キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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四十話

 

 秦と魏の戦いが流尹平野を戦場に行われていた。

 

 『野戦』を一番得意とする『飛信隊』の活躍により、実質的な魏の総大将となっている歴戦の老将である廉頗に仕える四天王の一人であり、猛将の介子坊を退けた。

 

 しかし、少しすると戦場に濃煙が漂い始めた。

 

 

 

「(この煙なら向こうも視界は働かない筈だが……)」

 

 信は冷静になりながら、警戒し……。

 

「(音かっ!!)」

 

 独特な調子で奏でられる銅鑼の音を確かに信は聴いた。

 

「動くなよ、皆。もっと固まれっ!!」

 

 信が指示すると飛信隊は周囲に集まる。

 

 そうして、矢が秦軍へと降り注ぎ始める中で飛信隊には振り注がなかった。

 

 

 

「信、何か気づいたのか?」

 

「ああ、音で合図をして魏軍は攻撃しているんだ。こっちの音を聞き分けながらな。だから、石、お前達に任務だ」

 

「なんだ」

 

 羌瘣の問いに答えながら、信は『飛信隊』に所属している元は山で狩猟生活をしている『青石族』という一族の者に指示をだした。

 

 

 

 青石族は耳が良いからである。

 

 

 

「良いか、ゆっくりと移動して伝えて来い」

 

 更に他の部隊にも魏軍が音で自分たちを判断している事を伝えるための伝令を何人かに命じた。

 

 

 

「良し、今から歩兵と騎馬隊を分けた作戦を行う」

 

 そう、指示をしつつ……。

 

 

 

「信殿、なにか作戦があるんだな。私達も協力しよう」

 

「郭備殿、それならついてきてくれ」

 

 郭備がゆっくりと近づいてきており、信は彼の隊に協力を依頼した。

 

 そうして……。

 

 

 

「良し、いくぞっ!!」

 

 青石族の耳を頼りに音を追って、魏軍の本陣への突撃を騎馬隊は始め、歩兵たちは音を送っている敵兵の排除へと向かう。

 

「知っていれば、どうとでも出来るんだよぉっ!!」

 

「な、なにぃぃっ!?」

 

 

 戦車が煙の向こうから現れたが、信は戦車を率いる馬の足を攻撃して傾け、倒していく。そうして、前の戦車が急に倒れた事でそれに躓き、連鎖して戦車隊は次々と倒れてしまうのであった。

 

 

 そうして進んでいると……。

 

 

 

 

「来たぞっ!!」

 

 敵の本陣が見えると矢による応戦をしてきた。

 

 それを信は回避、或いは矛にて打ち払いながら進んでいく。

 

 

 

 「(兵の数が少ない……仕掛けてるな)」

 

 信は足場を崩す罠を仕掛けていると判断し……。

 

 

 

「何らかの罠が仕掛けられているぞっ!! 声をかけるから飛ぶなり、なんなりしろよっ!!」

 

 そう、声をかけ……。

 

 

 

「今だっ!!」

 

『ば、馬鹿なぁぁぁぁぁっ!?』

 

 信は地面の杭を引き上げる事で騎兵を仕留めようとした魏軍の罠を跳躍する事で回避する。

 

 

 

 

「くっ、なんという奴……集中的に射かけよっ!!」

 

 高い台車の上から煙と音を使った策にて蹂躙しようとしていた禿頭でかなり年を取った老人の軍師にして廉頗四天王の一人である玄峰(げんほう)は自分の策略を食い荒らす獣さながらの信を仕留めようと射かけさせるも……。

 

 信は巧みな馬術、体捌き、矛捌きにて矢をいなしながらも速度は落とさないままに玄峰へと迫っていく。

 

 

 

「……やむを得ん。退くぞっ!!」

 

 玄峰は退却を指示して即座に退却を始めたのだが……。

 

 

 

「逃がすか」

 

 信は更に速度を上げて玄峰に狙いを定める。

 

 

 

「ふっ!!」

 

 そうして信は超絶なる軽業にて一瞬の間に座った状態から飛び上がって鐙の上に乗る。矛は逆手かつ右肩に抱えるように持ち直し、そうして……。

 

「ヒヒィィン」

 

 まさに人馬一体、信の意思を読み取ったかのように馬は嘶きを上げながら勢い良く立ち上がる。

 

 

 

「くたばれ、糞爺っ!!」

 

 その勢いを利用して信は大跳躍をするとそのまま、矛を投擲した。

 

 

 

「がっ!?」

 

 それは玄峰の背を貫き、そうして地面に落下させていったのであった。

 

 

 

 

『げ、玄峰様ぁぁぁぁぁ!?』

 

 魏軍、特に玄峰の部下たちは悲鳴を上げた。

 

 

 

 

 

「敵将、この信が討ち取ったぁぁぁぁっ!!」

 

 地面に着地した信が宣言する。

 

『うおおおおおっ!!』

 

 まるで戦神の如き武威にて玄峰を屠った信に『秦軍』は大賛辞の声を上げたのであった……。

 

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