『秦』は超大国である『楚』において突然、国王である考烈王が崩御した事で楚国内の状況が揺らいだ事、魏と韓が国力低下しているために内政に手を出さなければならない状況を狙って動き出す事にした。
楚において魏、韓、そして秦という四国の国境が隣接している重要な地である『什虎』を獲ろうと侵攻を始めたのだ。
『什虎』は楚においても重要な地であるため、守りを担当するのは楚に吸収された国々の大将軍と軍師、楚にとって国を滅ぼしても将たちには生存を許さざるを得ない程の英傑たちである。
無論、経緯が経緯なので『什虎』の将と軍師は楚に忠誠は誓っていないが、重要な要地を守らせる者としては最適な強者たちなので都合が良いと言えば都合が良い。
実際、『什虎』の城主である満羽と将軍である千斗雲にいたっては『
そんな英傑たちに対抗するため、秦は今の状況だからこそ動かせる最大戦力の者たち、王騎に蒙武、麃公に張唐、李信という大将軍の殆どを動員した。
勿論、こうした動員が出来るのは今の状況が故であり、今回の侵攻を失敗すれば絶対に二度と動員出来ない戦力である。
そして、『什虎』を目指して進軍している秦にとっては喜ばしい事に今まで楚を取り纏めてきた手腕から中華においても大偉人として知られていた春申君が暗殺された。
つまりは楚が更に揺らぐという事であり、什虎に援軍を送るのも遅れるという事である。
絶対に逃せないこの状況……余計に秦軍は気合が入った。
「李信、本陣と総指揮は任せます。前の楚軍との戦いのように上手くやってくださいね」
「はいっ」
今回の侵攻において総大将はその大将軍であった汗明を倒した蒙武であり、副将は王騎だったが、その王騎から本陣と総指揮を李信は任された。
進軍していると什虎の者たちも進軍したと斥候から連絡があったので両軍が対峙する事になる
無論、局所的なものや全体的な戦術なども含めて次々に頭内で繰り広げる幻の戦にて考え出しながら、繰り出していった。
「信、全軍野営は完成したよ」
「皆、お前を待っている」
貂と羌瘣が李信を呼びに来た。
「分かった、直ぐに行く」
李信は呼びに来た二人とともに戻りながら……。
「(『什虎』の者たちよ。お前たちの不敗伝説はここまでだ。勝つのは俺達、秦軍なんだからな)」
心の中でそう告げたのであった……。