Fate/red judgement   作:アルフォート派

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涙を虹に
いつか世界を


魔術(まじゅつ)

それは総括(そうかつ)して、奇跡(きせき)人為(じんい)的に再現すること。

燃えるものもなく、虚空に炎を出す、など、

存在しな(ありえな)い」を「存在す(ありえ)る」にすることが魔術である。

 

・・・少年は、それを操る魔術師(まじゅつし)だった。

それも、ただの魔術師ではない。

ほら、今も華麗にトランプを切り、その真髄(しんずい)披露(ひろう)している。

 

「んじゃまあ、とりあえず好きなトランプを一枚、選んでくれ」

 

「じゃあ・・・これ!」

 

俺は、近所の小学生相手にマジックを披露していた。

 

「・・・何してるの?」

 

背中から聞き慣れた声が聞こえる。

 

「何って、マジックだよ、マジック。

 見ればわかるだろう?」

 

「詐欺に改名しなさい」

 

・・・まあ、そうといえばそうなのだろう。

この幼馴染(おさななじみ)の視線の先にあるのは全て、♧の7のカードになったトランプなのだから。

 

「はは、耳が痛い。

 さて、選んだカードは覚えたかな?」

 

「うん!」

 

とにこやかな笑顔で答える少年(7)と真っ黒い笑顔でそれに答える少年(16)。

・・・7歳の少年は、そのトランプが自分で選んだもの、と思っているのだろう。

もっとも、それはご覧の通り、♧の7しかないトランプなのだが。

これはまあ、最初に見せて、即座にすり替えた普通のトランプが効いているのだろう。うん。

・・・だが、なんともまあ・・・

 

背中が!痛い!

 

とんでもなくチクチクとした視線が背中にぶっ刺さってくる。

 

許せよ少年。

いつか君以外も(だま)すから、それでみんなとトントンだ。

 

許してくださいお嬢様(じょうさま)

(ワタクシ)死んでしまいます。

 

「・・・と、まあ、こんな感じになるわけで・・・」

 

「えー!すご〜〜〜い!!」

 

少年は純然無垢な笑顔で俺を褒め称える。

そのたびに、慇懃無礼(いんぎんぶれい)な殺気が俺を突き刺していく。

 

どうしよう。このままじゃ俺、本当に死んでしまうぞ・・・?

 

「さ、もう暗いから気をつけて家に帰りな、

 おっと、これはプレゼントだ」

 

と、手作りの赤猫のミニぬいぐるみを手渡し、

去っていく少年を見送った後。

 

(おごそ)かに、少女は口を開いた。

 

「・・・それで、(わたし)が何故怒っているかわかりますか?」

 

「・・・先程の詐欺まがいのマジックでしょうか・・・?」

 

「いいえ?あれはあの子が笑顔だったので不問にします。

 腹が立った、といえばそうですが。

 貴方(あなた)のとこの赤猫(ルージュ)が好きだったものでしょう?」

 

「・・・じゃあ、勝手にバニラアイスを食べたことでしょうか・・・?」

 

あっ、殺気が増えた。余罪を増やしてしまったようだ。

 

「私が怒っているのは、今が何時だと思っているんだ、ということです。」

 

「へ・・・?」

 

眼の前の少女は、パッと自分のスマホを少年に掲げてみせた。

 

そこには、6:24と書かれている。

 

「・・・あれ?」

 

「何時だと思っていたの?」

 

「マダ4:00クライカト」

 

「さて、それでは今はなんの時間でしょうか?」

 

「晩御飯ノ時間デス」

 

「ええ。帰りましょう?」

 

 

 

と、(なか)ば帰りたがらない犬を引きずって家に帰る飼い主のように、

少年の服の、首根っこを掴んで帰ろうとする少女に。

 

その爆音は轟いた。

 

「・・・!?」

 

紛れもない爆発音。

 

そして、ガラガラと崩れ落ちていく家々の音だと、それを知っている彼らにはよくわかった。

 

「──────────ッ!」

 

(こぼ)れた吐息を拾い直し、首の手を振りほどく。

その勢いのまま正面に右足を振り上げて走り出す。

 

あれは,先の少年の帰っていった方角からだ。

 

「悪い、ここで待っててくれ!」

 

と、少女に言い残し、呪文(ことば)を唱える。

 

魔術(まじゅつ)

それは総括(そうかつ)して、奇跡(きせき)人為(じんい)的に再現すること。

燃えるものもなく、虚空に炎を出す、など、

存在しな(ありえな)い」を「存在す(ありえ)る」にすることが魔術である。

(ゆえ)に、少年は───!

