秦国は中華大陸を統一した後の法整備のためにも優れた法家にして、韓の王族である『韓非子』を秦の王都である咸陽に招くための使節団を韓国に派遣した。
その警護を六大将軍の二人、李信と王騎軍が担当しているがあくまで外交なので連れている兵の数は少ない。
もし、韓の全軍で攻められたりすればひとたまりもないくらいに少ないのである。本当に必要最低限の数なのだ。
とはいえ、韓は李信に王騎に手を出しては来ない。まず前提として二人は『什虎』にて何度か韓と交戦し、追い払っている。
更に李信は『合従軍』結成に合意しつつ、秦を攻めようとした当時、韓の総大将であった成恢を破って脅威を知らしめているのだ。
まず簡単に攻めたところで李信と王騎は一筋縄ではいかない相手だと理解している。
そして、そもそも使節団で来た六将を殺せば、その『不義』に秦は堂々と国を挙げて韓を攻め滅ぼす不動の口実となる。
更に列国でさえ、自業自得と韓を助ける事は無い。秦が六将二人を失う痛手と引き換えに亡国の憂き目に遭うなどそんな、割に合わない選択をする訳が無いのだ。
中華七国の中で国土的にも軍力においても『韓』は最も小さいが、それを補う知恵があるのだ。だからこそ、戦国七雄の一端に韓は立っている。
戦国を知恵で渡り合ってきたのが韓なのだ。
そうして、韓の王都である『新鄭』に向かっている李信達だがその最中にめでたい事が李信にはあった。
彼の妻の一人である河了貂が身籠ったのである。故に内心では喜んでいるが、ちゃんと警護をするために精神を落ち着かせていている。
ともかく、李信達は『新鄭』へと入る。
「おお……これは中々に壮観ですね、王騎将軍」
「こう、直接見たのは初めてですが……当時は
韓の王都である新鄭は春秋時代、中華の真ん中に普という超大国があった。
当時、普は中華の中心として華々しく栄えたのだ。その普が魏、趙、韓に分裂したためにその三国を三普と呼んだのである。
故に韓の王都である新鄭も中華の中心を飾る大都市なのだ。
だからこそ、秦の王都である咸陽よりも新鄭は豪華で巨大、その雰囲気と外観に李信は感動すらしているような声を出し、王騎も多少の感動をしていた。
そうして新鄭の本殿にまで向かっていた李信達であるが……。
「すみませんがどうか、お帰り下さい」
姫の立場であるだろう美女であり、王族の着物を着た女性が親衛隊を連れて李信達の行く道を塞いでいたのであった……。