キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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五十九話

 

 『秦』を『合従軍』にて滅ぼそうという李牧と春申君の求めに応じた国の一つである『燕』。

 

 率いてきた軍勢は十二万であり、率いる総大将は髭を蓄えた大男にして北の五十の山岳族の王にして大将軍のオルド。

 

 彼は山を見てその奥に広がる山々の地形を読み取る『山読み』の力が傑出していた。それは故に山岳戦が得意であるのだが……。

 

 

「蒙驁の副将二人、王翦と桓騎こそが蒙驁を大将軍にしたと聞いていたが……二人とも、大将軍級の力を持っているではないか」

 

 蒙驁軍がオルドの相手となり、そうしてオルドは王翦と桓騎の策略によって翻弄されながら追い詰められ、しかも危うく本陣を強襲されるところであった。

 

「これはもう、無理だな……『魏』に『韓』はやられ、そもそも『斉』は来ていないし、結局合流すら出来なかった。被害も大きいし、此処は撤退だ……秦も中々やるではないか」

 

 そんな事を言いながら、オルドは秦から完全に撤退したのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 超大国である『楚』は秦の六大将軍が最後の一人、王騎と蒙武、張唐を相手に戦っているが……。

 

「『燕』も……『趙』も……やられただと……李牧、お前までなにを負けているのだぁぁぁっ!!」

 

 春申君は『燕』撤退の報と『趙』撤退の報を聞き、少しの間呆然としたが、最後には怒りを爆発させた。

 

「こうなれば、少しでも秦の力を削れ。有力な将兵どもを屠り、領土を奪うぞっ!!」

 

 秦の国力を削り、次なる侵略の時に有利となるようにそう『楚』軍のものへと厳命する。

 

 そして、秦との戦いの状況であるが……。

 

 

「(流石は超大国……一筋縄ではいきませんねぇ)」

 

 王騎たちは苦戦していた。最初こそ、侵攻していた楚軍の先遣隊を率いていた将の一人である臨武君を屠り、出鼻を挫いたがまだまだ、強大な者がいた。

 

 楚の総大将であり、蟹のような髪型をした巨漢である汗明(かんめい)だ。彼は凄まじい武力を有しているのが見て取れるし、それに対する自負も凄い。

 

 そして、彼の傍には軍師兼将軍を務める青年、貝満(べいまん)と同じく軍師兼将軍を務める髭が長く、髭もある男の剛摩諸(ごうましょ)、禿頭に髭を蓄えた老人の軍師である仁凹(じんおう)がいてそれらが複数の知略を繰り出してくる。

 

 更には策略で言うなら、かなり長身で妖艶な女性の将である媧燐(かりん)こそが厄介だ。十分に大将軍になれるほどの実力を持っているのだ。

 

 武力に優れる猛将二人、蒙武に張唐の武力に自身の配下である軍団長らを使って一定の戦線では戦局を有利としているが、それでも全体を見れば押されつつある。

 

「春申君の奴がうるさいからねぇ、一気に戦局を取らせてもらうよ……本音を言えば本陣を襲いたかったけどね」

 

 そんな王騎たちに対し、まやかしを得意とする媧燐が精鋭五千を潜ませていて一気に将兵らを襲撃し、屠る罠を張っていた。

 

 その罠が発動しようとしたところで……。

 

 

 

「バハァァァッ!!」

 

 

 趙軍を破った事で援軍として駆け付けた麃公の突撃が粉砕する。

 

 そうして、更に『飛信隊』の部隊と『楽華隊』、その他、秦軍の部隊が援軍としてこの戦線に介入していく。

 

 

 

 

「さて、まずは掃除からだな」

 

 麃公と共に援軍として駆け付けた李信は連れてきた五万ちょっとの部隊に対し、指揮を開始していく。

 

 

 

「っ……何だ、こいつっ!?」

 

「こ、この援軍の動きはっ!?」

 

「ま、全く読めん!?」

 

「わ、我らの知略が通じないっ!?」

 

「ば、馬鹿なっ!?」

 

 李信の戦術は『楚』の知将に軍師らを凌駕していた。

 

 

 

 援軍として駆け付けた事による利点、挟撃を行うのもそうだが波状攻撃といった特殊な戦法を使ったり、あるいは戦場をただ、駆けさせる事で揺らぎを作って別の部隊で粉砕。

 

 囮を用意し、奇襲や隙を生じている部隊への奇襲等々、基本的な戦術が変化させただけのものかと思えば、そうした戦術の中に大規模で複雑な戦術を潜ませており、それを発動する事で機先を制して楚軍を潰し始めていく。

 

 

 

「これはありがたいっ、いくぞおおっ!!」

 

「ふっ、軍略も中々のものだったか……ゆくぞおおっ!!」

 

 戦局が覆っていくのを感じ、張唐も蒙武も奮起しその武で目の前の楚軍を蹴散らし始める。

 

 

 

 

『(な、何故……)』

 

 自分たちの知略が通じない事に媧燐たちは唖然とする。というより、自分たちの考えが読まれているようにしか思えない手を打ってきており、だからこそ機先を制されていると感じた。

 

 

 

 そして、こっちはそれが読めないのだから堪らない。

 

 

 

「ンフフフ、それはそうですよ……確かに李信の戦術と戦略が優れているのもありますが何より、李信は麃公さんと同じ本能型の極致にあります。軍の『起こり』を察知できるんですよ」

 

 そう、麃公もであるが李信もまた、敵兵の表情や集団の重心やらなどで『起こり』を感覚的に捉える事が出来、相手の動きを読めるからこそ機先を制した手を打つ事が出来るのである。

 

 だからこそ、逆に知略に優れた者ほど李信の戦術に嵌ってしまう事になる。それに李信の戦術と戦略の力量自体もかなりのものなので『起こり』抜きでも相手を翻弄したりできるのであるが……。

 

「(貴方は戦う度に強くなっていきますねぇ、李信)」

 

 王騎は李信の成長を喜びつつ……。

 

「では、私達も巻き返していきますよぉー」

 

 王騎も戦局を覆すように部隊を指揮していき……。

 

 

 

「(さあ、始めろ。李信)」

 

「いつでも構いませんよ、李信」

 

 麃公と王騎が李信へと語り掛ける。それは李信がとある事を始めるからだ。

 

 

 

「さて、……と、……、……達に伝令を送れ。内容は……」

 

 まず、戦場に入る幾つかの武将たちにとある伝令を送るように指示をすると……。

 

 

 

「今から()()()()。全予備隊を前に出せ、今戦っている全部隊にも号令だ」

 

 李信は戦場にてその本能型としての感覚で熱を放っている箇所を捉えながら、指示を始める。

 

 

 

「俺達も出るぞぉっ!!」

 

『おおおおおおおおっ!!』

 

 李信はそうして、自身の麾下と控えている全部隊をも動かす。

 

 

「『楚軍』を焼き尽くせぇぇぇっ!!」

 

『おおおおおおっ!!』

 

 李信はこの戦の雌雄を決する『大炎』を熱を放っている箇所にて巻き起こすために進軍を開始するのであった……。

 

 

 

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