キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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二十四話

 

 『馬陽』を戦場に繰り広げられている『秦軍』と『趙軍』の戦。

 

 初日は『趙』の右陣を担当し、『趙軍』の中では戦上手の策士である馮忌が率いる二万の軍勢と王騎の配下である干央率いる『秦』の左軍一万が交戦しているどさくさに紛れて信が率いる百人の兵で構成された『飛信隊』が馮忌のいる本陣へ奇襲を仕掛け、そうして信が馮忌を討ち取った。

 

 これにより、指揮系統を失った馮忌軍を掃討にかかり、『趙』右陣の軍勢を壊滅させると『趙』総本陣はこれを察知したため、中央陣を担当していた李白や左陣にて秦軍総本陣の右腹を突こうと秦右軍を大いに崩し、総本陣に迫る勢いであった渉孟に万極、後詰の公孫龍らに退却の合図を送って退却させた。

 

 

 

 こうして、初日の戦は終わったのである。

 

「皆、まずは良くついてきてくれた。いきなり大群相手に奇襲して、大将を討ち取れなんていう危険で難しい任務なのに俺についてきたその勇気、そして趙軍相手に振るったその武威に感謝と敬意を」

 

 夜、秦軍の左陣の野営地にて信は任務成功の祝いをすべく、『飛信隊』の皆の前で告げた。

 

 

「そして、残念ながら散ってしまった者たちにも感謝と敬意、そして誓わせてもらう。犠牲に報いるために勝利を捧げる事を……皆、まずは黙祷を」

 

 そう、戦に犠牲というものはどうしても出てしまう。虚を衝いたとはいえ、大勢の敵軍に奇襲を仕掛けた『飛信隊』にも十人の犠牲者が出てしまったのである。

 

 そんな犠牲者たちへ信は酒を掲げつつ、黙祷をすると『飛信隊』の皆も黙祷を……。

 

 

 

「良し……それじゃあ、勝利を誓って……乾杯」

 

『乾杯っ!!』

 

 そうして、信が酒を口にすると皆が酒を口にし、そうして任務成功の祝いは始まったのである。

 

 

 

 

『ワハハハハ』

 

 当然だが、祝いを始めて少しの時間が経つと皆に活気が溢れて騒ぎ始める。

 

 

 

「ンフフフ、盛り上がっているようでなによりです。今回は本当に大手柄でしたよ、『飛信隊』、それに童、信……私の期待に良く応えてくれました」

 

「ありがとうございます、王騎将軍」

 

『ありがとうございますっ!!』

 

 総大将である王騎将軍が直接、労いに来たとあって信も含めて『飛信隊』の皆の気分が大いに高まったのであった。

 

 

 

 

 そうして、盛り上がる左陣から離れて『秦』の中央軍の野営地には蒙武がいて……。

 

「馮忌を討ち取ったのは『飛信隊』の信という若者らしいぞ」

 

「知らんな」

 

 そう、配下の者が言うのを蒙武は聞くと……。

 

 

 

「(ふっ、さっそく手柄を立てたな信……流石は俺が見込んだだけはある)」

 

 自分が見込んだ信が手柄を立てた事を内心、喜んでいた。

 

「(今は王騎の元にいるようだが、必ずお前を……)」

 

 将来的には自分の元に引き抜いてみせると思いつつ、明日の戦に備えるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 朝日が昇って少し……再び『馬陽』を戦場に布陣し合う両軍。

 

 そうして……。

 

「全軍、突撃ぃぃぃぃっ!!」

 

 蒙武軍は昨日と同じように蒙武を先頭に突撃していき、守備に優れた李白の堅陣へと向かっていき……。

 

「おおおおっ!!」

 

 そうして蒙武が蹴散らしていくのに続いていき、彼が発する戦意や武威が兵士たちにも伝道し、それは大きな力となって蒙武に続いて敵兵を蹴散らしていく。

 

