無職転生二次小説 閑話「ナナホシの挑戦」   作:(店`ω´)@てんちょっぷ

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ナナホシの挑戦 その1

 

 

 

 

 

 ──とある晴れの日。

 

 

 

 私は、なだらかな街道を歩いていた。

 肩から下げた鞄に、お土産をたくさん持って。

 隣にはペルギウス様の配下、光輝のアルマンフィ。

 私の持ちきれない荷物を持って、寡黙に歩いていた。

 

 

 ──でも? 

 

 

「あの、アルマンフィさん」

 

 

 私は遠慮がちに声をかけてみる。

 白い狐のようなデザインの仮面を被った彼の表情は、こちらからは伺い知れない。

 仮面に穿たれた穴から瞳だけをこちらに向け、私の次の言葉を待つ。

 

 

「……何か、大事な用があったんじゃないのでしょうか」

 

 

 先程から、妙にせわしい空気が彼から漏れ伝わって来る。

 普段、あれほどに冷静沈着なアルマンフィには似つかわしくない。

 だが、彼は平静な態度を崩さない。

 

 

「──いえ、私の今の任務は、ナナホシ殿の護衛。我が主からの勅令ゆえ」

 

 

 やや低いけど、綺麗な声。ヴィオラかなにかの弦楽器のようだ。

 いつもと変わりのない彼の声。

 私は「……そう」と返事をする。

 それきり、会話は途切れた。

 

 だが、私は見逃さなかった。

 

 彼の答えは、微妙に本心を表している。

 私は「大事な用があるか」と問いただした。

 彼はそれに答えず「今の任務は私の護衛」と答え、

 それに「ペルギウスからの命令だから」と付け加えた。

 

 つまり、本当は何かあるのだ。

 当然、それはルーデウスに関わることだろう。

 

 今日、突然ルーデウスが空中城塞に姿を現した。

 三人目の奥さん、エリスさんを連れて。

 用事はなんだったのか。

 挨拶もそこそこに、エリスさんがどんどん先に進んでいったので、ロクに話せなかった。

 いつも気ぜわしい人とは思うが、珍しいほどに先を急いでいたように見える。

 

 

 ……エリスさん、格好いい人だなと思う。

 

 

 腰まで伸びた赤い豪奢な髪は、自然なウェーブがかかり。

 気品のある目元は、生まれと精神の気高さを表している。

 背も高いし、スタイルもメチャクチャ良い。

 胸は大きいし、ウェストは引き締まっているし、お尻のカタチも格好いい。

 この世界でも、相当強い方の剣士と聞いて納得した。

 アニメとかゲームの女騎士然としているからだ。

 私でも憧れてしまうような彼女。ルーデウスが惚れ込むのも当然だろう。

 

 ……ルーデウスはいつも見る度に、違う女性を妻に迎えている気がする。

 

 最初は、魔法大学の生徒会役員「無言のフィッツ」ことシルフィエット。

 彼女は男装の麗人であり、魔術に関しては大学でも天才と謳われていた。

 結婚してからは服装を改めており、女の子らしい格好をしている。

 話をすると、年相応の女の子だった。話題の殆どはルーデウスのこと。デレデレなのだ。

 私からみても、可愛らしい。見た目は白磁の人形のように整っているが。

 

 以前から時々、お風呂を借りに、彼女の家にお邪魔することがある。

 勿論、彼女の家とはイコール彼女の夫のルーデウスの家でもある。

 ルーデウスは一応自分の妻に一途とはいえ、やや下心の透けて見える人物でもある。

 なので、必ずシルフィエットのいる時に行くようにしている。

 覗かれる心配はあまりしてないものの、私だって女の子。若い男のいる家に迂闊に上がり込めない。

 

 ……勿論、シルフィエットさんだって、気持ちが良い筈は無いのだ。

 

 時々彼女とも話をするが、少しだけ、彼と私の関係を気にしている雰囲気を匂わせる。

 

 馬鹿だなぁ──とは私は思わない。

 

