キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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七十二話

 

 秦国と魏国との戦場となっている『著雍』において李信は全ての地が互いにかばい合い、中央からも即座に援軍を送れるよう軍を配置する要塞の如き布陣をした。

 

 これを突破するために魏軍は遮蔽物で伝達や援軍が送れる三点の地を同時に突破しようとしていた。だが、その三点を攻略する将に軍を集中している訳ではない。

 

 少しでも他のところからこの三点の地へ援軍が来ないように足止めなどをする軍も必要なのだ。

 

 

 

 それが故にこの三点に近い場所にも魏軍は将兵を送って援軍を送れないようにしつつ、突破すればすぐその援軍に送れるようにしていたのだが……。

 

「成程、全体的にはこうなっているか……」

 

 秘密部隊を通して魏軍と戦線が築かれている地の配置図などを掴みながら、李信は思索に耽り……。

 

「良し、いくか」

 

 王騎に麃公、王賁らに任せている三点の地はそのまま、それぞれに防衛を任せるとそれ以外の地に入る魏軍を片付けるため、李信は即座に移動を開始する。

 

 

 

 

「――隊は……」

 

 そうして、戦場となっている地の自軍の陣へと行くと采配と指揮を担当する。

 

「っ、動きが代わってっ!?」

 

 急に戦術や戦略が変わった秦軍の動きに対応できず、魏軍の一つが敗北する。

 

 

 

 

「――隊は……後は俺が行こう」

 

 もう一つの地でも采配と指揮を代わり、そうして翻弄しつつ魏軍を追い詰めていき……。

 

 

 

 

「じゃあな」

 

「ぶげっ!?」

 

 間隙を生じさせた李信はそれに付け込むように動くと弓にて魏の将を狙撃し、腹部を穿って討ち取る事でまた、一つの魏軍を敗北させる。

 

 そして、また移動を開始し……。

 

 

 

 

「はあああっ!!」

 

 采配と指揮を代わっては瞬く間に魏軍を追い詰め、ときには自ら介入し弓による狙撃、あるいは麾下の騎馬隊と共に巨大な一つの獣となって突撃し、大矛を振るっては矛の刃にて切り伏せ、あるいは矛の柄にて破砕させていき、あるいは紅飛が蹴倒すなどして魏軍を討ち取っていった。

 

 当然、この戦況は鳳明に霊凰にも伝わる。

 

 

 

 

 

「ぐ、は、早すぎる……こんな……」

 

「い、今すぐ本陣に戻るぞっ、凱孟と紫伯も呼び戻せっ!!」

 

 作戦全体が一気に崩された事で立て直すべく、鳳明と霊凰は総本陣へと向かい始めるも……。

 

 

 

 

 

『オオオオッ!!』

 

「っ!? こんなところに伏兵が……」

 

「あ、あぁ……ま、またか……また……私はっ……」

 

 『秦』の旗と『飛』の旗を掲げた軍勢が総本陣へと向かっていた鳳明と霊凰達へと迫り始める。

 

 

 

「鳳明様、霊凰様、お逃げをっ!!」

 

 鳳明と霊凰を逃すために彼等が連れていた兵たちは全員が殿となるために秦軍へと向かっていく。

 

 

 

「ふっ!!」

 

 しかし、そんな魏軍の意識の間隙を縫って李信は剛弓によって矢を放つ。

 

「ぎゃっ!!」

 

 凄まじい勢いで放たれた矢は霊凰の顔面は穿って破壊する。

 

「〜〜っ、うあああああっ!!」

 

 目の前で軍略を自分に教えた師の顔面が吹き飛び、飛び散った血と脳漿を浴びながら、鳳明は恐怖の叫びを上げると共に逃走する。

 

『うあああああっ!!』

 

 殿を務める兵も李信へと向かい、命を賭けて鳳明の追撃を防ぎにかかる。

 

 

 

 

「ふん」

 

 李信は弓から『莫耶刀』へと持ち替え、そのまま自由自在に剣を踊らせるように振るいつつ、魏軍を切り伏せていく。

 

「今頃、羌瘣は先に始めているだろう。俺達も行くぞ」

 

『はっ!!』

 

 李信は『莫耶刀』を鞘に納め、部下に持たせていた大矛を受け取ると羌瘣が襲撃を仕掛けたその援護をすべく魏軍の総本陣へと一つの巨大な獣が突撃し、瞬く間に陥落させた。

 

 

 

 

「ふっ、どうやら終わったようじゃのう」

 

「ココココ、本当に頼りになりますねぇ」

 

「……俺は必ず、お前を……」

 

 総本陣が陥落した事で凱孟軍が撤退していくのを見ながら、麃公は満足げに言う。

 

 王騎も愉快気に笑い、紫伯を討ち取った王賁も超えるべき目標に李信を定めた。

 

 

 

 そうして……。

 

 

 

 

「う、ああ……こ、こんな、こんな事が……これは夢だ、夢に決まっている……」

 

 またも李信によって完膚なきまでに敗れ去った鳳明は呆然自失な様子で項垂れる。

 

 彼はこの敗北により、しばらくの間、心身を癒すための療養生活をしなければならない程の心傷を負ってしまったのだった……。

 

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