秦の王都である咸陽を四十万で出陣した秦軍は『金安』にて趙西部を攻略するためであり、本来の目的である鄴攻略のための本軍のための陽動を兼ねる北東部軍(少し飛信隊の軍もいる)十三万五千と鄴攻略のための本軍二十六万五千の本軍に分かれて別行動を始めた。
李信率いる本軍はまず趙王都圏の国門である『列尾』に向かって進軍していた。
そして……。
『ウオオオッ!!』
当たり前だが大軍勢である秦軍の足止めをしようと中・大都市の軍が襲撃を仕掛けようとしたが……。
「チッ、俺の方かよ」
「ふん」
大軍勢にして連合軍でもあるその強みを生かし、桓騎や王賁が自分の軍を率いるなどして足止めの軍と交戦して蹴散らしていく。
その間に当然、本軍は進軍を続けていく……度々、足止めを図りに趙軍は出て来るも別動隊が動いて本軍は進軍を続けるので秦軍の足止めをする事は出来なかった。
そうして、金安より本軍が進路を変えて十日目に『列尾』へ到着した。
「(ああ、やっぱり
列尾を見て、李信はこの日までに諜報部隊に情報を探らせていた通り、『列尾』に仕掛けがされている匂いを感じ取った。
李信は当に李牧が『列尾』に施した仕掛けとその狙いに気づいているし、そのための対策も当然している。
それはそれとして……。
「楊端和を呼べ」
「はっ!!」
列尾の城を眺めながら、楊端和を呼ぶように部下に指示する。
「来たぞ、李信将軍」
「楊端和……俺達以外の秦軍の皆に山界の者達の力を見せるときだ。城攻めをしてくれ。俺の軍も新兵が多いから助攻として参加させてもらう」
「しかと承った」
李信は楊端和に自分達以外に楊端和の実力を見せるためとして、楊端和軍五万に城攻めの主攻を担当させる事と今、いる自分の軍六万五千には新兵も多くいるので一度、戦闘を経験させるために助攻を務めさせる事にしたのである。
「奴らの血で列尾の大地を朱く染めてやれぇぇっ!!」
列尾の城を守る趙軍は士気と戦意を込めた咆哮を上げる。
「(李牧、お前……伝えてないのか……)」
列尾を守ろうとする趙軍の様子に戦意や雰囲気に李牧は自分の仕掛けを言っていないと李信は把握する。
「(成程、お前はそういう奴か……)」
その事からも李信は李牧の根本的な物を把握するのであった。
そうして……。
「者共、血祭だぁぁぁぁぁっ!!」
天地すら震わせるほどの戦意が込められた咆哮を上げ、趙軍の士気を捩じ伏せながら楊端和軍は城攻めを開始する。
まず、素早く卓越した馬術を有する
ともすれば城門が閉まる前に入れそうな勢いと速さではあったが、刹那の差で城門は閉まってしまい、飛馬族は城門へと激突する。
そして、武器で叩いたり手で開けようとするも当然、無駄であり矢の雨によって死んでしまう。
そうして、楊端和軍は本格的な城攻めを始め……。
「分かるか……普通、国門になる城があんな欠点を持つはずが無い」
「そうだな……とはいえ、落として良いのだろう?」
「勿論」
城の周りを李信と楊端和は回りつつ、話し合っていた。
李信の言葉を聞くと楊端和はバジオウと弓に優れる『
「いくぞ、蒼仁、蒼淡……」
『は、はいっ!!』
バジオウを城門へ登らせるための援護のため、李信は盾を構える兵たちを大勢、連れながら剛弓と複数の矢筒を用意して新兵だが弓の腕は凄まじい蒼仁と蒼淡の兄弟を呼ぶ。そうして城門へと近づくのだが……。
『う、ち、近い……』
目の良さのせいで城門で城を守る趙軍の顔が見える蒼兄弟は弓を射れば一方的に射殺す事に忌避感が出てしまう。
「別に当てなくても良い。だが、牽制くらいはしろ……じゃないと味方が死ぬ事になる」
李信は蒼兄弟に言いながら、複数の矢を弓に一度に番え、弦を引き絞り、そして城壁の上にいる趙軍に向けて複数の矢を一度に放つと複数、射抜いていく。
「……いえ、やりますっ!! 淡、将軍が言ったように当てなくても牽制だけで良い、とにかく射るんだ!!」
「わ、分かった」
こうして李信に蒼仁は次々に城壁にいる趙軍を射殺していき、蒼淡は命中させる事は出来なかったがそれでも牽制はした。
「お前達、良くやった」
バジオウが城壁の上へと到達し、趙軍を蹂躙したのを見ると李信は曹兄弟に賞賛の言葉を送りながら楊端和軍が城門を開いた時に乗り込むために待機させているところへと向かう。
「紅飛、いよいよ戦だ」
李信は紅飛に呼びかけながら、矛を持ちつつ、上に乗る。
「新兵の皆、今こそ鍛錬の成果を示す時だ……気負う必要は無い。お前たちの前にはこの俺、李信がいる……そして、俺がお前達を勝利へと導く。だから、俺の背についてこい!!」
城門が開かれようとするのを見ながら、李信は飛信隊に入った新兵たちへと呼びかけた。
『うおおおおおおおおおおおっ!!』
李信の声に飛信隊の全員が咆哮を上げた。そうして、バジオウ達、楊端和軍によって城門は開かれ……。
「全軍、突撃っ!!」
「おおおおおっ!!」
そうして李信とその麾下千人の騎馬隊が一つの巨大な獣となって駆けながら、迅速に城門へと入り、そしてそれに率いられるように飛信隊の騎馬隊と歩兵が次々に入っていく。
「ルアアッ!!」
「ば、化けも……ぎゃあああっ!!」
そうして李信は超絶的な武威を込めた矛を超絶的な技量によって振るい、一振りにて十人近く切り伏せる勢いで次々と鮮血を撒き散らし、肉片へと変えていく。
その武威に続く事で新兵たちも訓練以上の働きを見せ、敵を屠っていき、そうして『列尾』は陥落した。
「楊端和……この後で軍議をするが、その後に百眼族と交えて話をしたい……任せなければならない事があるからな」
「分かった、ハダマ達に言っておく」
李信の言葉に楊端和は応じた。
「とりあえずは桓騎将軍と王賁将軍も来たら、王翦将軍、楊端和、蒙恬将軍を交えて軍議だ」
次々と列尾に入る秦軍を眺めながら李信はそう告げるのであった……。