キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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四話

 

 信は『山の民』の王である楊端和へと単身で会いに行かされた政の様子見、もしもの時の救出のために貂と昌文君の副官である壁と共に政と山の民たちの後を追っていく。

 

 途中で潜んでいた山の民を返り討ちにし、国へと案内させると共に襲い掛かってきた山の民たちを撃退し続けて真正面から楊端和と政が面談している場へと足を踏み入れた。

 

「少年よ、名は?」

 

「俺の名は信……秦王である政様の正式な兵でも何でもないですが、それでも剣のつもりです」

 

「ふふふ、そうか……剣か」

 

 楊端和からの問いに信はそう、自己紹介をした。

 

「秦王よ、お前との会話中々に楽しかった。中華統一にかける意思も本物だという事も良く分かったしな」

 

『っ!?』

 

 政が『中華統一』を目指しているという楊端和の言葉に貂も壁も驚いた。信も勿論、驚いてはいたが……。

 

「だが、どんなに大望を抱こうと……それにかける意思があろうと……力無くば意味が無い。故にお前たちの力を示してもらおう。正直言えば、私がやりたいところだが……バジオウ」

 

「ハ」

 

 楊端和は信たちの前に代表者として現れた者を呼ぶ。腰の後ろに抜き身の二刀を佩いている男だった。

 

「信とやりたがっているな?」

 

「オ許シ頂ケルナラバ」

 

「ああ、許すとも……信よ、お前が秦王の剣と言うなら、このバジオウは私の剣だ。戦って勝ってみせたなら盟を結ぶ事を約束しようじゃないか」

 

「な、なりません。王よ!!」

 

「そのような約束などせず、一族の積年の恨みを果たすべきです!!」

 

 山の民の古株だろう小柄な老人と思われる二人が声をかける。

 

 

「黙れっ、我が決定に口を挟むかっ!!」

 

『ひっ!?』

 

 楊端和は殺気を放って二人を威圧する。

 

「すまないな……では、始めてくれ」

 

 

 

「信、分かっているな?」

 

「勿論です、王よ」

 

 そうして、政の言葉に答えながら信は鞘から剣を抜きつつ、鞘を放り捨てて剣を構える。

 

「バジオウ、楽しめ」

 

「アリガタキ、オ言葉」

 

 バジオウは二刀を腰の後ろから抜き、獣を連想するような前傾姿勢で構える。

 

 次の瞬間、二人から強烈なる戦意が放たれぶつかり合う。

 

 

 

「(ふふふ、やはり良いな……それにバジオウを獣に戻すか)」

 

 楊端和は信の殺気に戦士としての血を滾らせながら、かつては獣と呼べるほどに狂暴だったバジオウのそれを刺激させた事に驚く。

 

 そんな中、信とバジオウは睨み合いながら対峙し続け……。

 

 

 

 

「ふっ!!」

 

「オオオオッ!!」

 

 信は気合を、バジオウは獣の如き咆哮を上げて動き、そうして激しい剣舞の応酬を三度、繰り広げると……。

 

 

「俺の勝ちだ、バジオウ」

 

「私ノ負ケダ、信」

 

 二人が動きを止めたと思えばバジオウの首に剣を添える形で信は止めており、信が勝利宣言をするとバジオウは敗北を認める宣言をした。

 

「……信にバジオウよ、二人とも、良き戦いだった……世界はやはり広いな」

 

 楊端和は信とバジオウの戦いを讃えると自らが抱えていた『世界を広げる』と言う思いを改めて思い返しながら呟き、仮面を取って長い金髪を束ね、額に印がある美女としての素顔を晒す。

 

「皆の者、良く聞け。山界の王 楊端和は秦王嬴政とかつてない強固な盟を結ぶ!!」

 

 山の民たちへと盟を結ぶことをはっきりと示した。

 

「我らは盟のためにこれより不当に追われた秦王の玉座を奪還しに行く。周囲の山々からも兵を集めよ!! 全員死闘の覚悟で出陣準備……目指すは秦国が王都咸陽也!!」

 

 こうして盟を結んだ政たちは山の民たちと共に内紛を起こして咸陽を乗っ取っている成蟜たち一派から咸陽を取り戻すために軍勢を率いて向かう事になった。

 

 まずは昌文君達の元で作戦会議をするべく、穆公が設けた避暑地の元へと馬を借りて移動する中……。

 

 

 

 

「信、手綱をだな……そう、そうだ、良し」

 

「ふぅ、だいぶ慣れてきた」

 

 壁に馬の乗り方を指導してもらいながら、それを実践していく。

 

「壁さん、馬に乗るってのはこんなにも良いもんなんだな……漂とは良く話していたんだ、大将軍になるためにも歩兵から戦場で功を積み重ねてまずは馬に乗れる士族になろうってな」

 

 壁は信に対して個人の間でなら、砕けた口調を許しているためにそうした口調で語り出す。

 

 

 

「信……」

 

 信は馬に乗りながら、漂との思い出を思い返す。穏やかながらもとある感情を秘めている信の態度に壁は表情を歪めた。

 

「壁さん、あいつは馬に乗って……兵も率いたんだったな?」

 

「ああ、漂殿は確かにあの時、一人の立派な将だった……私が保証するよ」

 

「……俺より先に将になったか……やっぱり、あいつは俺より要領が良いな……っと、すまない。ちょっと感傷に浸った……()()()()()()()()()()()()()

 

「……信、君は()()()

 

 信からの言葉に壁はそう答える。それが彼にとって一番の励みになると思ったからだ。

 

 だが、分かっている。信の内心では親友であり、義兄弟だという大切な存在を失った悲しみで溢れているが今は激しい怒りと憎悪に殺意で覆い隠しているだけであり、耐えているだけなのだと……。

 

「そういう貴方は優しい方だ……ありがとう」

 

 そうしたやり取りをしながら、昌文君達が待つ合流地へ辿り着き、事態の説明をすれば昌文君に政、壁に楊端和は会議をするため、避暑地の建物の中へと行く。

 

 

 

 信は外で楊端和が招集をかけた山の民の軍勢が集まるのを待つ中で……。

 

 

 

「信、よくぞ大王を救い出したな」

 

「救うどころか山の民を率いて戻るとは見直した」

 

 昌文君の兵から言葉をかけられ……。

 

「――」

 

「オ前ト共ニ戦エル事ヲ誇リニ思ウト言ッテイル」

 

「こちらこそ頼りにさせてもらう」

 

 バジオウの通訳の元、政の元へと乗り込む際に信に倒された山の民たちなどから拘留され、信はそれに対応。同じ仲間として信は交流を深めていく。

 

 そうして、八万の軍勢が控える咸陽へ『山の民』が秦国との盟を復活させるという名目で三千で入るという事になった。その際、信達は山の民の者として扮するのである。

 

そうして、仮面を作るなどして準備をし……。

 

「信、もう抑える必要は無いぞ。存分にやると良い」

 

「ええ、抑える気は無いですよ。漂への弔い合戦で俺個人の報復ですから……」

 

 政は信に対して感情を解放する事を許した。信の言う通り、彼が抱えている漂を殺した者たちへの怒りに憎悪、殺意を……。

 

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