キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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六十話

 

 『秦』と『楚』の戦局が劇的な変化を始める。

 

 なんと乱戦が起こっている場所に急に『飛信隊』の全部隊が怒涛の如く、集まり始めたのである。

 

 

「はあああっ!!」

 

 李信は麾下の騎馬隊と共に巨大な一つの獣となりながら、疾走していき、そうして乱戦が巻き起こっている場にて己が強大な武威を込めた矛を壮絶なる戦技を用いて振るう。

 

 大斬閃が踊り、幾多もの楚軍の者を切り裂いていく。

 

「うおおおおっ、李信将軍に続けぇぇぇっ!!」

 

 李信の武威と戦意が伝播し、『飛信隊』だけでなくこの場にいる『秦軍』の兵たちも猛りながら、目の前の楚軍を屠っていく。

 

 『くっ、負けるなぁっ!!』

 

 李信らに負けないよう、楚軍はやはり、集中的にこの乱戦が起こっている場へと向かう。

 

 起こるのは『大乱戦』であり、『大炎』だ。

 

 

 

 そう、『大炎』とは大乱戦を巻き起こす事であり、先んじて巻き起こすので当然、流れは『秦軍』が掴む事になる。

 

 

 

「ふっ、あそこじゃあ。焼き尽くすぞぉっ!!」

 

 本能で戦局の気配が分かる麃公軍もその場所へと全部隊が向かう。

 

「この用兵……ならば、我等も行くぞぉっ!!」

 

 何度か共に戦っている事で李信の戦術が分かっており、更に死闘が得意だと豪語する王騎の軍団長の一人である干央(かんおう)もまた、その『大炎』が巻き起こる場へと向かった。

 

「ち、あいつか……俺らもいくぞおっ!!」

 

 王騎の軍団長の中で最強だと称される録鳴未(ろくおみ)もまた、同様の理由で『大炎』の場へ向かい、だからこそ……。

 

 

 

『いけいけぇっ!!』

 

 当然、楚軍もその場へと向かうしかない。よって大炎はますます大きくなっていく。

 

 

 

 

 

 

 そんな中で……。

 

 

 

「優れた弓使いがいるな……」

 

 李信は自分に向かって放たれた矢を首を傾げるようにした自然な所作にて回避しながら、矢が放たれた方向へと駆ける。

 

 矢が何度か放たれたが全て回避するか、矛にて切り払い……。

 

 

 

「ふっ!!」

 

 李信の馬術にて馬が跳躍するのと同時、矛を右手にて持ち上げるようにして投擲した。

 

「うがっ!?(姉さ……)」

 

 楚軍の千人将にして長い黒髪を後ろで束ねた容姿端麗な男で優れた弓の腕を有する白麗(はくれい)は李信の矛に腹部を穿たれながら、吹っ飛び、倒れたのであった。

 

「麗ぃぃぃぃぃっ!! てめぇぇぇぇっ!!」

 

 荒々しい顔つきの黒髪の男であり、白麗と同じ千人将である項翼(こうよく)が中国五大宝剣の一つである片刃の『莫耶刀』を掲げながら、李信に突撃していく。

 

 

 

「ふっ!!」

 

「なっ!!」

 

 李信は背中の鞘から剣を抜き、そして莫邪刀を振り下ろしてきたその斬撃を切り上げる事で宙へと跳ね上げ……。

 

「しいっ!!」

 

 そのまま、項翼(こうよく)を振り下ろした斬閃にて切り伏せた。

 

 そして、莫耶刀が背中に剣を納める李信の元へと落ちると……。

 

 

 

「良い剣だな」

 

 それを李信は手で掴む事で受け止めながら、言い……。

 

 

「き、貴様が李信かぁっ!!」

 

「すぐに屠ってやる」

 

 李信へと汗明の将である貝満や剛摩諸が向かって屠ろうとするが……。

 

 

 

「ルアアアっ!!」

 

 李信が莫耶刀にて斬閃を踊らせる事で肉塊に成り果てた。

 

 

「やっぱり、良い剣だ」

 

 そうして李信は更に楚軍の元へと向かいながら、次々と切り伏せていく。

 

 

 

『くそおおっ!!』

 

 そんな李信に対抗するため、どんどん楚軍は集まっていくも……。

 

「おおおおっ!!」

 

 やはり、李信の斬閃の前に切り払われていく。

 

