キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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十八話

 

 秦王嬴政を狙い、放たれた闇世界の刺客集団、『堅仙』と『赫力』に『号馬』と『朱凶』、『蚩尤』と信は戦った。

 

 その結果、『堅仙』と『赫力』に『号馬』は全滅し、『蚩尤』の出である羌瘣は気絶させられ、『朱凶』は信に対して降伏した。

 

「大王様、ご無事ですかっ!?」

 

「信、またしても君には助けられてしまったな」

 

 その後、政を守るために昌文君に壁らが駆けつけてきた。

 

 更に……。

 

 

「肆氏様、手引きありがとうございました」

 

「私は必要な事をしただけだ。それにしてもお前ほど敵に回せば恐ろしく、味方ならば頼りになる存在はいないな」

 

 信が包拳礼をすれば、肆氏は苦笑で応じたのだった。

 

 こうして政の暗殺は阻止され、羌瘣は信が今回の暗殺阻止の報酬という形で身柄を預かり、『朱凶』たちは自分たちも含め、刺客集団に暗殺の依頼をした首謀者の事を吐くという事になり……。

 

「信様、蚩尤の命を救ってくださった恩も含めて、我等は貴方様の手足となって働かせていただきます」

 

「そうか……なら、よろしく頼む」

 

 

 『朱凶』は信に降伏した事と彼らが仕える『蚩尤』の羌瘣を救ったとあって、彼の手足となる事を誓ったのであった。

 

 一先ず、王宮の部屋の一つにて羌瘣を寝台の上で寝かせ、信は監視という名目で傍におり……。

 

「ん……わ、私は……」

 

「起きたか」

 

 羌瘣は目を覚まし、状況を把握しようと周囲に視線を巡らしていく。

 

「私を殺さなかったのか……」

 

「忠告の借りと同じ戦場で戦った誼だ……だが、それでもこの貸しは高いぞ」

 

 拾っておいた羌瘣の剣を彼女へと投げ渡す。

 

「……分かっている。必ず、この借りは返そう」

 

「なら、まずはその前にお前のやるべき事を果たせ。だが、必ず俺の元に帰ってこいよ」

 

「ああ」

 

 信の声に応じると羌瘣は立ち上がり、軽々とした動きで部屋の窓から跳躍するようにして去って行った。

 

 

 

「貂はどこ行ったんだろうな」

 

 信は羌瘣を見送りながら、河了貂がいない事を気にしつつも彼女は彼女で何かをしようとしているのを察し、気にしない事にした。

 

「……行ったんだな」

 

「ああ、羌瘣は羌瘣でやるべき事をな。それにしても呂丞相は大きく動いたな」

 

「こんなにも大々的に動くとは思わなかったがな」

 

 政が現れ、信は会話をする。今回の政の暗殺の計画と実行をさせた首謀者は『朱凶』たちの証言により政たちの予想通り、呂不韋こと呂丞相であることが判明する。

 

 これにより、今朝は今後どうするかの会議を始めた政たち、信は身分もあって同席しないつもりだったが政からこういう状況ではむしろ、傍にいてくれた方が心強いという事で信は同席するも……。

 

 「呂丞相が到着されましたーっ!!」

 

 なんと呂丞相一派が王宮に来たと報告される。

 

 

 

 そうして、呂丞相の一派にして天才戦術家と言われ、美麗な男である昌平君(しょうへいくん)に屈強な肉体を有する巨漢の武人である蒙武(もうぶ)、髪を後ろに束ねた男にして法律家である李斯(りし)、三代前の秦王である昭王の時、丞相を務め、今は外交官の最高位として働いている小柄な老人こと蔡沢(さいたく)らが王室へと入り……。

 

「まずはともかくご無事で何よりでした。大王様」

 

 礼を尽くしながら、秦王である政を暗殺しようとした立派な顎髭を伸ばしている男、丞相でありながら実質的に王と同等、それ以上の権力と勢力を有する呂不韋はいけしゃあしゃあと言う。

 

 

 

「早速ですが、大王様……昨夜の大王様暗殺事件の黒幕は……この呂不韋めにございます!!」

 

 そして、更に自ら自白さえしてしまった。しかし……。

 

「冗談はよせ丞相、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 呂不韋の力の前に政は首謀者である彼を裁けない。つまり、呂不韋は堂々と失敗した暗殺計画を無かった事にしたのだ。

 

 

 

「大王様、早う大きゅうなりなされ、この蔡沢は強き者にのみお仕えいたしまするぞ」

 

 蔡沢が嬴政に挨拶をし……。

 

「秦の『六大将軍』を復活させてほしい」

 

 蒙武が秦の武威を引き上げ、他国から侵略されないために『六大将軍』の名と制度を復活させてほしいと上奏する。

 

 それは『王騎』の事もあるし、この場で短絡的に決める事では無いので後々という事になり……。

 

 

 

「では、大王様……これにて」

 

 呂丞相一派はそう言って政の元から去って行く中……。

 

「小僧、名は?」

 

 蒙武が動きを止め、信を見ながら名を訪ねた。

 

「私の名は信、この前の蛇甘平原での戦の功で『百将』の地位を授かりました」

 

「そして、刺客たちも全員返り討ちにしたか……信、お前はこの秦にとってなくてはならない武将となるだろう。俺の元に来い、鍛えてやる」

 

「ほう、お前がそこまで言うか」

 

「信にはそれだけの価値がある」

 

「……ありがたい話ですが、俺は武将になるならば独力でと決めておりますので」

 

「ふ……良いだろう、まずはともかく功を立てて成り上がって来い……この話はその後だ」

 

 昌平君の言葉に蒙武は応じつつ、信が頭を下げて話を断れば、諦める事は無いと言いつつ、蒙武は去っていった。

 

 その後、信は政と共に王宮内が見渡せる城壁の上に行き……。

 

「呂不韋はでかいな」

 

「ああ」

 

 武人とはまた違う呂不韋の大きさに対し、信と政は意見を統一するのであった……。

 

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