 

銀花よ、灰と化せ(アペㇱ・アリ・ワ・ヌイ)───!」

 

虚空に炎。

薪も無しに空にわずかに浮くそれ()は、

氷の結晶のようなもので覆われて、プカプカと微睡(まどろ)んでいた。

 

その、即席の爆弾を。

少年は両の足で踏み抜いて、爆発させる。

 

そう。少年は、魔術師だった。

 

「あなたは!どうするの!?」

 

半ば悲鳴のような少女の声に少年は、

 

「ちょっと人助けに行ってくる!」

 

と、家々の影に消えていった。

 

 

 

「っと、とと・・・」

 

あまりの急な加速を抑えきれず、転びかけつつも少年は目的の場所にたどり着いた。

崩れかけの工事現場で、酷い有様だったが、

なんとか、先程の少年が、倒れているのを確認する。

大丈夫だ、まだ胸が上下しているし、外傷もない。

 

「・・・無事だった、か───。」

 

少年が、その言葉を取りやめたのは、恐怖からだった。

そこは、凍りつくように静かだった。

いや。凍りついていた。

雪も霜もない。ましてや季節は5月の始め、まだ葉桜が残る季節だった。

・・・だと、いうのに時が止まったように、世界は凍りついていた。

 

その、視線の先の、骸骨の真っ白な(よろい)をまとった男は、

ゆっくりと、こちらを見やった。

 

ゾワッと、全身を羽虫がこすりながら通り過ぎて行くような、

気持ち悪さと恐怖を覚える。

 

殺気だ。

そう判断するのに、時間はかからなかった。

 

・・・いや。今は違う。

そんな事を考えている暇はない。

今、やるべきことは───

 

動かない両足に構いもせず、思いっきり右手を伸ばし、

眼の前の倒れ込んだ子どもを後ろに引きずり込む。

 

と、瞬間。

 

その骸骨の声もまた、引きずり込まれてきた。

 

「少年。」

 

「──────!?」

 

「・・・そう構えずとも()い。

 今生(こんじょう)の最後くらい、ゆるりとするがよかろう。」

 

「今生の最後くらい、ってことは──────」

 

やっぱり殺すんだな、と目線で問いかける。

・・・そうとなれば、と腰のベルトに金具で取り付けた帽子(シルクハット)を取り出す。

その中の、紺色に、金で装飾した衣服を、バサリと上着のように羽織(はお)り。

今度は同じ色のシルクハットを身に()ける。

・・・怪盗呼ばわりされても文句は言えない格好である。

 

・・・それでも、これが少年の魔術師としての、そしてマジシャンとしての正装だった。

 

その、相手の戦闘準備をただただ待っていた鎧は、退屈(たいくつ)と、悲哀(ひあい)とを混ぜ合わせた顔をしていた。

・・・そう。現代で例えるのなら、

やりたくもない仕事を押し付けられたサラリーマンのような────

 

「優しいんだな、アンタ。

 敵の準備をわざわざ待つなんて────」

 

「おう。もちろんだとも。

 死に装束(しょうぞく)くらい整えてやるが道理(どうり)だろうよ。」

 

「────なるほど。」

 

「・・・ときに少年。

 君に願いはあるか?」

 

「そうだな、今はこいつをどうやって逃がすか、だが────」

 

と、親指で背中の少年を指差すと、鎧の男は苦笑して、

 

「違う、もっと、大義や、いずれ絶対に()したいことだ、」

 

と言った。

・・・首を(かし)げた俺に、男は

 

「どうした、無いのか、それとも────」

 

「・・・いや。あんまり言ってることがおかしくてさ。

 俺達(おれたち)は魔術師だろう?

 なら、目指すべきものは同じなはずだ。」

 

と、今度は俺が笑っていった。

 

「魔術ってのは、ありえないことを起こすものだろう?

 それで、ありえないってことを極めていけば、いつか『絶対に』ありえないことにたどり着く。

 そして、この世界で一番ありえないことは、

 すべての『ありえないこと』を『ありえること』にする魔術(コト)だ。

 ・・・それを使えるくらいの魔術師になって、いつか、俺は。

 ────世界を、救ってみせる。」

 

「世界を?」

 

「・・・ああ、世界中の人を笑顔にしたい。

 それが俺の夢だ。」

 

「ハハ、なるほど、そうか・・・」

 

・・・なるほど、それは。

随分と青臭い理想だ。

随分とくだらない夢だ。

それでも。

それでも、男は。

高笑いをする他に、なかった。

 

「ハハハハハ!ハハハハハハハ!