 ルーデウスは自分自身を卑下しているが、世界でも有数の才能の持ち主だ。

 顔だって、背だってそれなりだし。……私の趣味じゃないけど。

 実際、大学の女子たちから、彼の愛人候補になりたいという冗談とも本気とも取れない噂を聞くことがある。

 つまり、彼はそれなりにモテるのだ。妻である彼女が、警戒しても仕方がない状況なのだ。

 

 ──でも、それは杞憂なんだけどね。

 

 ルーデウスはいつだって、自分の家族のことを気にしている。

 あの物凄く強いオルステッドと戦うことにしたのも、家族を守りたい一心だったのだから。

 殺されかけても、尚オルステッドに噛みついたと聞いた。なり振り構わないくらいに半端では無い決意だったのだろう。

 

 特にそれが強くなったのは、シルフィエットとの間に赤ちゃんを儲けて。

 ベガリット大陸から戻って来てから。

 それからの彼は、身に纏う雰囲気とか話すこととかに深みが出たように思う。

 出会った時は少年だったのに、今では私の遥か年長のように感じる。

 

 ──それは、私が肉体的に成長する事が出来ないからかもしれない、が。

 

 でも、家族の長となった彼からは、以前よりも逞しさを感じる。

 

 ……ベガリット大陸といえば。

 二人目の奥さんを、チャッカリ増やしていた。

 

 ロキシー・ミグルディア・グレイラット。

 

 青い髪を持った、魔族の女の子。

 ──女の子、というには、年齢が私よりかなり上らしいけど。

 見た目が中学生くらいなんだから、女の子でいいかなと思う。

 

 彼女も、シルフィエットとは違った、可愛らしい容姿をしている。

 元々は魔法大学出身らしく、当時も天才の一人に数えられていたらしい。

 長い旅路の果てに、今では出身校の教師に就任している。

 落ち着いた雰囲気で、教え方も上手いので、特に女の子から人気があるらしい。

 あの見た目で、大学最高の魔術師ルーデウスのお嫁さん、ってことでも女生徒から面白がられている。ご当地ゆるキャラマスコットみたいなもんだ。

 

 彼女のことを話す時のルーデウスは、正直キモイ。

 目は座っており、瞳孔散大。顔はアルカイックスマイル。

 物凄く情熱的に語る癖に、声のトーンは一定から上がりも下がりもしない。

 まるでお坊さんの念仏のようだ。

 

 幼い頃のトラウマを払拭してくれた家庭教師、との事だったか……? 

 それにしても、彼のロキシーへの畏敬というか尊崇は度が過ぎているように思える。

 

 

 ……と、そこまで考えて、私はそんなことはどうでもいいかと思い直した。

 

 

 ルーデウスとエリスさんが空中城塞に来て、慌ただしく庭園での茶席が設えられ。

 ペルギウスが上機嫌で語りだした。

 お付の配下達も勢ぞろい。

 私はなんだか居たたまれなくなり、外出を願った。

 久しぶりにルーデウスの家のお風呂に入りたかったし、彼の家族にも会いたかった。

 

 ……私は元の世界に戻りたい。

 

 だからこそ、出来るだけこの世界に関わりを持ちたくなかった。

 でも、転移魔術の実験に失敗し。

 ルーデウスや彼の近しい周囲の人間から親身にお世話されて。

 少しだけ、そう、ほんの少しだけほだされたのかもしれない。

 

 徐々に増えていく彼のご家族には良くしてもらっている。

 侍女のリーリャさんや、その娘であり、妹の一人のアイシャちゃん。

 大学の後輩でもある、もう一人の妹のノルンちゃん。

 シルフィエットの娘、ルーシーちゃん。

 ロキシーの娘、ララちゃん。

 

 つまり、ルーデウスの最愛の家族だ。

 

 

(あ、あとそこに、おっきい犬のレオにアルマジロのジローもいた。植木のビートも)

 

 

 生真面目だけど、心の籠った丁寧なもてなしをしてくれるリーリャさん。

 明るくて人懐っこいアイシャちゃんは、大学でのルーデウスのことを聞きたがる。

 そんなに気になるなら大学に入れば? と言うと、少し寂しそうに首を振った。

 何かに遠慮でもしているのだろうか。

 

