秦軍と魏軍による二日目の戦い。
廉頗と中華十弓の腕前を有する随一の弓手であり、廉頗四天王の一人である姜燕の二人は魏軍の輸送隊を神出鬼没に襲って翻弄しながら武具に防具、食料を奪っていた桓騎を相手取った。
「ちっ、化け物爺が……」
そうして、桓騎軍に結構な損害を与えつつ、本陣も陥落させたが桓騎とその主力自体は取り逃がしたのである。
「ふん、儂相手に上手く逃げるとは大したもんじゃわい」
廉頗は上手く退却した桓騎の手腕を褒める。次に王翦の手並みを見ようと相手しに行こうとしたのだが……。
「むっ、介子坊たち前線部隊がやられたか」
鐘による連絡にて前線部隊が敗れた事を知り、急いで本陣へ引き返す。
「と……殿、も、申し訳……」
そうして、廉頗はかなりの重傷を負った介子坊に他の将や指揮官たちを見る。
信を絶殺するという意気込みを尊重したが、逆に信はその意気込みを逆手に取るように囮になりながら、自分を包囲する介子坊たちを予め埋伏していた部隊にて逆に包囲したのである。
そうして、前線部隊は壊滅し軍全体でも見てもかなりの損耗をしてしまったのだ。
「ふっ……こうとなれば、やるしかないのう」
今後の状況を考えながらも廉頗は方針を決めるのであった……。
二
魏軍の前線部隊を壊滅させた秦軍の陣営。
自分の部隊の将を務める土門や栄備たちに自分を囮にした伏兵戦法を伝えていた信。
それは蒙驁の許可もあって採用され、結果として上手くいった事で今日の戦が終わった後、超絶な武威で耐えきった事も含めて賞賛された。
その後、『飛信隊』の天幕では……。
「皆、良くやってくれた。そしてありがとう、俺を救ってくれて……改めて俺にとって『飛信隊』のお前たちは仲間であり、家族……いや、言葉では表せない程に掛け替えのない繋がりだ。これからも俺を支えてくれ。俺もお前たちを支えてみせる事を誓う」
信は『飛信隊』の皆へと感謝と共に誓いを告げる。
『おおおおおおっ!!』
そんな信に対し、彼は圧倒的な武力に地位をも有しているのに飛信隊に対し、部下とかそういう物では無く、本当に家族的な物、あるいはそれ以上に大事な物だと真摯に伝えてくれるからこそどこまでもついていき、支えてみせると誓いながら咆哮を上げた。
「じゃあ、乾杯」
そうして今日の勝利に対しての軽い宴をしたのである。
「あれだけの事を言うなら、もっと自分を大事にしろ……話に聞いていたより、多かったじゃないか」
「俺もあんなに囲まれて執拗に襲い掛かられたのは想定外だったよ。だが、必ず上手く助けてくれると信じていた。ありがとう、そして、愛しているぞ羌瘣」
「ふん、それで誤魔化されると思うなよ……私はお前の物だというなら、置き去りにするような真似は辞めろ」
多少なりとも手傷は負った信に羌瘣は文句を言うように告げたが、それに信は感謝を告げつつ、愛も告げる。
羌瘣はそっぽを向きながらも顔を赤らめつつ、だが自分の意思を伝えながら彼の傍に座る。
「ああ、肝に銘じておく」
そう伝えて、宴を楽しむのであった。
次の日、魏軍の総大将である白亀西のいる本陣へと迫る秦軍であるが……。
「『飛信隊』の信、この廉頗と一騎打ちで決着をつける気はあるかぁっ!!」
堂々と待っていた廉頗が溢れる戦意と武威を放ちながら、そう叫ぶ。
「あるぞぉっ!!」
廉頗に対し、信はそう叫んで廉頗の元へと向かいながら対峙するのであった……。