大国である『楚』より、自国だけでなく魏と韓とも国境を隣接している重要な要地である『什虎』を得た事で大きく、中華統一へと乗り出している『秦』。
だが、国にとって影響を及ぼし始めている事があった。
「張唐将軍……お加減は?」
「ふふ、恥ずかしい話だがもう体も動かなくなってきている……気持ちではまだまだ現役と言いたいのだがな。結局、人は年には勝てんという事だ」
李信は病気となり、床に伏せっている張唐将軍の屋敷を訪れ、声をかけた。
「そんな……弱気になっては駄目ですよ。せめて健康にはならないと」
「いや……もう良いのだ李信殿……大王様の『加冠の儀』、それに新たな『秦の刃』であり『秦の盾』となる李信殿と幾度か共に戦えた。こんなにも誇らしい事はない」
「そう言っていただけて光栄です」
張唐は満足気に李信へ語り、李信は頷く。
「こちらこそ嬉しい……李信殿、今後はこの『秦』をよろしく頼む」
「はい、しっかりと……」
こうして、張唐から色々と託された李信は包拳礼をしながら、頭を下げると張唐の元から去る。
その数日後、秦の大将軍の一人であった張唐将軍は亡くなってしまったのだった……。
そして、更に……。
「李信、お前も来てくれたのか……」
「李信将軍……ありがとうございます」
「当たり前だろう、蒙驁将軍にはお世話になったんだからな」
李信はある人物の屋敷に向かう途中で同じ人物の屋敷に向かっていた蒙恬と蒙毅の二人と出会う。
そう、ある人物とは張唐と同じく、大将軍の一人である蒙驁なのだ。
今は危篤状態とも聞いていた。
「フォフォフォ……これは嬉しいのぅ、恬に毅、信まで……」
床に伏せり、弱弱しくも蒙驁は三人が自分の傍にいる事を喜んでいた。
「
「蒙武将軍は什虎での状況がまだ落ち着いていないので……その代理も俺が兼ねています。勝手ではありますが」
「そうか……いや、十分じゃ」
そうして、蒙驁は起き上がると自分の昔話を始めた。
「恬よ、毅よ……お前たちの活躍を儂はいつまでも見守っているぞ……そして、李信、お主の事も見守らせてもらおう……お主には本当に世話になった。あの廉頗に対して勝ち逃げをさせてくれるのじゃから」
「いえ、私の方こそ蒙驁将軍が口を利いてくれたからこそ、将軍となれましたし、大将軍になる事も出来ました」
「それは元々、お主がそれだけの才気を持っておったからで儂は切っ掛けをほんの少し与えただけに過ぎんよ。李信、良ければこれからも『|蒙家《わしら』と交流をしてほしい」
「喜んで。こちらこそよろしくお願いします」
こうして、李信と蒙家は親密な関係となる事を誓い合ったりし……。
「ああ、長くも良い旅じゃったのぉ……」
蒙驁は満足気に呟くと息絶えた。
そうして、部下に蒙恬に蒙毅、李信も涙を流して蒙驁の死を悼み……。
「二人だけが知っている蒙驁将軍の事を教えて欲しい」
「勿論だ」
「是非とも聞いてください」
李信は蒙恬に蒙毅と蒙驁についての話を聞きながら、酒を飲み交わすのであった……。