キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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六十六話

 

 数年前に王弟である成蟜の反乱鎮圧に協力してもらった借りを返すため、山民族の女王である楊端和の山界制覇への李信率いる『飛信隊』は援軍となっていた。

 

 そうして……。

 

「殺し尽くせぇっ!!」

 

 楊端和が先陣を切って双剣を唸らせながら敵対する部族を切り伏せていく。

 

 

 

「【はっ!!】」

 

「【うおおおっ!!】」

 

「【いくぜぇっ!!】」

 

 楊端和の配下であるバジオウ、タジフ、シュンメンもそれぞれ猛りながら敵部族を討滅していく。

 

 

 

 そう、山民族は普段の戦いの時より猛っていた。

 

「しいっ!!」

 

 それは『飛信隊』が援軍としてとても心強く、副官である羌瘣も凄まじい武威と武技を放ち、活躍しているのもある。

 

 

 

 だが、一番は……。

 

「いくぞ、『紅飛』」

 

 鮮血に塗れているようにも見えるが、よく見れば鮮やかですらある『紅色』の遥かに強大で強靭なる馬が『紅飛』の腹を李信は腿で締め付け、今より戦が始まるのを伝え……瞬間、紅飛が一度棹立ちになり、嘶く。

 

 

 

 瞬間、地面を駆け跳ねているが如き、超絶の速度で驀進する。

 

 

 

 前を遮ろうとした者を轍にすら変え……。

 

 

 

「ルアアッ!!」

 

 李信が大矛を旋風の如く振り回し、戦舞を繰り出せばその刃と柄で目の前の敵を切り裂き、或いは粉砕して肉塊をばら撒き、鮮血を地面に河の如く溢れさせた。

 

 戦場を『紅』が縦横無尽に駆ける事で戦場に赤が広がっていくのだ。無論、それだけでは無く……。

 

 

 

 

『うおおおおっ!!』

 

 李信が一つの獣となるべく、鍛え上げた麾下の騎馬隊も並大抵ではない。上手く李信に続いていき、そうして李信と一つの巨大な獣となっていく。

 

 こうして圧倒的な武威を持って敵部族を屠っていき、この武勇の熱によって山民族も滾らせたのだ。

 

 

 

『リシンショウグン、リシンショウグン!!』

 

 当然、勝利をすればするほど、李信達は山民族に受け入れられるし、讃えられる。

 

 『飛信隊』が援軍となった結果として楊端和が想定していたより短い期間で山界の制覇が進んでいったのである。

 

 

 

「感謝するぞ、『飛信隊』の皆……そして、お前達と共に戦えた事を誇りに思う」

 

『おおおおっ!!』

 

 援軍としていられる期間が終わり、楊端和は感謝を示すための『宴』を開催する。

 

 

 

 

 そうして……。

 

「李信、お前は本当に良い男になったな……」

 

「楊端和……」

 

 宴が終わると李信の部屋に楊端和が現れ、そうしてどちらともなく抱き締め合い、口づけする。

 

「私をお前の女にしてくれ」

 

 そう誘い、こうして李信は楊端和とまるで互いの心身をくらうが如く激しい交流を交わした。

 

「お、オレも負けないからな」

 

「私もだ」

 

「良いぞ、来い」

 

 更に貂と羌瘣とも激しく心身を交える交流をしたのであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 始皇八年(紀元前239年)――楊端和の援軍としての役割を果たした『飛信隊』は再び、魏との前線に戻り布陣し、威圧していたが……。

 

「なに、趙が二万の軍で北東の要所、『屯留(とんりゅう)』に向かっている?」

 

 『飛信隊』には情報収集に潜入、諜報や工作などを使う秘密部隊が別に存在する。そして自国も敵国も放っている秘密部隊より、李信は情報を得た。

 

 地図を持ってこさせ、観察しつつ……。

 

 

 

 

「『屯留』一帯は元は趙の領土だ。それを獲るのは趙にとって有利になるものだが……」

 

「なんか妙だよな」

 

「妙どころか臭い……策謀の匂いがする。良し、お前達、もっと『屯留』を集中的に探れ。あらゆる事をだ。下手をすれば面倒な事になる」

 

 李信は不自然であり、本能型武将としての勘が疼く事で『屯留』の動向を探る事にしたのであった……。

 

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