祠を壊した理由   作:白夏緑自

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■■島豪雨・地震から89日後②

■■島豪雨・地震から89日後②

 

 そんなわけで、俺は今、一人で天見さんの家に向かっている。

 東■■署から10駅ほど離れているが、電車一本だ。異動が多いというのに寮には入っていないのは、確か引越しが好きだからだと言っていたことを思い出す。

 

 初めて降りる彼女の最寄り駅は静かだが、近くに商店街もある生活感に満ちた街だった。

 スマホに表示した地図アプリをもとに天見さんの影を思いながら道を辿る。

 マンションやアパートが立ち並び、街灯も多くて女性一人でも危険の少ない地域だとわかり、安心感を得る。こんなところで事件に巻き込まれるわけがない。

 

 ……こんなところじゃなければ? 休んでいたとあれば、どこかへ出かけていたとしてもおかしくはない。出先で巻き込まれていたとすれば……。

 まさか、たとえそうだとしても天見さんなら切り抜けられるはずだ。俺と違って、冷静で頭の良い人だから。正義感に駆られ過ぎて、危ない現場に単身乗り込むような無茶もしないはず。だから、この無断欠勤もきっと、本当に体調が悪いだけ。真面目で、頭の良い人は体調が悪いだけで一言も断りを入れずに休むだろうか。矛盾している。この矛盾を解消するには──突発的な事故や発症で病院に運ばれて今も病院で寝たきりの状態……。

 だったら、今までの休みがちの日々はどう説明する? ただの偶然が重なったと片づけるのか……。

 

 真実一つで片がつくことを考えずにはいられない。とにかく無事でいてくれたら、それでいい。

 地図アプリが目的地に到着したことを告げる。ここまで、最寄り駅から10分ほどの道のりだった。

 

 クレオール飯田。天見さんが住んでいるマンション。ここの地名は飯田でもなんでもないから、きっとオーナーの名前からとっているのだろう。

 10階建てのマンションの7階に彼女の部屋がある。

 一周まわって、ベランダを確認するが洗濯物を干している部屋とそうではない部屋が半々。女性ものの衣服だけを吊るした部屋はなく、男性のみか、男性と女性もののTシャツが混ざっている。女性の一人暮らしでもあえて男性ものを吊るしておくことが防犯に繋がる。たとえ、洗濯物が出ている部屋が天見さんのところでも、防犯のためのフェイクだったら良いな、とこんなときでも願ってしまう。

 

 エントランスに入り、ポストを見る。溜まっている。ここ1、2週間分の量だろうか。鍵はしっかりかかっているようで、ダイヤルを1つ2つ動かしても開きそうにはなかった。

 望み薄だが、インターホンから呼び出しを試みる。長いコール音の末、ブツリと切断される。2度目も同じ長さだった。強制的に切られているわけではない。本当に留守か、もしくは居留守か。

 

 オートロックを開ける手段が今の俺には無い。運よく、他の住民に紛れてエレベーターに乗り込めても、自宅のドアまでは開けられない。管理会社に連絡するのも手だが……。

 

 俺が本気なら、天見先輩を追いかける手立てはいくらでもある。ただ、常識とルールを飛び越える馬鹿になれるのか。マンションの前でどちらを選択するかを悩んでいると、ポケットのスマートフォンが鳴った。

 

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