現在、『楚』と『趙』、『燕』の三つの国に攻め込まれている『秦』は防衛戦を築いている軍はそのままに各大将軍、将軍を王都である咸陽へと招集した。
招集されたのは王騎、蒙驁、張唐の大将軍、蒙武、王翦、桓騎、麃公とそして、李信である。
「(ほう、論功行賞の時より更に……)」
相国の座についている呂不韋は招集された中でも圧倒的に年若いが、しかし、見劣りしないどころか上回っているとも思える堂々とした態度であり、威風であり、滾っている戦意であり、熱意に目を見張った。
「ふ、流石にこの面子が一堂に会すと空気が張り詰めて息苦しいのぅ、思えばこんな勢揃いは初めてだ」
軽く呂不韋は軽口を叩いた。
「ンフフフ、合従軍の事は皆、聞き及んでいます。余計な前置きなく始めて下さい。中には戦線に兵たちを張らせたまま登城している将たちもいますのでねぇ」
王騎が呂不韋へと言った。
「分かっておる、昌平君」
「ハ」
そうして、呂不韋の呼びかけに昌平君は応じ……。
「ではこれより、作戦を発表する」
そうして、昌平君は練りに練った作戦を発表していく。
とはいってもその作戦は『楚』に対しては蒙武と張唐、王騎を中心に、そして『燕』に対しては蒙驁、王翦、桓騎、『趙』に対しては麃公と李信を中心に防衛していくというものである。
なにせ、相手側からすれば本来、『魏』に『韓』と『斉』も加えての同時侵攻をするつもりであったのだが、半分が消えている。
合従軍の話をもちかけた楚と趙に対して、魏と韓は自分たちが敗走させられた責任を求めるだろうし、報復だってする可能性もある。
更に斉に至っては魏と韓をそのまま、あるいは結託して楚と趙、燕の領土だって狙える。
対処しなければならない事態が今でも多く、それが故に長引かせれば長引かせるだけ、合従軍としての利点は消えていくのだ。
「最後に……こうした対応が出来るのも事前に『合従軍』の可能性を報告し、更には魏を瞬く間に敗走させた李信将軍、それに呼応するように韓の撃退に向かった麃公将軍とそれに協力した李信将軍の功によるものだ。二人ともよくやってくれた」
『ありがたく』
秦王である政がそう、李信と麃公を労い、二人はそれに包拳礼をする。
「ココココ、本当に良くやってくれました麃公さん、そして李信、趙はよろしくお願いします」
王騎が二人へとそう言い……。
「フォッフォ、どちらも流石じゃ。儂も負けていられんわい」
蒙驁がそう猛る。
「……成程、また一人、秦に頼もしい存在が……」
張唐は李信を観察しながら、秦にまた一人、要となる将が出てきたと把握する。
「(相応しい立場を得て、更に大きくなっている。俺も負けていられん)」
蒙武も李信の成長ぶりに猛り始めた。
「(……様子を見て、目があるのなら我が家臣に)」
王翦は李信を見定めつつ、己が野望を叶える存在に加えられるかどうか、彼の実力を探って行こうと判断する。
「くく、随分と頼もしいなぁ李信」
「どうも、桓騎将軍」
桓騎は直接、李信へと近づき話しかけそんな彼の視線と真っ向から李信は対峙した。
「この前の山陽の戦、あの廉頗とかいう化け物爺との一騎打ち、見てたぜ。まさか勝つなんてな、だが、あの爺には痛い目に遭わされていたからお陰で留飲は下がった。礼を言うぜ」
「態々、ありがとうございます」
「へっ、良いって事だ……元野盗と元下僕、身分としては同じようなもんだ。
親密そうに言いつつ、桓騎は李信から目を離していない。何かを感じ取ろうとするかのように……。
「それはそのままの意味で取って良いんですか(深い悲しみと怒り、この人も……)」
李信は応じつつ、桓騎もまた、誰か自分にとって大切な存在を失っている事を感じ取った。共感というか、そういうのがあったのだ。
「ああ、勿論だ」
そして、桓騎も共感したようである。
ともかく、方針も決まり感陽からそれぞれの戦線に各将たちは向かうのであった……。