祠を壊した理由   作:白夏緑自

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乗り遅れた あのビッグウェーブに


■■島豪雨・地震から5-9日後まで

■■島豪雨・地震から5日後 

東■■警察署内 第2取調室 

 

 私があの祠を壊した理由、ですか? ええ、ええ。お話しましょう。隠す必要もございませんし、罪はしっかり償うつもりでいますから。

 あ、そうだ。刑事さん、私はいったいどんな罪に問われるのでしょう? 器物損壊? 文化保法違反? それとも殺人でしょうか? 

 ──殺人として立証することは難しい? はぁ、そうですか。私としては一向にかまわないですよ、そのつもりで壊しましたから。だから、刑事さんもそんなに苦い顔をしないで。

 ごめんなさい、話が逸れましたね。私が祠を壊した理由ですね。取り戻したかったのです。奪われた恋人を。その最後の亡骸でもいい。骨の一本でもいいから、再び会いたかったのですよ。

 

 そろそろ吐き出されてもいい頃かと思うのですが……。あの祠の近くにはまだ帰ってきていませんか?

 

 

■■島豪雨・地震から5日後 

東■■警察署内 刑事課執務室

捜査2課 天見 橘花の発言

 

 本当なのかな? この豪雨と地震を引き起こしたのは自分だって。意味わからなすぎ。とりあえず祠の破壊──器物破損を理由に留置してるけど。本人が認めてるんだったら、たったと送検しちゃえばいいのに、できるだけ長く拘留しろって……。今までで一番意味わからない指示だよ。

 

 

■■島豪雨・地震から9日後 

東■■警察署内 第2取調室 

 

 ああ、刑事さん。今日もよろしくお願いします。それで、今日は何からお話しましょう?

 ──見つかった? 本当ですか、それはなんと……。はい、はい、もちろんですとも。彼女たちと再び会えるのなら、なんだって協力します。まずは本人確認? 私の──ですか? いえ、ごめんなさい。随分、ゆっくりなんだなと思いまして。とはいえ、初めてお会いしたときにお伝えした通りですよ?

 ■■ 夕空。夕日の夕に空と書いてゆあ、です。私にしては可愛すぎる名前ですが、今の両親に名付けてもらった大事な名前ですから。それなりに気に入っています。

齢は18歳。住所は■■県■市■■町2-1-5。家族は父と母、妹との4人暮らし。

 どうです、相違はないはずです。両親はとても良い人たちなので、私の戸籍を偽ったり、もしくは間違って役所に届けたりなどはしていないでしょう。

 家族との関係? そんなの家族、としか言いようがない気もしますが……。あ、家族仲ですか? 良好ですよ、妹もよく懐いてくれていますし。月に1度はみんなで出掛けております。

 私は自らの行いに後悔はしていませんが、家族に余計な心労をかけてしまっていると考えると、少し申し訳なくも感じます。

 

 

■■島豪雨・地震から9日後 

東■■警察署内 刑事課執務室

捜査2課 天見 橘花の発言

 

 なーんか、引っかかる言い方が多いんだよね、あの子。発言に矛盾はないよ。ご両親も彼女が拘留されていると知って取り乱したようだし、家族関係に偽りも無さそう。特に妹さんが学校にも通えないほどに落ち込んでいるみたいで。

 ただ、少し大げさな気もする。たしかに、家族が警察に捕まったなんて一大事だけど、まだ彼女は拘留の段階。それに、ただの器物破損よ? そもそもこれ、被害届は誰か出してるんだっけ? 執行猶予すらつかないのでは?

 次はいよいよ恋人たちと会わせる──まあ、会わせるでいいでしょう──会わせることになっていますけど、状況がイミフ過ぎて最早不気味だよ。

 

 

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