『秦』と『魏』による戦の規模が増していき、中規模の戦を繰り広げている戦線。
『飛信隊』の活躍によって押されている魏軍は再び、同じ戦線上に集結し布陣しつつあった。
そうした『魏軍』が行くのは霧が深い上に連戦によってできた屍が放置された大地であったが……。
「しっ!!」
「ふっ!!」
『んなっ!?』
突如、屍の中から現れた剣士たちが魏軍へと襲い掛かり、壮絶にして超絶な剣舞によって切り伏せていく。
全く予想外な剣士たちの襲撃に『魏軍』は驚愕に大混乱のため、碌な抵抗が出来ずに切り伏せられるしかない。
『飛信隊』を率いる信と副官の羌瘣、『飛信隊』にて諜報や潜伏、工作などを担当している『朱凶』を含めた数百の部隊による伏兵戦法であった。
「良し、このまま本陣まで攻めにいくぞ」
『はっ!!』
そうして、霧が晴れないうちに信たちは敵本陣まで向かって行き……。
『ぎゃああああっ!!』
本陣にいた『魏軍』は信たちの奇襲にやはり、対応できずに殲滅されたのであった。
これがもう一つの『飛信隊』の強み――元が刺客の部族であるため、正規の軍とは違って裏方で敵陣の視察や斥候の始末、奇襲や夜襲の際の支援などそうした暗躍を得意とする『朱凶』が信の私兵となっている事。
『朱凶』の存在により、信は神出鬼没な襲撃を幾つも仕掛ける事さえ出来るのであった。
「ば、馬鹿な。ど、どうやって……」
「……」
王賁たち『玉鳳隊』は朝日が昇ったと思えば、いつの間にか敵本陣を壊滅させていた『飛信隊』の実力に驚愕した。
そうして、その後も続々と『飛信隊』は野戦にて『魏軍』を攻め滅ぼし、敵陣に隙が生じれば神出鬼没な『奇襲』を仕掛けて魏軍を追い詰めていく。
「へぇ、まだまだ戦力を隠していたのか……頼もしいけど、怖いなぁ、本当」
怒涛の如く、『飛信隊』が武功を上げていく中、この戦線にやってきた『楽華隊』の蒙恬は苦笑を浮かべながら呟く。
『ひ、飛信隊だぁぁぁぁっ!!』
ともかく、中規模の戦は『飛信隊』の圧倒的武威によって、『魏軍』は殲滅されていったのであった。
その後、始皇五年のとある月にて前線地帯――『秦』は対魏大攻略戦の準備を整えた。
魏の山陽地方一帯を攻略すべく、『秦』は二十万強の大軍を興す。
山陽を平定し、東郡を置くつもりなのだ。
そして、この大攻略戦の総大将を任されたのは『秦』の白老こと
蒙驁は二人の副将と軍を三つに分け、三軍が足並みを揃えながら進行してゆく形をとる。
飛信隊は蒙驁率いる本軍の前方に組み込まれた。
そして、蒙驁は最初の城になる『
予備軍とは戦況に合わせて援軍に回ったり、戦の決め手となる働きを求められる隊である。そして、その最前列に『飛信隊』は配置される。
これは『飛信隊』が予備軍の中で第一の期待をかけられている証である。
そして……。
「最初が肝心だからな……頼むぞ」
「はっ!!」
信は初めてとなる『高狼』の攻城戦を制すべく、『朱凶』を事前に動かしたのであった……。