 ノルンちゃんは真面目だが、どこかズッコケていて、彼の妹らしい。

 きっと理想が高くて、幼い今の自分に釣り合っていないのだろう。

 それなりの年齢になれば、きっとその溝は埋まっていく筈だ。

 ──私も、彼女くらいの頃は背伸びをしていたし。

 

 ルーシーちゃんは舌っ足らずな声で、私の名前を呼んでくれる。

 ほやっとした笑顔で、私に抱きついてくるのがとても可愛らしい。

 私って、こんなに小さい子が好きだったっけ? って思うくらい、ぎゅっと抱きしめちゃう。

 

 ララちゃんは、まだベビーベッドの上。すべてを悟ったような眼でこの世を俯瞰している。

 私が「ララちゃん、こんにちは」と声をかけると「あーぅ」と返事をくれる。

 なんだか、こっちの言ってることを理解した上で返事をしているように見えなくもない。

 私の指をきゅっと握ってくれるのが心地良い。

 

 どの人も、とても暖かく接してくれる。

 血の繋がりも何も無いこの世界で唯一の私の接点といえば彼女たち。

 今ではとても大切な繋がりであると、図々しくも思っている。

 それくらいは……いいよね? 

 

 ……と、そこまで自分の思いに耽っていると、横から咳払いが聞こえてきた。

 

 

「……ところで、ナナホシ殿。この荷物の中身は、なんなのでありましょうや」

 

 

 アルマンフィだ。彼の存在を忘れていた。

 どうにも、そわそわしている。早く空中城塞に帰りたいようだ。……はて? 

 

 

「あー、うん。ルーデウスのご家族への、お土産というか」

 

「土産、にしては、妙なモノを急いで集めさせられましたが」

 

「み、妙……なのかな?」

 

「さぁ。私には、人族の考えていることなど、理解できませんゆえ」

 

 

 そう、私は下界に降りる前に思い立って、とあるモノを集めて回ってもらったのだ。

 日本人である私は、他人の家に上がり込む時には粗品を持っていく、という発想があった。

 でも、この世界は何が喜ばれるか解らない。

 なので、私なりのサプライズを手土産にと思ったのだ。

 喜ばれるかは、まだわからないけども……。

 

 に、しても、だ。アルマンフィの言葉尻がちょっと癇に障る。

 まるで私の行動が迷惑みたいな。まぁ、迷惑なんだろうけど。

 余程、早く帰りたい用事があるようだ。

 うーん。ルーデウスなら、ペルギウスにとって危険なことは無いと思うのに? 

 なんだか悔しいので、そこには触れずに歩く速度を上げることにした。

 

 

 

 ──────ー

 

 

 

 シャリーアの街に入り、街道を進む。

 いくつか角を曲がると、見慣れた屋敷が見えてきた。

 緑色の屋根。白い壁。門にはトレントが巻き付いている……いやこれは見慣れていないぞ? 

 

 アルマンフィが近づくと、トレントは少しだけグネグネしたが、私と目が合うと(?)、

 蔦の絡まった門を開けてくれた。……便利だなぁ。面白いなぁ。

 庭に入り、玄関まで進む。

 少しだけ、息を整える。ふふっ、ちょっと緊張してるかも。

 扉に付いている金属のノッカーを持ち、三回ノックする。

 

 

 ガンッ! ガンッ! ガンッ! 

 

 

 

 

「──こんにちはぁ。ナナホシです」

 

 

 

 

 

 ……つい、口元が綻ぶのは、なんでなんだろうね? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーその2につづきますー

 

 

 

 

 






(店`ω´)はい、どうも。てんちょっぷです。

この物語は、2015年に書いた最初期二次の短編連作です。

ナナホシをメインに書いたハートフルストーリー。

おっさんが書いた割に、可愛らしくナナホシ(JK)を表現できたんじゃないかなぁと思い込んでます。

それでは、つづく話をご期待下さい。


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