韓の王族である『韓非子』を秦国の王都である咸陽へ招くための使節団の警護をしている李信と王騎達は韓国の王都、『新鄭』に足を踏み入れた。
そのまま本殿にまで向かおうとしたところで容姿に振る舞い、身なりからして王族の姫だろう女性であり、実際、
「韓非先生は秦へは参りません。お帰り下さい」
更に続けて言う。
「失礼……まずはお初にお目にかかります。寧姫様、私は秦の六大将軍の一人を担っている李信です。こちらは同じく六大将軍の一人である王騎将軍。まずはお見知りおきを……」
「ココココ、よろしくお願いします。寧姫様」
「っ、私の名を……」
李信が前に出ると自分と王騎を紹介しつつも寧姫の情報はある事を言外に伝えていた。
「さて、それで自己紹介を交わしたところで次の話ですが……帰れと言われても困りますな。こちらは少なくとも本殿に入る事を許された使節団なのですから、話が違うと言わざるをえません。それに寧姫様の意見は韓の総意と受け取っても良いのですか?」
「いえ、これは私一人の意志であり、無礼を承知で言っています。それでも貴方達を通したくは無いのです。李信将軍、王騎将軍」
寧姫は槍を向けながら、言う。
「先へ進みたければ、私を斬ってから行きなさい」
「私は王騎将軍の副官を務める騰と言います。困りましたな、私達は録鳴未と違って、女を斬らない」
「俺も斬らんわっ!!」
騰が前に出て寧姫へと呼びかけながら、 録鳴未をしれっと弄った。
「遠慮は無用……私を斬れば此度のやり取りは破談となり、私の目的は達成される。やってみなさい」
「寧姫様、どうかお戯れはこの辺で……」
『っ!?』
寧姫は退く気も無く、これ以上は本当に洒落にならない状況になってしまいそうだったので仕方なく、李信は威圧した。
これにより、寧姫も親衛隊も恐怖により、大きく後退り、身を震わせた。
「ま、負けません」
『……』
しかして寧姫は女傑としての才器を伺わせる片鱗を見せるように立て直す。
「双方、そこまで」
そうして、この場に黒の髪を逆上げにして固めたもので頭の右側から斜め状の傷があり、両頬には刺青のある精悍な顔つきの男の将軍、
「無礼を許されよ。私は韓軍洛亜完、此れより先、本殿まで私が案内する」
「どうやら些細な誤解があったのでしょうから、構いません。秦軍、李信です。よろしくお願いします」
「秦軍、王騎です。よろしくお願いしますよ、そして貴方の事は影ながら聞いた事があるので興味を持っていました」
「私もです」
洛亜完は寧姫の事を謝りつつ、案内を務める事としながら寧姫の行動についても説明した。彼女は韓非に師事をしているが故に心配しているのだと……。
そうして、洛亜完は王騎に騰と話をしながら移動する中……。
「り 李信将軍。ど どうか……あ 貴方と……は 話がしたい」
一人の兵士の男が近づいてきて、李信へ吃音で話しかけてきた。
「良いですよ、韓非子様」
李信は自分が各国に放っている諜報に情報部隊を放っている事もあって、その人物が韓非子の事を知っており、ある程度深い事も掴んでいた。
「っ、ふ、ふふ。も もう見抜かれるとは……や やはり只者じゃない」
「ありがとうございます」
韓非子は驚きながらも納得すると……。
「り 李信将軍。ど どうか聞かせてほしい。 ひ 人はう 生まれながらにして善か 悪か……」
李信へと質問を始める。
「ふむ……中々、難しい問答ですね」
「し しかし……き 聞かせてほしい。ぐ 軍人として善と悪にふ 触れてきたき 君にこそ……人の本質はな なんなのか?」
「それはどうか、本殿にて答えるという事で良いですか? こんなところで答えるような話では無いですし、しっかりとしたところで答えたい。本音を言えば、少しだけ考えさせてほしいのもありますが」
「そ それもそうだな。 た 楽しみにしている」
李信はこの場では答えず、考えを纏めるために本殿で答える事を誓い、韓非子もいきなりすぎるというのを自覚しているが故か李信に対し、頷いてみせたのだった……。