『山陽』を奪還に来る魏軍の攻勢は激しいながらも『飛信隊』の参戦により、瞬く間に『里井』に『微子』の平定は完了した。
無論、他にも抵抗する魏の勢力はいたものの……。
「いくぞ、突撃だっ!!」
『おおおおっ!!』
『飛信隊』が、なにより信とその麾下五百の騎馬隊が一つの巨大な獣となって戦場を縦横無尽に駆けまわれば瞬く間に敵軍は蹴散らされ、喰い荒らされていく。
ともすればまるで災害が襲っているかのような威容すらも放っている。
「いや、もう本当冗談みたいな光景だよねぇ」
「ですな」
「絶対、あの騎馬隊とは相手したくないです」
『飛信隊』と共に残りの地方の平定をするために従軍している『楽華隊』の蒙恬、副長にして蒙恬の教育係を長年務めており、蒙恬からは『じい』と呼ばれている
「た、たった五百の騎馬隊であのような……」
「……(絶対に負けん)」
平定に取り掛かっている自分たちの援軍に来た『飛信隊』を率いる李信の采配や指揮、戦術、そして武力を目にしている『玉鳳隊』を率いる王賁、副長で王賁の教育係も務めてきた番陽もまた、瞬く間に敵軍を蹴散らし、食い荒らしながら本陣へと迫っている信とその麾下五百の騎馬隊の武威を見ながら驚愕する。
その上でいずれは越えるべき目標として信とその麾下五百の騎馬隊の姿を目に焼き付けた。
だが、そもそも『飛信隊』の強みはそれだけでは無い。
「くっ、『飛信隊』……噂されるだけはあるか」
「拙いですな」
『飛信隊』の登場によって一気に戦況を覆されていく魏軍は守りを固めつつ、身を潜める事にした。
だが、刺客を務める一族である『朱凶』を軸に様々な工作や諜報などを務める数百の『秘密部隊』が魏軍の者に扮して潜入しており……。
「はああっ!!」
潜入させていた者たちに侵入の手引きをさせると『飛信隊』の軍において大部分を占め、他の部隊と比べても戦闘能力の高い歩兵、その中でも選りすぐりの精鋭を引き連れて信は突撃し、本来の得意な武器で漂の形見にして政の宝剣を持って、剣舞を繰り出し敵を切り倒していった。
『ひ、飛信隊だぁぁぁっ!?』
「なっ!!」
「ば、馬鹿なっ!?」
まさかの奇襲に動揺している間にも次々と魏軍は切り伏せられていき……。
「抵抗するか、降伏するか……好きにしろ」
『降伏する』
そうして、戦意を失った事で降伏していく。
結果として『飛信隊』が参戦した事で数週間もしないほどの僅かな日数で山陽地方の平定は完了した。そして、平定までの間に見せた信の武威が魏に対しての『信来来』の異名に対する畏怖を強めたのは言うまでもない。
さらにその後……。
「今日、この時をもって山陽は秦国の『
山陽周辺一帯に成功すると秦軍総司令である昌平君と行政の長である李斯が護衛部隊を引き連れながら山陽城を訪れ、周囲一帯の軍と部隊、文官一同を集めた。
そうして、昌平君は山陽の名称を変えると宣言したのである。しかもそれに伴って他の城邑より秦人一万人を移住させるとも発表した。
始皇五年――この山陽東郡宣言は秦国が領土拡大に本腰を入れるという宣戦布告を意味するのであった。
そして、この日より改めて魏に対して脅威として恐れられているのもあり、牽制になる事から山陽一帯の守備を務める事になったのだった……。