秦王である嬴政暗殺を阻止した信は『軍師』を目指すため、学びにいった河了貂と別れる事になった。
信もまた、百人とはいえ人を率いる事の出来る『百将』という地位を得たため、軍略や用兵の術を学ぶために昌文君の紹介で学者の元を訪ねて学び始めた。
彼の努力は凄まじく、なんと十日間で学んでいる学者との『軍略将棋』で何度も勝ち越すようになり、更には出された軍略の課題における対応策も完璧になっていく。
「流石に老練ですね、昌文君様」
「いや、何度も危うい目にあった。たった十日そこらでこれ程になるとはな」
「大将軍になるために努力しているだけです」
流石に今は政を支えるために文官となっているが、かつては武将として幾多もの戦場を潜り抜けた昌文君が様子を見に来て『軍略将棋』をしたときはあと一歩のところで負けてしまった。
しかし、昌文君は上達の凄まじさに驚愕するし、信の努力の姿勢に感服せざるを得なかった。
因みに信は字が読めないために字を読む係をしている渕は信と何度も軍略将棋の相手をしているため、彼も上達をしていたりする。
そして、信が行っているのは知を高めるだけでなく、無論今まで通り、『武』の鍛錬も続けており……。
「次だ」
「はっ!!」
秦王暗殺において信と対峙し、降伏の道を選んだ『朱凶』の者全てと顔合わせし、秦王暗殺に来た三名以外の者たちと手合わせして実力を分からせる事で自分に従う事を共通させた信は『朱凶』の一族を鍛錬相手として実戦形式の手合わせなどもするようになっていった。
そんな日々の中、一か月近くが経過した時……。
「ンフフフ、聞きましたよぉー、童、信……大王様暗殺を防いだそうですねぇ」
「これは王騎将軍……お久しぶりです」
「ココココ、お久しぶりです。童、信。色々と頑張っているようじゃありませんかぁ。軍略と用兵術を学んでいるのは百将になったからですねぇ」
「はい、人を率いる立場になった以上は人を率いる知識と術を学ばねばなりませんので」
「良い心掛けです、童、信……どれ、少しだけ見てあげようじゃあありませんか」
そうして、王騎と軍略将棋をしてもらい……。
「流石、完敗です」
「ンフフフ、しかし、童、信も私相手に中々食らい付いたじゃありませんか……ですが知識だけあっても実践出来なければ意味はありません。盤上とは違い、戦というのは流動的ですからねぇ」
「はい、それは少しは分かっているつもりです」
「ンフフフ、では実戦経験を積んでみますか?」
「やらせていただけるなら」
「良い返事です、では行きましょうか」
そうして、王騎は信と渕を連れてとある場所へと向かう。
とある場所とは秦国内に幾つか点在する『
作物も育たず、秦国も見捨てた荒野の地に戦で土地を追われた少数部族や亡国の輩が流れ込んで形成されたものである。
『オオオオッ!!』
しかし、そんな狭い荒野においてもこの地帯の『覇』を争って戦っているのだ。
「皆、俺が勝利へと導いてやる。だから俺の言う通りに動いてくれ」
『はいっ!!』
王騎は信に『武』を用いるのは最低限という縛りを与えつつ、この『無国籍地帯』で覇を争っている十の諸侯の中でも最弱の
そうして信は南巴族を率いて、学んでいる軍略と用兵を活かしながら流動的な状況にも対応できるようにし……。
「(炎を起こすなら、此処ッ!!)」
本能型武将としての才覚をも目覚めさせながら、次々と諸侯との戦に勝ち続け、率いる人数も増やしつつ……。
「以降は皆、共に力を合わせて暮らしていけ」
『はい、信様』
南巴族を一番とし、残りの諸侯を従わせるという形で信は二週間ほどで『無国籍地帯』での平定を終えた。
「ココココ、やるじゃないですか童、信。私の予想を超えて平定してしまうとは。若者の成長はこうでなくては……ねぇ、騰?」
「ハ、でなくば鍛え甲斐がありません」
「ンフフフ……童、信。もっと私の元で学び、鍛えてもらいたいですか?」
「そうして頂けるなら」
「ンフフフ、本当に貴方は貪欲ですねぇ……よろしい、ではもっと激しく、厳しく鍛えようではありませんか」
こうして、信は王騎の元で軍事演習やちょっとした賊討伐という形での実戦など激しく、そして厳しい鍛錬と学習をさせられていったのであった……。