秦が『山陽』の平定を完了し、『東郡』へと名称を変えると共に秦人一万人を移住させるなどして領土拡大するという宣戦布告をすれば、それに刺激を受けた国があった。
それは『趙』であり、三大天の一人である『
「(王騎将軍が言ってたように李牧って奴はとんでもない奴のようだな)」
一度、趙荘と李白を捕虜にしていた事でそれの解放や和睦のために秦国へと李牧は訪れたと言い、一目見た王騎は秦において脅威になる存在だと感じたとの事。
しかし、信はそのとき龐煖との死闘で勝利を掴んだが、死にかけていて治療中だったために姿を見る事は出来ていない。
「(まあ、俺は俺の出来る事をするだけだ)」
「ん、どうした信?」
「いや、たとえ戦乱が訪れようと俺達で乗り越えてみせるって考えてたところだ。李牧とやらが相手でもな」
「うん、そうだね」
朝日も昇り始めた時間帯、貂の頭を撫でながら思案に暮れていた信へいつの間にか起きていた貂が声をかけ、そうして少し戯れる。
「さてと」
そうして、完全に起床すると身支度を整えたり、食事を済ませたりなどすると山陽城にいる自分の部隊、『飛信隊』は勿論、他の部隊の鍛錬をし始めた。
城内だけでやるのではなく、城外に出ての遠征鍛錬などして自分の部隊は勿論、他の部隊の全てを精鋭に変えてみせるという意気込みの下、激しく鍛え込んでいった。
それとは別に自分の鍛錬も当然しており、『飛信隊』は勿論、他の部隊の武勇に優れた者たち複数相手に一人での手合わせ。
頭の中に龐煖や廉頗など強者の姿を思い浮かべながら、矛や剣を持っての仮想戦闘。
五百歩離れた場所に置いた的へ本来なら複数人でしか弦をまともに引き絞れない強弓を使って命中させ続ける鍛錬。
更には鏃に小さな砂の袋を付けた矢を前と左右の三方から射させ、その全てを手で掴むか払い落とす鍛錬など過酷な鍛錬も積んでいく。
そんな中で他の部隊の兵やあるいは招集された新兵から優れた者が『飛信隊』に組み込まれた。
それにより、『飛信隊』は歩兵八千五百、騎兵三千五百(うち、五百五十の騎兵は信の麾下)として再編されたりもする。
ともかく、信は『東郡』において魏に対しての牽制の役割を果たしていったが……。
三か月ほど経過すると東の先端の城で前線基地である『
「ここの周囲は魏、趙、
「うん、だから要警戒態勢を敷かないと……どこが出てきてもおかしくない」
「だな」
そうして、危険地帯である周囲をゆっくりと警戒態勢で歩みながら、信は『飛信隊』の秘密部隊による斥候を放った。
「李信将軍、こちらへ……」
少しして森の方から呼ばれたのでそちらへ向かうと……。
「子供っ!?」
「何があったか、話せるか?」
「
傷だらけでぼろぼろ、背中に矢まで刺さっていた少年がいて、信達は驚きながらも軽い手当てをし、水を飲ませたりして介抱しつつ、少年に事情を聞くと少年は最後に助けを求めた。
「任せろ」
それに対し、信は頷きながら応じるのであった……。