 見事だ少年、今!お前は!

 この世界に笑顔を一つ増やしたぞ!

 いやはや、そうだ、そうさな、魔術師(キャスター)たる俺が!

 根源(こんげん)の話を知らぬはずがなかった!」

 

ガハハハ、と天に笑う魔術師(キャスター)が。

やがて生気に満ち(あふ)れるその(まなこ)を。

顔を(おお)(かく)すその左手からのぞかせると、こう続けた。

 

「そのうえで一つ教えよう、少年!

 お前の語った、一番の奇跡には(あやま)りがある。

 この世界で、一番の奇跡が、

 すべての『ありえないこと』を『ありえること』にする魔術(コト)ならば、

 すべての『ありえること』を『ありえないこと』にする魔術(コト)もまた、

 最もありえぬことに成るからだ────!」

 

瞬間。

地面が無くなった。

 

「な────!?」

 

否。置き()わった。

無限の、荒野に。

 

真名開放(しんめいかいほう)────『鬼王(きおう)』『杀神(しにがみ)』接合。

 『王の賜死(てんのさばきを)』────!」

 

一瞬の落ちる感覚の後、ふわりと荒れ果てた地平の見える荒野に移動する。

・・・いや、これは────

 

「魔術?」

 

(しか)り。魔術の頂点の一つ、固有結界(こゆうけっかい)

 世界、という『当たり前』をルールの違う、別の世界に置き換える魔術だ。」

 

「・・・なるほど、ようは────」

 

鎧の男が、大きく天に右手を振り上げると、

わらわらと、地面から、無数の骸骨が溢れ出てきた。

 

「自分のためだけの世界を作れる魔術、ってことだな────!」

 

「その通り!

 と、少年────

 (ひと)つ、言い忘れた事があった。

 ・・・恐らく、君の求めるものは、『ありえないこと』を『ありえること』にする魔術ではない。

 もっと大きなものだ。

 かく言う(わたし)も、その一部に過ぎない。

 君も。

 未来も。

 過ぎ去ってしまった過去ですら、その一部だ。

 そう!全てだ、全て。

 ────それを。魔術世界では、根源(こんげん)(うず)と、あるいは『 』と呼ぶのだ。」

 

「・・・根源の、渦────」

 

「そうだ。────そして、喜べ少年。君の願いはようやく叶う。」

 

「え?」

 

「『杀神(しにがみ)』」

 

刹那(せつな)

紅い血のような閃光が、視界の全てを焼き焦がした。

 

「な!?」

 

一瞬。一瞬のことだが、それは魔術師(キャスター)の、腰に差していた剣から放たれたように見えた。

(かわ)せない。あまりに速すぎた。

 

投影(トレース)開始(オン)!」

 

だが、何も守れずに終わりになんてできない。

かつて、焼け焦げた家の中から、自分を助けてくれた魔術師に誓って。

少年の、この魔術の効果は行動保証(スーパーアーマー)

それで、とっさに後ろの子どもを紅い死から遠ざける。

 

が。それまで。

 

まもなく(くれない)が、少年のすべてを覆い焼き殺すだろう。

・・・反射的に腕を十字にクロスさせ、顔をかばう。

意味はない。

が────

 

今度は、少年の左の手の甲から、(くれない)が放たれたように見えた。

直後、紅は黄金に変わる。

 

九つの首を持つ大蛇となって、迫る死を食い破った。

 

いや。それだけではない。

一直線の放射状に放たれた黄金は、廃れた黄昏(たそがれ)をも食い破っていく。

 

やがて、バキリ、と終わりの音が鳴って、

少年たちは、元の世界に戻された。

 

(今のは────!?)

 

「ぬ?

 ()()()()()()()()

 どういうことだ、抑止力(よくしりょく)か────!?」

 

男は、それに心当たりがあるようだったが、それとは別の点に疑問を口にしているようだった。

 

(────キャスター)

 

「・・・!?」

 

何か、くぐもった声のようなものが聞こえたような気がした。

 

(なに)をしている?その子供(ガキ)はマスターだろう?

