で暮らすのが夢の一つであった」
「じゃあ、叶って良かったね」
「おめでとう」
「お前が自分で叶えた夢だな」
「ああ」
自分に与えられた豪華で大きい屋敷の中で李信は『飛信隊』と『山の民軍』による宴をしており、河了貂に羌瘣、楊端和と飲みながら話をして穏やかな時間を過ごしていたのであった……。