『山の王』楊端和率いる『山の民』三千人の中に政たちは変装する事で身を隠し、秦の王都咸陽へと侵入した。
呂丞相率いる二十万の軍勢に対抗するための戦力として『馬酒兵』の武勇伝を残している『山の民』が盟を求めてきたのを好機と竭丞相が判断したため、簡単に侵入する事が出来た。
そうして、王宮への最後の門である『朱亀』にて政がその門の前で待機していた兵たちの隊長を切り殺して開戦。
信はその直後、抑えていた怒りに憎悪、殺意を解放しながら鬼人の如き、活躍によって『朱亀』を突破し、そうして『山の民』を出迎えようとしていた竭丞相さえ討ち取った。
その後、『山の民』に政が紛れているのを見抜いた肆氏の呼びかけに敢えて応じて、政は姿を表し、注意を引き付ける事で信は壁の案内のままに貂にバジオウ含む『山の民』の精鋭たちと共に本殿へと繋がる『右龍』へと向かう。
「タジフ」
バジオウの指示に巨漢のタジフが大岩の槌で『右龍』の扉を壊し、そうして中へ……本来、『右龍』の回廊から本殿までの道は複雑な迷路になっているが壁たちは政を脱出させる際に本殿に通じる道を全て頭の中に入れていた。
彼の案内に従い、進んでいけば……。
「ちっ、これだけか……」
大勢の兵たちがいて、更にその奥には髪を短く剃っている大柄の男――肆氏の片腕にして竭氏の人斬り長である暗殺者にして武人である左慈がいた。彼の率いる兵は当然、彼が選び鍛錬したものでもある。
「まさか、此処に潜ませていたとは……皆、此処が正念場だぞ」
壁は何人か友人を暗殺されているために左慈を見て驚愕するも王宮内には左慈や肆氏以外の将たる将は無い。よって壁は声をかけ……。
「分かりました」
信は背中の鞘から剣を抜き……。
「俺の名は信……左慈、そしてその兵たちよ。今日がお前たちの命日だっ!!」
「全員、殺ス」
『づっ!?』
信は尋常ならざる殺意を放ちながら疾走し、バジオウも二刀を抜いて信へと続く。そうして、その圧に圧されながらも兵たちは向かって行き……主に信の暴風が如き剣捌きによって斬殺されていく。
そうして、堂々と左慈へと迫り……。
「舐めるなあっ!!」
左慈は剣を振るい、信の剣閃に対抗する。
「確かに強いな」
「ぐっ……が、ガキがああっ!!」
それぞれの剣舞を応酬、二合目にて左慈は対応出来なくなり……。
「だが、お前より俺の方が強い」
「がば……」
左慈の側を信が通ると共に剣閃が左慈の首を撫でるように切り裂き、左慈は血を吐きながら死体として倒れ伏すのであった。
「【おい、バジオウ……あの少年……まさかとは思うが……】」
「【ああ、信は強くなり続けている……この実戦の中でな】」
「【なんて戦士だ】」
山の民たちは信の武威と技がこの戦いの中で成長をし続けている事に気づき、驚愕するのであった。
そうして、左慈とその兵を全員屠った信たちは進んでいき……。
『ひ、ひいいいっ!?』
広大な室内にいた文官たちと玉座に肘を置いて横になっている政より小さな体であり、幼い王弟の成蟜がいた。
「死罪だ……死罪だ、貴様らのような下等な輩が高貴な王宮に踏み入った罪で死罪。貴様らゴミ虫が俺と同じ場所で息をしている罪で死罪」
「……死罪なのは貴方だ、王弟よ。塵屑の罪でな」
状況が分かっていないのか死を告げる成蟜へ、信は溜息を吐きながら告げる。
「っ、ランカイ!!」
「上から来るぞっ!!」
激怒しながら成蟜が何者かを呼んだとほぼ同時、信は叫んでその場から飛ぶと他の者も一斉にその場から離れた。
そして、怪物染みた巨漢にして成蟜が闇商人から珍種の猿の赤子として興味本位から買い、赤子から念入りに調教した事で彼の指示をなんでも実行するランカイが壁を伝うようにして上から落下し、着地する。
「な、何だ、あの化け物は!!」
「化け物であろうと、倒せば良いだけだ」
そうして、信はランカイへと疾走する。
「馬鹿が、自殺しにいきおったぞ。やはり下等な存在だな」
成蟜は嘲笑を響かせる。
「ガアアアアッ!!」
ランカイが怪力を秘めた腕を振るう。
「ふっ!!」
信はその腕を自分の体の芯をずらすようにして潜り抜けて、回避しながら疾走し……。
「しあっ!!」
「ギョオッ!!」
疾走の勢いを加えた鋭く壮絶な剣閃でランカイの足を切り裂いて床へと片膝をつけさせ……。
「【今だ】」
『【おおおおおおっ!!】』
「ギャアアッ!!」
隙を見せたところでバジオウたちが攻撃を炸裂させて追い詰め……。
「倒れていろ」
信がランカイの後ろから、疾走の勢いを加えた跳躍をしながら、ランカイの背中に右手に持った剣を逆手へ、左手で柄頭を持った状態で落下すると共に突き刺し、直後に捻って抜いた。
「オオオオッ!?」
ランカイは絶叫を上げながら、倒れ伏す。
「ランカイ、何をやっている!! そいつらを殺せ、さもないと
「ガ、ガアア「ランカイ、大丈夫だ。そんな事は俺がさせない……だから、そのまま、動くな。後で治療もしてやる」ォォ……」
成蟜からのお仕置きによる恐怖から死力を尽くして立ち上がろうとするも信が後ろからランカイの正面へ回って怯えたランカイの瞳を正面から見つつ、語り掛けるとランカイは大人しくなっていく。
「き、きさ「黙れよ屑……もう、喋るな」ひっ!?」
今だ現実を分かってない成蟜へ殺意を浴びせれば、恐怖に震えていく。
「安心しろ、殺しはしない。そんな価値はお前には無い……だが、痛みを教えてやる」
「や、止め……」
「もう、許される段階はとっくに過ぎた」
怯えて動けない成蟜へ剣を鞘に納めながら、ゆっくりと近づく信、その間にバジオウたちは容赦なく文官たちを殺戮しており、そうして成蟜の前まで辿り着き……。
「さあ、お仕置きだ」
血が出る程に握り締めた拳を信は後ろへ引き、そして……。