キングダム――大将軍を目指す男   作:自堕落無力

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九十一話

 

 趙の大将軍慶舎と副将である紀彗率いる趙軍と『黒羊丘』で戦っている桓騎と李信率いる秦軍は開戦して二日目を迎えた。

 

 そうして右の前線を担当している『飛信隊』は川の対岸に布陣する紀彗軍に対し、軽量化した床弩にて陣ごと攻撃しながら、あらかじめ用意していた船などを使って渡河をすると紀彗軍の前線を大きく追いやったのだ。

 

 他の戦況として左の前線を担当している桓騎軍の雷土とゼノウは昨日、激しくやり合った岳嬰は中央丘の真横にて密林を挟んでの睨み合いとなった。

 

 そして、中央丘では秦軍と趙軍が丘の斜面に沿った陣取り合戦を始めていた。

 

「ふふふ、流石は大将軍の軍です。援軍としてこれ以上、頼りになる存在はいませんねぇ」

 

「ぐうう、怯むな者共ぉぉぉっ!! 我らが趙軍の底力と意地を見せるのだぁぁぁぁっ!!」

 

 中央丘の左半円では桓騎軍の参謀で五千将の摩論が自分の兵と李信が送った飛信隊の援軍と共に趙軍の将軍にして慶舎の副官である金毛と戦っているが、自らの采配と飛信隊の壮絶なる戦闘力にて戦況を優位に進めつつ、趙軍の前線を崩しつつあった。

 

 

「ふっ、さあやっちまおうかっ!!」

 

 そして、中央丘の右半円では長い黒髪に艶やかな色気を有する女性で弓の腕は中々であり、指揮能力も勘も優れている桓騎軍の副官で五千将である黒桜が飛信隊の援軍の力により、趙軍の前線を崩壊させにかかっていた。

 

 そうして、右半円は早々と秦軍が取ると思われたが……。

 

 

 

「離眼の兵よ、戦えっ!!」

 

『うおおおおおおおっ!!』

 

 紀彗が登場し、呼びかけた事で兵たちの指揮が爆発し、そうして紀彗もこの戦いに加わり、崩れていた戦線を立て直しにかかる。

 

 

 

「ちい、仕方ねぇ。退くよ」

 

 拙いと感じた黒桜は一旦、全軍を退却させるのであった。

 

「へぇ……見事だな」

 

 中央丘の様子を見ていた李信は紀彗の存在に目を付けつつ、賞賛の言葉を送るのであった……。

 

 

 

 

 

 『黒羊丘』の戦い三日目——中央丘では激変が起きようとしていた。

 

 左半円では金毛が堅陣を敷いて耐えようとするので摩論はひとまず、待機する事にした。

 

 右半円では黒桜が紀彗に対して睨み合いをしていたが……。

 

『っ!?』

 

 右の戦線で戦っていた飛信隊が李信の指示もあって、紀彗軍を少しの軍で牽制しつつ、多くは中央丘の右側へ、つまりは紀彗軍本体の足元に移動した。

 

 これにより、紀彗は軍の力と注意を割かざるを得なくなった。

 

 

 故に付け入る隙が生じてしまう。

 

 そして、桓騎と李信の動き次第で中央丘の戦況が激変する状態となった。それは左半円にも伝わっているし、よって秦軍の指揮官、趙軍の指揮官は皆、桓騎と李信の動きに注目する事となる。

 

 

 

「いよいよか、さあ、お前達の匂いをかがせろ。李信、桓騎」

 

 頂上では慶舎が李信と桓騎を葬るべく、待ち構えていた。

 

 慶舎は『沈黙の狩人』であり、待ちの達人。

 

 敵を張り巡らせた罠で絡め取り、屠る。戦う相手を手の平の上で転がす策略家なのだ。

 

 そして、慶舎が李信と桓騎を倒すべく待ち構えている中……。

 

 

 

 秦軍の動きは……。

 

「李信将軍より伝令、全軍、合図があるまでそのまま待機との事!! これを破りし者は厳罰に処するとも言っている。これは桓騎将軍も承知である」

 

『なっ!?』

 

 中央丘にいる秦軍は皆、李信からの待機命令に驚愕した。

 

 その命令を出した李信は……。

 

 

 

「本来なら大激戦をやろうって状況で両軍が大勢でなんもせずにいるって……笑えますね桓騎将軍」

 

「ああ、中々ウケるな」

 

 桓騎と中央丘を見上げながら、軽く笑い合っていた。

 

 

 

「いや、何やってんだよ信!! こんな事したら慶舎が罠を……」

 

「罠を張りたきゃ張れば良い……良い事を教えてやろうか貂?」

 

「な、何?」

 

 河了貂からの声に李信は応じつつ、問いかけるように言うと……。

 

 

 

「相手を確実に罠で嵌め殺そうなんてやり方は大概、上手くいかないもんだ。それに俺が何人、慶舎のような奴を掌の上で転がして破滅させてきたと思っている」

 

「……ふふ、確かにそうだったね」

 

「ああ、そういう事だ」

 

「くく、慶舎って奴も運が悪い。俺達を相手にするんだからな」

 

 李信達はそんな事を言い合う。こうして、秦軍は中央丘にて待機し続け、これに趙軍も様子を伺うためか、待機し続けるという状況となり、三日目が過ぎるのであった……。

 

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