秦国は王騎に蒙武、麃公、張唐、李信という国が誇る大将軍たちを動かし、『楚』における重要な地である『什虎』を攻めさせ、見事に陥落させた。
そして、什虎の地を守っていた満羽は蒙武が討ち取り、千斗雲、玄右は李信が討ち取ったが、寿胡王は本陣を強襲した羌瘣が捕らえている。
『什虎』の地を治める上で内情を知る者は必要であるし、楚を攻略する上でも生かしておく必要がある存在だったので李信が生け捕りにするように厳命したからである。
「寿胡王、満羽も千斗雲も玄右も誰も彼も死ぬ事を喜んでいたのは何故だ」
「簡単な事だ……守る国も守る者も何もかもを失っているからだ。無論、私もだ」
寿胡王は李信の質問に対し、満羽たちの事を語り出した。
かつて満羽は『
だが、国自体が度重なる戦に疲弊し、やがては耐え切れなくなり、大将軍の意に反して楚に投降。
絶望しながらも彷徨いながら、楚と戦い続けたが自分たちが守っていた国の人々まで敵となった事で更に絶望し、心が壊れた。
玄右も寿胡王も同じような経緯で根無し草となり、彷徨っていた事で春申君に什虎城を与えて根城とさせたのだ。
放っておいても何をしでかすか分からないし、重要拠点を守らせるなら適した強さだったからこその良い手であると言える。
「ンフフ、それが不落の什虎の正体ですか」
「下らん負け犬の感傷だな」
「似たような話は幾つもありますからなぁ」
話を聞いていた王騎は得心がいったように言い、麃公は言葉通りに下らんという態度で吐き捨て、張唐は思うところがある表情は浮かべながらも麃公に同意した。
「ふん、ただ、死に場所を求めながら戦うとはな」
「……ともかく、この戦は俺達の勝ちだ」
蒙武も李信も何らかの思いはありながらも言葉ではそっけなく、言うのだった。
ともかく、こうして楚だけでなく魏に韓へ侵攻する地としても重要になる什虎を秦は自国の地へと変えたのだ。
「ち、やってくれるじゃねえかよっ、秦めッ!!」
国王である考烈王に重要な偉人である春申君暗殺と国が揺れる事態が立て続けに起き、そうした混乱を抑える事とこれからの他の国々との争いを乗り越えるべく、実権を握った李園は媧燐と共に丞相へと就任する。
しかし、その最中の隙を秦に衝かれてしまい、什虎を獲られた。媧燐はこれに当然、激怒した。
「ヌハハハ、まさか『什虎』を獲ってしまうとはのう。しかも総指揮は李信が……ふふ、やるもんじゃのう」
楚に亡命している廉頗は楽しんでいたが……。
だが、始皇十年になろうとしていた時……二つの災いが起こる。
「張唐将軍と蒙驁将軍が……」
什虎の地の防衛に務めている李信に張唐将軍に蒙驁将軍と秦国の老将軍の二人が体調を崩し、弱り続けているとの報告が入ったのであった……。