 そうして、李信は自分が敵を切り伏せ続けていく事でこの大乱戦を有利な状況へと導いていくのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、大乱戦が巻き起こっておりそれに打ち勝とうと『秦軍』も『楚軍』も集まり続けているが、部隊が向かうという事は他の場所にいる部隊も無くなるか、手薄になるという事である。

 

 

  そんな手薄になっているとある軍の場へと向かっている幾つかの秦軍の部隊がおり……。

 

 

 

「くつ、正気か秦軍は……」

 

 汗明の軍師である仁凹が大乱戦が巻き起こるのを眺めていると……。

 

 

 

「展開しろぉっ!!」

 

「ここだぁっ!!」

 

「止まれぇっ!!」

 

 張唐が汗明の右側に壁の如く、軍を展開し王騎の軍団長である鱗坊が汗明の左側に壁の如く、軍を展開。そして、同じく王騎の軍団長であり、機転が利く隆国が汗明の後ろ側に壁の如く、軍を展開する。

 

 

 

 汗明軍は一瞬の間に三軍の左右と後ろを囲まれてしまった。

 

 

 

 そして、汗明の前側には……。

 

「(ふっ、どこまでも俺を滾らせてくれるな、李信よ)」

 

 蒙武が立ちはだかる。この数人は全て李信からの伝令により、動いたのである。

 

「な、なんとこれは『包雷(ほうらい)』っ!?」

 

「この汗明を討とうというのか……」

 

 『包雷』は左右と後方に壁を作る事で敵将の動きを封じ、中央の刃で首を取る一撃必殺の戦術。それを決められ……。

 

 

 

「汗明、貴様はこの蒙武が討つ!!」

 

「舐めるなぁぁぁっ!!」

 

 蒙武に対し、汗明は背中から大錐を抜くと互いに突撃していき……。

 

 

 

『うおおおおっ!!』

 

 互いに全力全開の武威を込めた剛撃を放つ。

 

 

 

 

「うぐっ!?」

 

 打ち合いは李信の伝令を受け、汗明を討つ役割を与えられた事で猛りに猛った蒙武が討ち勝った。

 

 大きく、汗明は吹っ飛びながら身体を崩され……。

 

 

「止めろぉっ、蒙武ぅぅぅっ!?」

 

 仁凹が悲痛な叫びを上げる中……。

 

 

 

「があっ!!」

 

 蒙武が振り下ろした剛撃によって汗明の頭は粉砕される。

 

「総大将、汗明。この蒙武が討ち取ったぁぁぁっ!!」

 

 そうして、蒙武は勝利の咆哮を上げたのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三

 

 

 

 

 大きい炎を巻き起こし、李信が先導者として秦軍を率いながら楚軍を焼き尽くしていく中で楚軍の総大将であった汗明が討ち取られる。そうした状況と更に同時進行で……。

 

「行きなさい、騰」

 

「ハ!!」

 

 王騎は副将である騰へと指示をすれば素早く騰は突撃を開始……なんと大炎が巻き起こった事で生じた僅かな空隙、それは本陣に通じていたのだ。

 

 よって騰はその空隙の中を進んでいく。

 

「な、何だお前っ!?」

 

 ファルファルと螺旋の力を得ながら敵を切り裂く独特の剣術を使いながら本陣前に布陣していた兵たちを切り裂いていき……。

 

「む……鋭い奴がいるか」

 

 本陣に侵攻した騰は目的としていた春申君がいない事で呟くもそのまま本陣は壊滅させる。

 

 

 

 そんな中で……。

 

「こ、これは……こ、こんな……こんな事が……」

 

「まじで危なかったよ……李信は化け物だ」

 

 一気に戦況を敗北に追いやられた事で呆然とする春申君とギリギリのところで本陣強襲に気づき、直ぐに春申君を連れて撤退した媧燐は汗を流しながら言うのであった。

 

 こうして……。

 

 

 

 

 

 

 

『て、撤退だぁぁぁっ!!』

 

 本陣陥落に汗明が討ち取られた事で戦意を喪失し、唯々、楚軍は潰走を始めていく。

 

「勝鬨を上げろぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 『うおおおおおおっ!!』

 

 潰走する楚軍をある程度追討すると勝鬨を上げさせる。

 

 

 『楚』に打ち勝った事により、『秦』は合従軍の脅威を見事打ち払ったのであった……。

 

 

 

 

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