李信は目標としていた趙国北部の『宜安』と『番吾』を攻め獲る事に成功し、そして秦国に帰還をすると考えていた通り、自分が愛していて関係を持っていた河了貂に羌瘣、楊端和と結婚し、三人を自らの妻とした。
秦国において国を代表すると言っても過言ではない英雄の座に君臨している李信の結婚とあらば、国を挙げての豪勢なものとなったのだ。
ともかく、政は勿論、王都の民まで李信の結婚を喜び、祝福したし李信の気を損ねたくないし、少しでも好印象を与えようと敵国である魏国に韓国でさえ贈り物をして李信の結婚を祝ったのだ。
「こういう穏やかな暮らしも悪くはないな」
「まあ、普段は戦地で生活しているから気を引き締めている訳だしね」
「環境に差があり過ぎるな」
「とはいえ、李信は戦いから引退するなんて事はないだろう?」
李信は自分の豪華な屋敷にて穏やかな時間を妻の三人と過ごし、身体を休めていた。
とは言っても鈍らない程度の訓練はしたりもするが……そんな李信の呟きに河了貂に羌瘣、楊端和はそれぞれ意見を言う。
「勿論だ、楊端和。俺はやはり、戦うのが一番生きているのを実感するからな。なにより、中華統一を成し遂げるまで戦いから引退して隠居したりするなんてありえない」
「だよね、勿論、俺もそうさ」
「私もだ」
「当然、私もだな」
李信はまだまだ引退しないと告げ、その件に関しては河了貂たちも同じである。
「とはえい、若手や新入りを育てる事を考えなければならないのが難しいところではある」
李信の言葉にやはり、皆が頷いた。
ともかく、李信達は秦国で戦による疲れを癒しながらもしっかり、趙を攻め獲る戦術を考えながらも……。
「(趙はもう、無理に攻めずとも堕とす事が出来る。後は他の国も攻め獲れる状況にしていかないとな)」
宜安と番吾、代国も陥落させているので趙の王都邯鄲はもはや逃走は出来ないし、遷都や亡命も不可能。後は秦国の文官が外交しつつ、諜報など駆使して趙の内部を搔き乱していき、軍で包囲しながら威圧し、兵糧攻めを仕掛けて弱らせればいいだけの話である。
燕においては趙を堕とした後にまずは交渉を続けていく事が重要。
斉は王どうしですでに話がついているので問題無いし、考えなくて良い。
魏は今までに散々、李信が痛い目を遭わせた事で特に李信を恐れるようになっている。攻めかかっていけば堕とす事は簡単だ。
楚は大国なので厄介ではある。ここは他の国を堕としてからの方が良い。
そして、一番堕とすべき国は……。
「李信、大王からの命です。一緒に韓の王都に行きますよ~」
「分かりました、王騎将軍」
こうして李信は王騎と共に使節団の護衛をしながら韓の王都である『
』に向かう事となった。
「(やっぱり、次は韓か……国の力を考えてもこっちの方が早く堕とす事にはなりそうだな)」
そう、これは韓国を堕とすための前準備なのであった……。