八十二話
『加冠の儀』を終え、政敵である相国の呂不韋も退けた事で正式に秦王として『秦国』の全実権を手にした嬴政は総司令である昌平君が算出した十五年を目標に己が夢である『中華統一』を果たすために動き出した。
そして、その第一歩として秦と趙の国境地である『
「うぐぐ、おのれ中々やりおるな。王賁将軍、蒙恬将軍」
『曹州』の防衛を務めている趙軍の
「だが、ここからだ。この豪紀様の恐ろしさを見せてやるぞっ!!」
豪紀は己が力で戦況を巻き返そうとしたのだが……。
「きゅ、急報っ!! 別動隊と思われる秦軍が数里先からこの本陣へと迫っていますっ!!」
「なに、どこのって……もう来ておるではないかぁっ!!」
兵が伝えてきた報告を聞きながら、見渡せばこの本陣へと凄まじい速度で土煙を巻き上げながら『秦』の騎兵団が突撃してきていた。
まるで一つの巨大な獣を思わせる威容と動き、掲げる旗は『秦』と『飛』の二つである。それはつまり……。
「げえっ!! り、りりり……李信だとぉぉぉぉぉぉっ!!」
最近、大将軍の一人となった李信率いる『飛信隊』であり、だからこそ驚愕する。
「魏を牽制していたのでは無かったのか……」
李信は『曹州』付近に配備された魏軍と小競り合いをしている情報はあったが、こちらに介入する機会を窺っていたのだろう。
「ルアアアア」
そうして、李信は麾下の騎兵と一つの巨大な獣となりながら、その獣の頭として大矛を振るい豪紀軍を滅ぼしていったのだった。
因みにだが、ある程度の兵は魏軍を牽制するために置いてきており、二万程の兵で『曹州』侵攻の援軍として来たのである。
「さあ、曹州を取ろうか王賁、蒙恬」
『はっ!!』
そうして、李信は王賁に蒙恬と共に『曹州』の侵攻を開始し、そうして『曹州』侵攻を完了したのであった。
これに乗じて更に……。
「不落の巨城と呼ばれる
「お前たちが魏に隙を作ってくれたおかげもあるがな」
実は『曹州』を侵攻したのは『衍氏』を陥落させるための陽動でもあった。
「李信将軍のおかげでこうした事も出来るようになったな」
本来は魏の意識を釘付けにするための『曹州』攻めであった。だが、その策に対して李信は更に『曹州攻め』に戦力を費やす事で完全に『曹州』を取りつつ、魏の意識を『曹州』へと完全に向けさせながら、『衍氏城』を陥落させる楊端和に見向きをしないようにしたのだ。
そうして、作戦が成功した現状、『秦』は趙との国境である『曹州』と魏において不落の巨城である『衍氏城』を陥落させたのだった。
「さて、次だ」
更に李信はもう一つ、侵攻すべき場所へと向かうための地へと向かう。
「『毐国』の時のお返しに行ってやるよ」
その地とは楚国の地であり、魏と韓に秦を含めた四国間の国境地帯である『