始皇五年――魏の山陽地方一帯を攻略すべく、秦は二十万強の大軍を興した。その大軍の総大将は蒙驁であり、信と彼が率いる『飛信隊』は本軍の前方に組み込まれたのである。
こうして、魏の山陽地方一帯を侵略する上での手掛かりとなる最初の城である『高狼』を攻める事になる。
蒙驁は攻城戦のため、城の四方を攻める四軍に分け、それに伴う四つの予備軍を編成したがその最前列に『飛信隊』は編制される。
因みにこの四つの予備軍には玉鳳隊と楽華隊も編制されていた。
そして、『高狼』に到着すると蒙驁本軍八万は四方に分かれて包囲した。
こうして、秦軍による攻城戦は始まるが、地上での戦いと比べれば、攻城戦は門の存在や城壁から岩を投擲したり、弓を放ったりするなど基本的に守る側が有利である。
城を攻め落とすには、三倍の兵力が言われる程だ……。
『うおおおおおおっ!!』
『高狼』を攻め落とす秦軍と『高狼』を守る魏軍の戦いは城壁の強固さと巧みな防御術の前に秦軍は攻めあぐねるが……。
「さて、やるぞ。『飛信隊』の弓隊よ」
『はっ!!』
信は数百いる弓隊と共に自分専用の剛弓であり、大弓を持ちつつ、盾を持った防御兵を傍に起きつつ城近くまで行き……。
「よっとっ!!」
大弓を構え、複数の矢を番えると次々と城壁にいる兵へと矢を放って射殺していく。他の弓隊の兵も一本ずつながら、敵を射殺していった。
城壁を登ろうとする秦軍の援護射撃にて戦況を引き寄せつつあるが、しかし敵の守りは堅い。今日一日では攻め落とせないと思われたが……。
『お、おおおっ!!』
突如、『高狼』の城内より火の手があり、明らかに魏軍は混乱していた。
「やってくれたようだな」
そして、信は少し前から『高狼』に潜入させ、攻め落とすように工作させている『朱凶』率いる秘密部隊が動き出したのを察し、信はその場から引いて馬や矛を用意し、騎馬隊と歩兵に城攻めさせる準備をする。
少しして内部から『高狼』の城門が開く。
「いくぞおおっ!!」
『おおおおっ!!』
『飛信隊』は城門が開いたと同時、侵入を開始した。
「やってくれると思ったぞ、信」
『飛信隊』ならば、何か予想外の手で攻城戦を制するだろうと予測していた『楽華隊』の蒙恬は飛信隊が担当するところまで密かに動いており、そして『飛信隊』の後に続く。
「はあああっ!!」
「ば、馬鹿な。何でここに秦軍がっ!?」
「ひ、飛信隊だとおっ!!」
「楽華隊もっ!!」
ただでさえ、大混乱している魏軍なのに瞬く間に『飛信隊』の圧倒的な武威が城内の魏軍を蹴散らし、そうして生まれた隙を『楽華隊』が衝いていくため、碌な抵抗も魏軍は許されなかった。
そうして、城主のいる本城に秦の旗が立つ。
高狼城はなんと一日にして、陥落したのである。
「……何がどうなっておるんじゃ?」
歴戦の老将である蒙驁は一日で城を陥落させる事が出来た事に少しの間、戸惑ったのであった……。