 昨日は蒙武は敢えて深入りはしなかった。歩兵は強制徴収された兵であるために戦意が低かったからだ。

 

 当然、これでは戦えないために蒙武は自分が敵兵を蹴散らし続ける姿を見せる事で歩兵たちに大きな自信を与えたのだ。いわば一つの『練兵(れんぺい)』である。

 

 

 

 そうして、敵兵を蹴散らしていく蒙武軍。

 

 これに李白は蒙武軍を囲い込むような陣をもって殲滅に掛かるが……。

 

 

 

「全軍に告ぐっ、殺せぇっ!!」

 

『うおおおおおっ!!』

 

 なんと蒙武は恐れず、そのまま自分の驚異的な武威を持って返り討ちにし始め、この勇姿に続いて兵士たちも返り討ちへと取り掛かり、そうして包囲を破ってしまったのだった。

 

 

 

 圧倒的な『力』が巧妙な『策』を破る瞬間を実現してみせたのである。

 

 

 

 そんな動きを見せた中央の戦闘だが、もう一つ――『秦』の右陣にて動きがあった。

 

 堂々と寡兵である『飛信隊』が渉孟の軍へとゆっくり近づいていったのだ。

 

 

 

 そして、信が隊から離れて先へと馬に乗ったまま歩み……。

 

 

 

 異様と言えば異様な行動に渉孟軍は戸惑い、警戒する。

 

 

「我が名は『飛信隊』の信っ!! 馮忌を討ち取りし者なりっ、『趙』の猛将、渉孟に一騎打ちを申し込むっ!!」

 

 信は堂々と一騎打ちを申し込んだ。

 

 

 

「ふ、ふははははっ!! 貴様など、この俺で十分だわぁっ!!」

 

 渉孟軍にて中々の武を誇る隊長が一騎にて挑みかかり……。

 

 

 

「ふっ!!」

 

「ぎゃばっ!?」

 

 矛を振り下ろし、馬ごと信は挑みかかった隊長を切断する。

 

 

 

『うおおおおっ!!』

 

 信の勝利に『飛信隊』と飛信隊の後に続いた秦軍が喝采の声を上げる。

 

「成程、少しは強いようだなっ!!」

 

 更に強い渉孟軍の隊長が挑むも……。

 

「せいっ!!」

 

 信は矛を振るいて胴を切り飛ばす事で討ち倒す。

 

『うおおおっ!!』

 

「くっ、図に乗るなぁぁぁっ!!」

 

「ふんっ!!」

 

 また腕に自信がある隊長が信へと一騎打ちを挑むがやはり、屠られ秦軍は喝采の声を上げる。

 

 

 

「成程、もう十分ね……お前は異様に強い事は認める。我こそ渉孟、『飛信隊』の信、一騎打ち受けるよ。馮忌の仇を取らせてもらうね」

 

 信の類まれなる武勇を認めた辮髪に巨体で恰幅の良い体型、武器は月牙の矛を使う趙の猛将である渉孟が姿を現し、彼の一騎打ちを受け入れた。

 

 

 

 

「いくぞっ!!」

 

「はああっ!!」

 

 そうして、信と渉孟は互いに相手へと向かっていき……三合打ち合い……。

 

 

 

「この程度か」

 

「なっ、お前!?」

 

 信は渉孟がどれほどの実力を持つか三手ほど様子見をしたが、全然大した事無いのを把握する。

 

 

 

 

「はあっ!!」

 

「プギイイッ!!」

 

 そうして、渉孟は豚のような悲鳴を上げながら信の武威の前に粉砕されてしまい……。

 

 

 

「敵将、渉孟、この『飛信隊』、信が討ち取ったぁぁぁぁっ!!」

 

『ウオオオオオッ!!』

 

 信の勝利宣言に『飛信隊』は勿論、昨日の戦で渉孟の武威による脅威を叩き込まれた秦右軍は激しい喝采の声を上げた。

 

 中央と右陣――どちらも『個』による武が戦場の形成を変えたのであった……。

 

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