 ()く殺せ、お前に手にかけさせた子供共(ガキども)のように。)

 

・・・その、命令と(おぼ)しき言葉に、キャスターと呼ばれた男は、

大きくため息をつくと、静かに構えを取り直した。

 

「すまんな少年。

 君が────いや君たちが生き残るには、今一度、その価値を示す必要があるようだ。」

 

再び、虫が全身を這いずり回るような殺気。

それを、一心に浴びながら、少年は、

 

「────上等(じょうとう)!」

 

と、恐怖を振り払うような笑顔でそう言った。

それを合図に、

キャスターは剣を振り上げ、

少年は、

 

銀花よ、灰と化せ(アペㇱ・アリ・ワ・ヌイ)───!」

 

魔術を唱える。

両者の激突、それを待つことはなく。

戦いは、終わりを迎えた。

 

「───緋狼(ひろ)?」

 

思わず振り向く。

聞き慣れた声、それに思いがけず反応してしまった。

そして、それは。

この男の前では、あまりに致命的(ちめいてき)すぎた。

 

右に向いた視線をもとに戻せば、かがみ込んだキャスターが、逆袈裟に切り上げる瞬間だった。

少年は躱せない、がために反応したのは声の主。

 

思いっきり突き飛ばされて、なんとか振られる刃の範囲からは出る。

()()()

 

「───(のぞみ)!」

 

少女は刃からは逃れられない。

もうキャスターは、引き絞った弓のごとく、その両刃を構えている。

 

・・・足元に氷の結晶(ばくだん)はない。

少年は、少女をかばえない。

 

迂闊(うかつ)だった。

自分が振り向いたのも。

キャスターの固有結界の中で、自分のいた場所がズレて、元の公園の中に戻ってきてしまったことも。

そこに少女が言いつけどおり、待機していたことも。

全て、間が悪かったとしか言いようがない。

 

「──────野郎・・・!」

 

何もできずに少年は、少女の胴体が泣き別れするのを見ているしかなかった。

──────はずだった。

 

もう一度、紅い閃光が大地を覆い尽くす。

今度はもっと強く。

 

キャスターは弾き飛ばされ、10mほど後退、そこでガリガリと剣を地面に突き立てて、

ようやくその勢いを止めた。

 

「さて、問おうかニャ、

 緋狼(ひろ)、君が僕のマスターだニャ!」

 

光の中から現れた赤猫は、堂々とその銀の剣を振りかざし、

少年のそれとよく似た、赤の色違いの服装で立っていた。

それを、少年は少々離れた所から見ていた。

 

・・・無論、セイバーは少年の方向を向いていない。

 

先ほどキャスターの斬撃を受けそうになった人物から見て、彼の召喚主は明らかだ。

土ぼこりが晴れていくと、その中からは呆気(あっけ)にとられた様子の少女がいた。

 

「あれ?」

 

赤猫は、(いぶか)しげな様子で首を(かし)げる。

今度は、少年の方を見て、また「あれ?」と首を(かし)げる。

・・・同じく呆気にとられた様子のキャスターが、少年にこう告げた。

 

「すまない少年。君の願いは、叶わないかもしれない。」

 

「なーんーでーニャー!?」

 

と、赤猫の悲鳴のような声が、もう太陽のない空に木霊(こだま)した。




何やら思ったよりカオスになった第一話。

魔術、というのは精一杯調べたことによると、
恐らく人為的にありえないこと(=奇跡)を発生させることのようで、
それのレベルを上げていくことで根源にたどり着くのが、
魔術師の目標なのかなー、と考えました。

とは言っても根源とは恐らくレベル∞。
一、中、百、千・・・と上げていってもたどり着くのは無量大数、
∞にはたどり着けません。
それに緋狼くんはどうやってたどり着くのかなー、と
応援しながら見ていただけると幸いです。

さて、それじゃあ緋狼くんについての解説をしていきますね、
かなりふざけてるので、閲覧にはご注意を。

古海 緋狼

ド級のキラキラネームとともに爆誕した爆弾男。
一応今作の主人公の片割れ、なのだが、
もう片方がセイバー召喚して終わったので
ほぼこいつ一人で話を進めている。
次回辺りからは、こいつの視点で進むことは少なくなるが、
内面が
・理解しづらい
・物語の核心に触れている
ので、ほぼ描写できない悲しき男。
一応、とある大英雄を召喚するのが確約されているのだが、
彼が来るのはいつになるのか、そういう意味でも悲しき男。
ビジュアルはほぼ頭身の低い怪盗◯ッドの色違い・・・
なのだが、どうしてこうなった・・・と作者も頭を抱えていたら、
どうやら元ネタの元ネタだった事が判明。
つまり孫。認知しろ。
と、かなりの問題発言をかました上で、
真面目に言うと、魔術師=マジシャンじゃん!
という一発ネタで生み出されたやはり悲しき男。
しかし、作者個人としては一番大好きなキャラだったりする。
どうやらアンリミテッドなブレイドをワークスする人に、
過去に助けられたらしいが、
それはまた今度。ではさらば。
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