キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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五十五話

 

 現在、秦に対して幾つもの国が侵略を開始していた。

 

 一つは大国である『楚』であり、総数十五万の大軍勢を率いてきた。

 

 これに連動するように動いた『趙』は総数十二万というこれまた、大軍勢を率いて『馬陽』を抜けて来ていた。

 

 そして、北東部前線基地である睢城(すいじょう)を落としながら『燕』軍十二万が国境を侵しており……。

 

 

 

 

 更に『斉』も趙の背を追うように大軍を興しながら、秦へと侵攻しようとしている。

 

 そんな中で十万の軍勢を率いて侵攻していた魏は李信の奇襲を受けて敗走していた。

 

 この状況の中、中丘(ちゅうきゅう)より五万の軍勢を率いて秦へ侵攻している国があった。

 

 

 

 

『韓』である。

 

「(我が毒の威力を思い知らせてやろう)」

 

 韓軍を率いる総大将であり、どす黒い血管の浮かぶ醜悪な姿の男である成恢(せいかい)は迅速な侵略をしつつ、思考していた。

 

 彼は本来、男も色を覚える程の美男子であったが、南は越より先、西は匈奴の先の異世界まで手を伸ばして猛毒を持つ生物、植物、鉱物をかき集めそれらを日夜、研究しながら抽出と混合を繰り返す事で独自の様々な猛毒兵器を作り出した代償に自らも猛毒に冒され、醜悪な姿となってしまったのだ。

 

 最悪にして絶殺の脅威が秦を襲うために向かってきていたが……。

 

 

 

 

「突撃じゃああああっ!!」

 

『なっ、ぐああああっ!!』

 

 秦軍の歴戦の老将であり、猛将である麃公が一万の軍勢で進軍している『韓』軍へと突撃を開始し、蹴散らし始める。

 

 

 

「迎え撃てっ!!」

 

 当然、麃公に対抗するため成恢は迎撃を兵に命じ、動かすも……。

 

「麃公将軍に続けー!!」

 

 魏軍を撃退して手に入れた馬を変え馬として使ったりしながら迅速に韓軍の元へと駆けつけた『飛信隊』と『楽華隊』が様々な方向から韓軍を削り取るべく突撃していく。

 

 

 

 

『なっ、こいつら何処から!?』

 

 韓軍は様々な方向からの襲撃に動揺し、混乱。

 

「慌てるな。所詮は少数の突撃に過ぎん。固めて迎え撃て!!」

 

 成恢は堅陣を築いて対処しようと軍勢を動かす。だが、堅陣を敷くにも隙はあり……。

 

 

 

 

「突撃だっ!!」

 

『オオオオオオッ!!』

 

 動き出せば一つの巨大な獣と化す信とその麾下五百五十の騎馬隊は『韓軍』を率いる総大将を狩るべく、息を潜めていた。

 

 そうして生じた間隙を衝くべく、戦場を駆け始める。

 

 

 

「うあああ、な、なんだこいつはっ!?」

 

「ま、まずっ!?」

 

 巨大な獣と化した李信の軍勢による突撃を止められず、蹴散らされていく韓軍。あっという間に成恢の元へと肉薄し……。

 

 

 

「ルアア!!」

 

 信の矛による一閃で成恢は首を刎ね飛ばされる。

 

「敵将、この李信が討ち取ったぁぁぁっ!!」

 

 そうして、信は敵将を討った事を叫ぶ。

 

 

 

 

「全軍、掃討だあああっ!!」

 

『ウオオオオオ!!』

 

「わし等もやるぞぉぉぉっ!!」

 

『オオオオッ!!』

 

 そうして、総大将である成恢を一瞬にして討ち取られた隙を衝かれながら、李信と麃公の猛撃によって大多数の軍勢を討ち取られながら、『韓』は撤退していった。

 

 

 

 

「ふっ、李信よ。お前の炎はやはり、良いのぅ」

 

「ありがとうございます、麃公将軍」

 

 戦が終わると麃公は李信へと笑いかけ、李信は礼を尽くした。

 

 

 

「趙はこうも上手くはいかんじゃろうがな」

 

「ええ、俺もそう思います。ですが……」

 

「くい留めるぞ」

 

 話し合うと『趙』の進軍をくい止めるべく、一緒に進軍する事を決めるのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 秦国の王都である咸陽においては会議が行われていた。無論、それは『合従軍』が結成され、この国へと侵略を開始したからであるが……。

 

「報告っ!! 飛信隊の李信将軍が剛陵城付近にて十万の魏軍を敗走させました」

 

 この報告により、周囲が信の活躍に驚愕しつつ、安堵した。

 

「報告っ!! 麃公将軍と李信将軍が韓軍と戦闘し、李信将軍が敵総大将成恢を討ち取り、韓軍を敗走させました」

 

「なんと、李信将軍……あの若者がこれほどの……」

 

「……想像以上だな」

 

 李信の大活躍に最近、国王に並ぶ相国(しょうこく)の座に就いた呂不韋と軍総司令であり、右丞相でもある昌平君が驚愕する。

 

「(信、本当にお前はなんと頼もしい……)」

 

「(お前には本当に救われるな、信)」

 

 

 左丞相となった昌文君と秦王嬴政はこれ以上ない感謝に賞賛を心の中で送ったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

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