■■島豪雨・地震から18日後
東■■警察署内 第1取調室
おはようございます、橘花さん。今日もよろしくお願いします。
今日は……どうしてあの島に行方不明だった彼女たちの遺体があると知っていたのか、ですね。もちろん、お話します。ですが、その前に島についてお話してもよろしいでしょうか? ──ありがとうございます。
あそこは気の狂った島です。人ではなく島──土地と言っても良いかもしれません。そう言えば、最近では因習村、なんて言葉をインターネットでよく見かけますね。そのようにイメージしていただいても差し支えございません。
あそこは人と文化が共存するのではなく、文化に命じられるまま住民たちが暮らしています。──そうですね、今は暮らしていた、と過去形にするのが正しい表現でした。
住民たちは文化に与えられた空気を吸い。文化に与えられた自然を採り。文化に与えられた仕事をこなす。
時代と共に変化はしていますが、あくまで文化を守るため。例えば、周囲から文化を守るためには金銭が必要と学んだ文化は住民たちへ魚を本土へ売ることを教えました。例えば、島を閉鎖的に保つためにはあえて国家の方針に従い、外界と交流を行う自治体の設置を行わせました。文化はそうして、外界との摩擦を低減し、閉鎖的空間を維持し続けた。
──学校? 私立の中学校があそこにはあったはずです。住民の子どもは皆、あそこへ通うはずですよ? そうすれば、外と交流して身に着けた余計な知恵と意識を浄化するなんて面倒を文化は防げますからね。
■■島豪雨・地震から18日後
東■■警察署内 刑事課執務室
捜査2課 天見 橘花の発言
……。少し調べればわかること? そうかなー……? 夕空さんに教えられて、私もあの島についてネットで検索してみたけど、ほとんど何も出てこなかった。この時代にだよ? その時点でおかしいんですけど、却って信ぴょう性は増したね。あの島は意識的に外界を遮断していた。
でも、一つおかしいことがあるとすれば。ほとんど何も知らないはずの上が、どーして夕空さんの拘留をギリギリまで先延ばしにさせるのか。理由が不透明過ぎる。
■■島豪雨・地震から20日後
東■■警察署内 第4取調室
こんにちは、橘花さん。大丈夫ですか? 少し、顔色がよくないように見えますが。橘花さんとお話しできないのは残念ですが、今日はもう終わりにして……。え、大丈夫? そんな、明日でも明後日もあるのですから。
──時間がない? 拘留は23日間までが原則? そうですか……、そうなると橘花さんとこうしてお話が出来るのもあと3日ほどしかないのですね。
もしかして、この取り調べも毎回1時間しか行われないことも決まりかなにかで? ──違う? そういう命令が……。たしかに、不思議ですね。どのような意図で私と橘花さんの時間を制限しているのでしょうか。失礼、もう1人いらっしゃいました。決して、無視しているわけではありませんよ。橘花さんにばかり、集中してしまっていたのでしょう。
余計な話が過ぎました。
さて、私がどうしてあそこで彼女たちが見つかると知っていたか、でしたね。
よくある作り話が現実にもある、そういうことです。
彼女たちは生贄でした。
■■島豪雨・地震から20日後
東■■警察署内 刑事課執務室
捜査2課 天見 橘花の発言
見つかった遺体には全て手足を縛られていた形跡があった。きっと、あの祠の近くに埋められていたんだ。それが、先日の雨と地震の影響で地上へ露出した。
だけど、外傷や死因を除いて、彼女たちの共通点は見つけられていない。
チヨさんや文子さんの2人はともかく、それぞれ捜索願が出ていた舞さんや澪さんは調べがついた。ごく一般的な人物だったよ。出身地や住所もバラバラ。夕空さんの恋人たちにあの島の出身者は一人もいなかった。親族関係にも島出身者はいなさそう。
あるとすれば、一人を除いて全員夕空さんの恋人だったこと。そして、生贄だったこと。
馬鹿な話だとは思いますが、特定の集落が一定周期のうちに女性を埋める動悸なんてそれぐらいしか考えられませんて。
一番古い遺体は……推定180年前の人間なんでしたっけ? この人だけ異質だよね。夕空さんもあまり話したがらない感じだし。
服装や装飾も豪華なんでしたっけ? 他の遺体が普段着のままに比べて、この人だけ──そう結婚式みたいなハレの日のお祝いみたいな。
ていうか、そっちの方が普通じゃない? 生贄よね? あまり詳しくないけど、神様に女性を捧げるっていうのに普通の恰好のままだったら失礼にならない?