キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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二話

 

 

 

 信に秦王である政、貂の三人は四百年前の秦王である穆公が『山の民』との交流のために設けた避暑地にて合流する手筈となっている者たちを待つために待機する事となった。

 

 その際、信達を追って来た刺客であるムタを信は討ち倒したのである。

 

 そうして……次なる追手を警戒するため、信が少し外で待っていると鎧を纏い、武器を手にした昌文君と彼の部下であろう者達がやってくるのが遠めに見えた。

 

 昌文君は少し驚いた顔をしたが、信は軽く頷くと政に報告する。そうして……。

 

「脱出の手立ては万全と言っておきながらこの有様。全ての責任はこの愚臣に依るところであります」

 

 昌文君達は信が呼んだ政が姿を現すと抱拳礼をしながら、片膝を地につけ伏せる。

 

「仰せとあらば、今すぐこの岩で頭を砕いて果てまする。しかし、しかしまずは何よりも……良くぞご無事で!!」

 

 昌文君は涙を流しながら、政に言う。

 

 

 

「お前もな」

 

 政は昌文君の肩に手を置いて労うと昌文君は嗚咽を漏らすのであった。

 

 その後、昌文君達は休む事になり……。

 

 

 

「どうぞ」

 

「はいよ、お待ち」

 

 信と貂は料理を用意して、傷ついている兵士たちへ配っていく。政は昌文君達に信は此処まで来るのに護衛を務め、貂も脱出を手伝った協力者である事は告げたので一応、受け入れられている。

 

 「では、話を聞こうか……此度の脱出劇……なぜ失敗したのか?」

 

 政の問いに昌文君達は語り始める。漂を政の影武者として馬車に乗せ、王宮から脱出している時にこの国においての大将軍である王騎なる男の部隊に襲撃されてしまった。

 

 そうして昌文君は王騎との一騎打ちをしている中、崖から転落した。幸い、下に川があってなんとか助かったが、彼は戦場から離脱する事になったという。

 

 

 

「そして、大王様……信を此処へ呼んでもよろしいでしょうか?」

 

「許す。信、ここへ」

 

「はっ!!」

 

 そうして信は政たちの近くへと行き……。

 

「壁よ、彼は漂の友である信だ。彼に漂の事を聞かせてやれ」

 

「はっ、信よ。私は殿の副長である壁だ。脱出の際は漂殿のそばにいたのだ」

 

 そうして壁と名乗った男である壁は語り出す。

 

 なんと昌文君が王騎によって崖から落とされた際、すかさず馬車から漂が飛び出し馬に乗ると政を演じながら、指示を出した。

 

 そうして兵を率いる一人の将になり、壁たちの闘争心を湧き上がらせたのだ。しかし、王騎の手は厳しく、丘上の敵目掛けて単騎駆けをしながら、敵兵を突破したのを最後に姿を消したという。

 

 

 

「てっきり漂殿は無事で合流地で再び会えると思っていたのに……無念だ」

 

「昌文君様、壁殿、王よ……ご配慮に感謝します」

 

『……』

 

 信は昌文君たちへ頭を深々と下げ、その堂々とした誠意に皆が敬意を抱いた。

 

 その後、今後に向けた会議が行われたが王宮で内紛を起こした王弟である成蟜のそれは後ろ盾になるとされている呂丞相に歓迎されており、むしろ政が死んで成蟜が王に即位する時を待っているとの事。

 

 そうして、呂氏は成蟜と竭氏の非道を高らかに叫んで堂々と王宮のある王都咸陽に攻め入り、王族を全滅させて呂氏が王になれる状況を作ろうとしているとの事だった。

 

 つまりは味方がいないとの事だったが……一つだけ、あった。『山の民』を従える王に協力を求めるという手が……。

 

 

 

 そうして、山を登り始めるも昌文君達の消耗は酷く、その進路は遅かった。

 

 

「厳しいな」

 

「ああ、無理もないけど持ちそうにない」

 

 信と貂が見ても自分たちが先となり、昌文君達が遅れてくる。小休止を挟んでもそれは解消できそうにない。

 

 実際、道中で何人かが離脱し避暑地での待機となってしまった。

 

「(来てるな)」

 

 遠くの方で山の民たちに見られているのを感じ取ったので剣の柄を手で叩く。

 

「ほう、気づいているか。面白い」

 

 遠くで見ている山の民の一人が信が自分たちに気づいている事を察し、呟いたのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 信たちは山の中の森林に入ったが昌文君達の疲労はかなりきていた……そうして……。

 

「出て来い、いるのは分かっているぞ!!」

 

 信が叫べば、森林の草が動いて物音を立てて特徴的な仮面を被り、鍛え上げられた肉体を晒し、武器も構えた男たちが姿を見せる。

 

「大王をお守りしろっ!!」

 

「騒ぐな、その気ならとっくに襲われている筈だ」

 

 昌文君が叫べば、政が言う。

 

 そうして……代表者なのか一人の『山の民』が近づいてくる。

 

「面白イ少年ダ。ヨク気ヅイタナ」

 

「勘が鋭いんでな」

 

「……勘カ……本当ニ面白イ」

 

「それで何しに来た?」

 

「ココハ我々ノ世界ダ」

 

 代表者は政の問いに答え、彼らの王が秦王に会う気だというので連れて行くと言ったが、連れて行くのは政一人で残りは今すぐ下山しろ、さもなければ全員殺すと告げた。

 

「どうやら、誤解があるようだな……()()()()()()()()()()()()()()と思っているようだが、勘違いも甚だしいっ!!」

 

『っ!?』

 

 信は背中の剣の柄に手をかけながら、山の民へ絶大なる怒りに憎悪、殺意を放つ。

 

それに政以外が全員、気圧された。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「良イナ……コレホドノ殺気ヲ浴ビタノハ久方ブリダ」

 

「じゃあ、やるか?」

 

 恍惚そうに言う代表者が歩き出したので、信も歩いて近づきながら言う。そうして対峙しようとして……

 

「待て、信……要求通り俺一人で山の王に会いに行く」

 

 政がそう言って山の民たちと一緒に移動するのを見送りながら、その場で待つ事になったのだった……。

 

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