李信は韓非子の『人の本質は何か?』という質問に『人の本質は水』だと返し、その理由も語りながら、韓非子も『性善説』の道を生きる人間だと言った事で韓非子は秦に興味を持った。
そうして、翌日に秦の王都である咸陽へと秦の使節団と訪れる事を承諾したのであった。
これにより、韓は今日の夜、宴を開き秦の使節団はもてなされる。
「李信将軍、韓非子様との問答は中々聞かせる物があった。武力もあり、理知に富んでいるとは恐ろしい限りだ」
「ええ、それにやはり強大な武を制御しているのが恐ろしい」
王騎や騰と酒を飲み交わしながら話していた洛亜完とヨコヨコは次に李信へと話しかけた。
「賞賛いただき、ありがとうございます。韓で名高い二人にそう言われると嬉しいですね」
李信は頭を下げながら言う。
「そう言えば、李信将軍は最近、結婚したのでしたな。今更ですがおめでとうございます」
「ありがとうございます。今度、子供も一人、出来ますよ」
「おお、それはめでたい。私にも息子が一人いますが子というのは良いですよ」
「ええ、まったく……」
洛亜完とヨコヨコは李信の結婚や子供が出来る事を祝った。そうして今回は友好的な雰囲気のまま、宴を楽しんだ。
その後、秦の使節団は韓非子を連れて秦の王都へ向かう準備をし……。
「お待ちなさいっ!!」
寧姫が親衛隊を連れながら、使節団へと近づく。
「公主、寧様……何用でしょうか? 韓非子様はもう車に乗り込まれましたが?」
騰が寧姫へと近づきながら、彼女へと話しかける。
「先生とは昨夜話しています。今は特使の介億様と六大将軍、王騎殿と李信殿に話があって来ました」
寧姫は介億に王騎と李信へとそう言い、韓非子は身体の強い人間ではないので無理を強いられないようにする事と韓非子に万が一の事があったら許さない事を絶対に許さないと告げた。
「ンフフフ、勿論ですよ。秦は韓非子様を国賓として迎え、朝廷に入っていただこうというのですから」
「ええ、韓非子様の安全は私達で守ります」
「信じます、信じるしかありません」
王騎と李信の返答に寧姫はそう言った。
「失礼ですが、寧様。二つ質問をよろしいですか?」
騰は寧姫にまず、韓非子の見送りの数の少なさや昨日の問答でも韓非子の心配をしているのが寧姫一人である事に言及すると韓は中華の国の中でも儒家の色濃い国で対局にある法家は韓非子でも腫物扱いとなってしまうのだという。
騰はそれならば寧姫も孤立するのではないかと心配している表情と声で伝えたが、寧姫は心配される筋合いはないと言い、次の質問は何だと言う。
それに韓非子は法家の他に何か別の顔を持っているのではないかと問うとこれに寧姫は戸惑った。
そして、今度こそ秦は行こうとしたところで……。
「李信殿、人の本質は水……貴方の言葉には少し胸を打たれ、なっとくしてしまうところがありました。だからこそ余計、貴方の事が大嫌いです。貴方は理知的ではあるが間違いなく、我々を滅ぼす……出来るなら貴方を殺しておきたい」
「でしょうね、ですが私は貴方のような方は好きですよ。嫌われて残念ですが……」
そんな会話をしながら、秦の使節団は帰路につく。
こうして紀元前233年、韓の公子韓非子は秦王の招聘に応じ、秦王都咸陽へと向かう。
その道中……。
「それで李信、貴方なら韓非子の別の顔が分かるのではないですか?」
「どうして私が知っているなどと……」
「ンフフフ、貴方の情報収集能力はあの李牧さんをも上回っていますからね。信用しているのですよ」
「……なら、信用に応えましょう。韓非子様は韓の情報機関と繋がっています」
「ンフフフ、それはまた……」
王騎の質問に答える李信はしっかりと韓非子の別の顔を掴んでいたのであった……。