秦国の『東郡』であり、元は魏国の『山陽』の先にある『著雍』を秦は中華進出における重要拠点にしようと大要塞を築こうとしていた。
それを妨害し、奪われた地を取り返すべく魏は動く事で秦と戦いを繰り広げていた。
そうして、秦も魏もどちらも周囲より軍勢を集結し始めている。
なにより、魏においてはかつて春申君と李牧の『合従軍』結成に応じて秦国を滅ぼそうと動いたが、それを察していた李信の待ち伏せによって大打撃を受け、潰走させられ地位も失脚してしまった呉鳳明が李信への逆襲のためにこの『著雍』に来ているのだ。
しかも魏軍における
一方で秦側でも……。
「『玉鳳隊』の活躍は聞いている。頼りにさせてもらうからな」
「……はっ」
著雍に招集された兵数五千の独立遊軍の一つ、『玉鳳隊』を率いる王賁に李信は声をかけ、王賁は頭を下げた。
「バハハハ、中々に良い熱を抱えておるのぅ、この地は」
「麃公将軍、お久しぶりです。貴方も来てくれたんです」
「おう、久しぶりじゃのう李信。また、共に戦える事を嬉しく思うぞ」
秦における大将軍の一人、麃公もやって来ており……。
「ンフフフ、これはまた、良き戦が出来そうですねぇ。ねぇ、騰」
「ハ、武者振るいします」
「王騎将軍、貴方まで……」
王騎将軍が騰を引き連れてやって来た。
「ココココ、どうも、懐かしき敵将たちが現れたという噂を聞きましてねぇ」
「
「ンフフフ、流石の情報収集能力ですよぉ。李信……その通りです。なにせこの地に集まる前に
「っ!?」
「ほう、それはまた腕が鳴るのぅ」
王騎の言葉に王賁は驚き、麃公は好戦的な笑みを浮かべた。
「さてと……ふふ、それにしても優れた布陣ですよ李信。貴方もちゃんと幾多の戦いを通して成長していますね」
「当然です。そして、この布陣においては比較的に深い森に遮られている南西・北西の二点と川の先にある一点が遮蔽物のせいで僅かに伝達、援軍に遅れが出るところになっています。万が一、三点同時突破されるとこの布陣は破れます。そうならないよう、しっかりと連絡員を待機させています」
王騎が布陣図を見ながら、李信を賞賛すると李信は問題点を上げつつ、それに対応している事も言った。
連絡員は当然、『飛信隊』における秘密部隊の者たちである。
「素晴らしい、素晴らしいですよぉ李信。では、始めましょうか皆さん」
王騎の言葉に皆が声を上げたのであった……。
二
魏軍は李信の要塞のような陣形を突破するため、李信が言ったように比較的深い森に遮られている南西・北西の二点と川の先にある一点を同日同刻に撃破するという強攻策に出た。
そして、川の先の一点攻略を務めた魏軍は……。
「李信とはそれほどに脅威なのか、鳳明?」
「秦を滅ぼすにおいて一番の障害であると断言できます」
「それほどにか……」
頭に飾りをつけた美青年染みた容貌だが、呉鳳明よりははるかに年上であり、鳳明に軍略を教えた師でもある『
因みに『魏火龍』とは『魏火龍七師』の事であり、秦六将、趙三大天と並び中華の大乱を彩った魏の英雄たちの事である。
鳳明の父である呉慶もその一人であったが、彼を除く六人はなんと原因は不明だが、仲間割れをして霊凰と残り二人が勝利したのである。しかして先代の魏王は激怒し、三人を斬首しようとしたのを呉慶が説得し、十四年もの間、地下牢に繋いだのだ。
呉鳳明は魏王を説得して幽閉された三人を解放させ、この地に連れてきたのである。
そうして、進んでいると……。
「ふっ、これはまた、懐かしいものだ」
「【秦の怪鳥】まで来ていたのか……」
布陣していた秦軍の軍勢が『王』の旗を掲げていた事、なにより王騎が横陣を広げつつ、そこにいた事に霊凰が懐かしがり、鳳明は顔を歪めたのだった……。
三
王騎軍は飛信隊による情報によって、霊凰が川の先にある一点を攻略しようと向かっているのを知るとそこへと向かった。かつて、王騎は霊凰の軍略に何度となく手を焼かされてきたからでもある。
「ンフフフ、お懐かしい限りですねぇ霊凰さん……お変わりなさすぎて驚きですよ。是非とも若作りの秘訣を教えてもらいたいものです」
霊凰の姿に王騎はそんな事を呟き……。
「フオオオオッ!!」
王騎軍の横陣の側面より、巨漢で顔には仮面を付けながらも血走った眼をしている大矛を持った男が襲撃をしようとしていた。
「
そう、乱美迫を見ながら王騎は言うと共に……。
「勝負だ」
乱美迫へと『紅飛』により、紅の閃光と化す程の勢いと共に超速で驀進するは李信。乱美迫へと大矛を構えながら言い……。
「ヴァル」
乱美迫も迎え撃つとばかりに大矛を構え……。
「ふっ!!」
「ヴァ!?」
突如、李信が乗った紅飛は跳躍して一気に乱美迫との間合いを詰め……。
「ルアアッ!!」
李信は乱美迫に対し、大矛による大斬閃を振り下ろす事で馬ごと斬断したのであった。