キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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五十三話

 

 

 信は元は魏の『山陽』であり、今は秦の『東郡』。その東の端にある前線基地の『東金城』へと向かう道中、とんでもない物を目撃する事となった。

 

 今の『趙』における重要人物であり、少し前に『燕』に所属しその名を中華にも轟かせていた大将軍である劇辛を討ち取った事で実力を知らしめた李牧。

 

 そして、国土は六国を足し合わせているほどの広大さを持ち、横に広い事で秦・韓・魏・趙・斉の五か国と国境を成している程の超大国、それが故に迂闊に戦を仕掛けられないが確実に一国を叩き潰す戦力を有している『楚』において大偉人として中華に名を轟かせている春申君。

 

 

 

 この二人が密会を交わしているのを目撃したのだ。

 

 

 

 それにより、信は二人が行ったのは楚と趙の同盟という単純なものではないと予測しつつ、最悪な物としては今からおよそ四十年前に東の超大国であった『斉』の武威に対抗すべく、燕、秦・韓・魏・趙・楚の六国が盟を結んで結成された『合従軍』。

 

 それを李牧と春申君は『秦』に対して行おうとしていると推測した。

 

 

 

 『合従軍』の威力は当然、凄まじい。

 

 実際、燕の大将軍であった楽毅(がくき)が総大将となって率いられたのもあるだろうが、斉は即墨と苣の二城だけを残して他の全ての土地を失ったのだから……。

 

 

 

 今の情勢で言えば魏の山陽を獲った事で他の国々と国境を成すようになり、領土拡大の意思を『秦』は示している。

 

 それを考えれば、他の国々が早いうちに『秦』を滅ぼそうと考えてもおかしくはない。

 

 大物が二人、わざわざ国や人目を忍んで会合するのだから、こうした大事に対する打ち合わせや段取りなどをしていると思った方が良いだろうと信は思ったのだ。

 

 とはいえ、今の時点で確証ではないために信は秦王である政、王騎へ李牧と春申君が多国の同盟を組もうと会合した可能性ありと連絡をしたのだった。

 

 

 

 その後は『東金城』へと向かい……。

 

「ルアアアッ!!」

 

 自分達の『山陽』を取り戻すべく、日々、戦を仕掛けに攻めてくる魏軍を自分と軍師、貂によって考え出した戦術と戦略を元に自身の臨機応変な采配であり、指揮による用兵で翻弄しながら自身の麾下である五百五十の騎馬隊と一つの獣となって、戦場を縦横無尽に駆けながら、矛に自分の全力の武威を込め、日々磨き抜いている戦技を用いながら振るい、そうして殲滅していった。

 

 

 

 

 そんな日々の中で王騎から文が届いたのでそこに記された場所へ向かう。

 

 

 

 

「ンフフ、御足労かけてすみませんねぇ李信。ただ、内容が内容ですから……」

 

「はい、それは分かっています」

 

 王騎と彼の副将である騰が居て、信へと王騎は話しかけた。

 

 

 

「それであの話は確かですね?」

 

「はい、そしてあくまで推測でしかないですが……李牧と春申君は『合従軍』を結成して我らが国を滅ぼそうとしているのだと思います」

 

「……確かに大物二人が国どうしとしてではなく、極秘の会合をするのならそっちのほうが普通かもしれません」

 

 信が改めて自分の考えを言えば、王騎は頷いた。

 

 

 

「ココココ、だとすれば六国を相手に大戦争をする事になる訳です……血が滾りますよ、信、これはお手柄ですがしかし、皆忙しく、苦しくなりますよ」

 

「俺はただ、将として秦のために力を尽くすだけです」

 

「ええ、そうですとも……」

 

 信の言葉に頷くと必要な時は指示を送ると言い、これからに向けた策を練ったりなどの準備をすると良いながら、信の下を去って行ったのだった。

 

 

 

 

 その後、魏と戦い、退け続けていた信であるが二十日を過ぎたあたりから動きが静かになって来た。

 

「(会合したな)」

 

 合従軍のための会合があったのだと信は推測する。

 

 国家の存亡を巡る戦が行われる事を予感しているが、しかしそれはそれとして愛でたい事もあった。

 

 

 

「いやー、本当めでたいよな。我らが王に子が出来るなんて」

 

「ああ」

 

 そう、秦の王都である咸陽にて政の子を宮女が身籠ったとの事である。

 

 とりあえず蒙恬とその事について祝い酒を信は飲み交わした。

 

 そうしてその日の夜……。

 

 

 

 

「政にとうとう、子供が出来たなんてな……。なんか、すっげえ嬉しくなってくる」

 

「そうだな……貂、今はまだ無理だがそのうち、俺達も……」

 

「うん……」

 

 

 

 寝床にて信は貂と愛を交わし合った後、彼女を抱き締めながら話を交わす。そうして、また貂と誓いの言葉と共に口づけを交わし、そうしてまた、信と貂は互いへの愛を伝え合ったのだった……。

 

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