祠を壊した理由   作:白夏緑自

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■■島豪雨・地震から89日後④

■■島豪雨・地震から89日後④

 

『天見の持ち物が見つかった』

 望外の言葉に思わず大きい声が出て、通行人から怪訝な目を向けられてしまう。

「えっ、ほん、本当ですか⁉ どこで⁉」

『落ち着けって。まだ持ち物だけだ。居場所がわかったわけじゃない』

「でも、手掛かりにはなるでしょ?」

 見つかったのはどこなのか。今度ばかりは管轄地域なんて無視しよう。このままタクシーを捕まえて、そのまま現場へ向かったって良い。

 俺の焦りを察したのか、先輩がため息交じりに教えてくれる。

『安心しろよ。ちゃんとうちの所轄だ』

 

 ちょっと待ってろ、と電話が紙を擦る音を拾う。数秒の沈黙が俺と先輩の間に横たわり、スマホを握る手に汗が滲む。オッサン相手に沈黙を楽しめる趣味はない。早く教えてくれと心のうちで吐きつける。

 

『──ああ、ああ、そういやこんな名前だったな』

「は……? 名前? そんなのどうだっていいでしょ」

 天見さんの名前……橘花のことを言っているのか? わかっていることなんだ、こっちは場所を知りたいんだ。

『すまんすまん。夕空の名前……ていうか名字な。古淵だったわ。そう言えば。あー、スッキリした』

 

「スッキリしたじゃないですよ! いいから、天見さんがどこにいたのかをですね!」

 状況にそぐわない気の抜けたテンションに、相手が真坂先輩だってことも忘れてしまう。反対側の歩道を歩く小学生の笑い声が現実の外側から聞こえてくるようだ。

『落ち着けって。デカい声だしたって天見は出てこねえんだから』

「それにしたって、夕空の名字が今となんの関係が……」

『関係あんだよ、バカ。話は最後まで聞け』

 声量こそいつもの大きさだが、強い重圧に高ぶっていた感情が蹴落とされる。歩みこそ止めないが、歩幅は縮む。

 

『天見の持ち物が見つかったのは小淵家だ』

「……は?」

『は? じゃねえよ。天見は小淵家にいた……ていうのは言い過ぎかもしれないが──』

「──小淵家と関係があったのは間違いないですね」

 いや、小淵の家族全体と結びつけるのは早計だな……。きっと、何か知っているのは夕空だ。一度しか見たことはないが、夕空が重要な位置にいると刑事の勘みたいなやつが囁く。あの美しい少女は家族に知られぬまま、どんなことだってやってしまうだろう。そんな気迫が記憶の中の少女からは感じられた。

 

「小淵家の場所は?」

 俺が問うと、少しだけ先輩が鼻から息を抜いた。たぶん、笑われたのだ。青臭いとでも思われたのだろう。

『こっちはウチのシマだ。住所は──』

 運よく、聞き終えるよりも早くタクシーを捕まえることが出来た。電話からの声をそのまま運転手に伝える。

 

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