キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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十六話

 

 蛇甘平原での戦から三か月後、次の戦に向けての準備をしながら生活をしていた信の元へ同じく蛇甘平原での戦に参加していた羌瘣が訪れた。

 

「羌瘣、久しぶりだな。だが、お前は他者との交流はあまり好まないんじゃ無かったか?」

 

「私は別に交流が嫌なわけじゃない。必要とあれば、普通にする。馴れ馴れしいのは嫌いだが」

 

 信の問いに羌瘣はそう答えた。

 

「じゃあ、今はお前にとって俺に話すのが必要と言う訳だな。それで、何の用だ?」

 

「信……お前が蛇甘平原で見せた武威と勇姿は本当に見事だった。思わず、私ですら昂ぶらされる程に……そんな、お前の居場所は戦場だよ。お前の武は日の当たるところでこそ最大限の力を発揮する」

 

 羌瘣は言葉の通り、敬意を込めた視線で信を見、敬意を込めた言葉で語りかける。

 

「だからそれ以外の余計なところには足を踏み入れるな。()()()()()()()()()()()()、行けば必ず、命を落とすぞ」

 

「(……なるほど)それは()()()?」

 

「いや、()()()。共に戦場で戦った誼みと敬意からな」

 

 信は羌瘣の言葉から王宮でなにか、あると察しながら羌瘣へと問いかけると、背を向けて歩き出しながら返答した。

 

「そうか……じゃあこれは借りにしておくぞ、羌瘣。忠告感謝する」

 

「……気にしなくて良い」

 

 呼びかければ羌瘣は一度足を止め、信が言葉を伝えれば一度、信の表情を見ると何か悟ったような表情を浮かべ、苦笑して再び歩みを再開したのであった。

 

 

 

「貂、王宮に行くぞ。間違いなく、なにかありそうだからな」

 

「え、いや王宮ってもどうやって入るんだよ」

 

「最悪、忍び込めば良い」

 

「いやいや……」

 

 信は貂の言葉に応じつつ、王都咸陽の王宮に行く準備をしていると……。

 

 

 

「信殿ー、信殿ー!!」

 

「信は確かに俺だが、何用で?」

 

 家の外から呼びかける言葉が聞こえたので向かい……。

 

「私は……」

 

 信の家へと訪れた者は()()()()からの使いであった。

 

「敵が味方になり、味方が敵になる……世の中ってのは妙なものだな」

 

 その使いから書状を受け取りつつ、呟きながら信は貂と共に王都咸陽へと向かうのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今夜――複数の刺客集団が秦国の王都咸陽の王宮へと忍び込み始めていた。その刺客集団の依頼主は同じであり、更に暗殺対象も同じである。

 

その刺客集団の暗殺対象は秦王が嬴政である。

 

 事前に王宮関連の任を受け持っていた関係者たちを殺す事で王宮内に忍び込みやすくし、そうして刺客集団はそれぞれ、嬴政の命を獲るべく、動き出す。

 

「ふふ、半年前の乱と言い、つくづく長生きの許されぬ王のようだな」

 

「そして、我等が大王の首を獲り、堅仙(けんせん)の名を闇世界に君臨させるのだ」

 

 長袖の服や靴先など武器を仕込み、それを使った奇襲を得意としている暗殺を生業とした『堅仙』の九人が嬴政の寝所を狙って歩き出すも……。

 

「むっ、何かが来るぞっ!!」

 

 闇夜が覆う王宮内を凄まじい速さで駆け走る者がいた。その存在に気づき、『堅仙』は身構えるも……。

 

 

 

「づああっ!!」

 

「っ!?」

 

 駆け走っていた者は突如、床に矛の石突を叩きつけると同時に跳躍すると結構な距離を飛んで進みつつ、旋回するその勢いのままに矛を振り下ろして轟閃を繰り出し、『堅仙』の一人を頭から断裂した。

 

 

 

「しいいっ!!」

 

 そのまま、舞い踊るかのように動きながらその勢いと共に縦横無尽が如く、矛を振り回せば穂先に触れた者は切り裂かれ、柄に触れた者は打ち砕かれる。

 

 一瞬の間に九人の『堅仙』は全滅したのであった……。

 

 だが、王宮に忍び込んだ刺客集団は『堅仙』だけではない。数は九人と同じだが、禿頭の筋骨逞しい巨漢集団である『赫力(かくりき)』もまた、秦王の寝所へと向かっていた。

 

 彼らの剛拳は気を外に練る硬化術の結晶のため、『攻』においては一撃で岩をも砕き、『守』においては一切の刀剣を皮膚のうちに通さないという物だったが……。

 

 

 

「うぐあっ!!」

 

 『赫力』の一人の背中から矛の刃が穿ち貫く。

 

 

 

『なっ!?』

 

 仲間がやられた事で後ろを見れば、矛を投擲しただろう者が右手に剣を持って凄まじい速さで『赫力』へと突撃し……。

 

「死ね」

 

 硬化術など何の問題もなさない鋭く流麗、絶斬の威が込められた剣の舞が『赫力』の集団を切り裂き、断裂し、解体する。

 

 こうして、『赫力』も全滅した。

 

 

 

 

「さてと、貂……急ぐぞ」

 

 『堅仙』と『赫力』を全滅させた者は信であり、日頃の猛烈なる鍛錬、そして敵意と殺意飛び交う戦場を経験した事で信は敵の知覚能力が磨き抜かれており、当然、『武』とそれに伴う『技』も尋常ならざる領域に達しているのであった。

 

「は、はは……す、すっげぇ」

 

 貂は信の動きと力に驚愕するのみである。その後、信と貂は進んでいき……。

 

 

 

「政、俺だ。信だ、それに貂もいる。助けに来たぞ」

 

 政の寝所の扉に軽く拳を二回叩きつけ、呼びかけると……。

 

「信、それに貂……どうして、お前達が?」

 

「聞いたら驚くぞ」

 

「ああ、本当にな」

 

 寝所からゆっくりと姿を現す政が信と貂の姿に軽く驚きつつ、問いかけ信と貂の二人は軽く笑いながら自分たちがこの場にいる理由を話すのであった……。

 

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