『毐国』による『加冠の儀』を行うためにどうしても秦王ほか中枢のものらがいなくなる『咸陽』を乗っ取るための内乱はそれを利用しようとした呂不韋も含めて李信の動きにより終わった。
なにせ『咸陽』を守る重大な『函谷関』を通るために偽の玉令を用いる事もそして、兵力を増やすために『函谷関』までの道中で偽の玉璽を用いる事も読んでいたのだから。
著雍から自分たちの動きがばれないうえで内乱を止めるに十分な精鋭を変装なども含めて行いながら『函谷関』まで移動させたり、確実な戦力として山民族の王である楊端和への援軍要請、そして偽の玉璽で招集されるだろう者たちへ裏切りをさせるなど用意周到であり、臨機応変な策や用兵術なども含めてやはり、李信は凄まじい。
そうして、『加冠の儀』を行っている『雍』から秦王たちが帰還するのを待つ間……。
「李信将軍、この度は本当にありがとうございます」
「おかげさまで反乱者の汚名を被らずに済みました」
李信へもしかすれば、偽の玉令でまんまと内乱者たちであるのに『函谷関』を通してしまうところであった守将や偽の玉璽で内乱者の将兵として戦うところであった者たちは深々と李信へ頭を下げる。
「仮にも秦の王族が玉令や玉璽を複製していたんだから、こればかりは仕方ないさ。それに良く働いてくれて感謝している」
『勿体なきお言葉……』
李信の言葉に深々と頭を下げた。
「李信、これで無事に政は中華統一のために動けるのだな」
「ああ、そうだ。そして、ありがとう楊端和……無理を聞いてくれて」
「いや、前のお前たちの援護のお陰で山界統一においては余裕が出来た。それに指示も分かりやすかったからな……なにより、私の夫になる者の頼みなのだから当然だ」
『オオオオッ!!』
楊端和が近づき、李信と会話する。李信に対して楊端和は軽く頬へ口づけると歓迎するが如く、山民族たちは声を上げた。
「どうも……」
そうして、秦王たちが帰還をする。
「李信、本当にお前には救われてばかりだ。楊端和にも深く感謝を……」
『加冠の儀』を済ませて本当の秦国の王となった嬴政より、李信に楊端和は感謝を告げられた。
「李信、お前こそこの秦国における『矛』であり、『盾』だ……私が言うのもなんだがな」
成蟜も李信に対してそう言い……。
「李信将軍……貴殿の常に状況を読む予測力、用意周到な準備、臨機応変な対応には敬服するばかりだ」
内乱を知らせた昌平君もまた、李信へ言う。因みに内乱を知らせてから、呂不韋にばれないようにどちらも動いたが、李信の準備に密かに昌平君は協力したりもしていた。
「……李信将軍、お主の敵となってしまった事が儂の一番の不覚じゃのう」
今回で失脚する事、確実となった呂不韋は自分の企みが全て李信によって砕かれた事でそう言ったのだった。
ともかく、その後は『毐王』こと嫪毐は呂不韋の手引きで偽宦官として後宮に入った事から自分が内乱の全てを企み、太后は関係ないと必死に自供し車裂きの刑に処された。
太后は嫪毐との間に出来た双子を守るために政に懇願したが、聞き入れられなかった。
もっとも、密かに政は双子を保護しており、幽閉の形とした太后に必ず会わせると伝えたりもしたのだが……。
燓親子ら将兵は当然、打ち首であり、内乱に味方した四千余家の人間を蜀の地へと島流しにしたりもした。
そして、咸陽を守るために戦った将兵らは当然、功を得て爵を得た。
「楊端和に『大上造』の爵位を与える」
楊端和は大将軍の位である爵位を与えられ……。
「今回における内乱の全てを防いだ功により、李信将軍を大将軍に任命する」
『うおおおおおおおおおおおっ!!』
李信も目標としていた『大将軍』になったのである。
その後……。
「七年か、長かったな……だが、ようやく動き出せる」
「ああ、李信……十五年で六国全てを滅ぼし、中華を統一するぞ」
信と政は二人でこれからに向けての誓いを交わした。これより、政は本当に秦王として、信は大将軍として動く事になるのであった……。