男の娘ですが姉の代わりに聖女やります 作:TEC
「私が聖女?」
どういうことだろう。僕はそもそも女性じゃないし、お姉ちゃんはもう…
「何かの間違いではないんですか?」
「いえ、女神さまからの天啓に間違いはありません。この町のキアラ・キャンベルという少女が聖女だと」
少女ということはお姉ちゃんで間違いなさそうだけど。
つまり、お姉ちゃんはどこかで生きてるってこと?
「ウチのキアラはこれからどうなるんでしょうか?」
お母さんが不安そうな表情で神父さんに問いかける。
「キアラさんには王都の教会に来ていただく必要があります。」
「え、でも急にそんな」
「申し訳ありません。大司教様からの意向です」
神父様の顔を見てなんとなく拒否権がないことを悟った。
「ですが安心してください。キアラさんの安全は必ず保障いたします」
神父さんは後日王都から迎えが来ることを僕たちに伝えて家を出て行った。
そもそも、僕はお姉ちゃんのふりをしているだけ。偽物なのだからこのまま王都の教会に向かっても意味がない。
それどころかバレたらどうなるのか分からない。
それにお母さんだって、
「キアラ」
「…何?」
「凄いじゃない!」
「え?」
「ウチの子が聖女に選ばれるなんて」
少し前まで、お姉ちゃんがいなくなるということにとても不安を覚えていたとはずなのに急に人が変わったようだ。
「大丈夫あなたなら出来るわよ」
「いいの?」
「えぇ、親の我が儘で子供の可能性を潰したくないもの。私はキアラがいなくても大丈夫よ」
なんでかお母さんは僕が聖女になりたがっている前提で話を進めてる。お姉ちゃんは実は聖女になりたがっていたとかなのかな。
「分かった」
もう、聖女としていくしかないのだろうか。
いくら考えてもいい方法が思いつかない。
「おい、キアラどういうことだよ!」
「そうだよ!お姉ちゃんがいなくなっちゃうってなんでなの!」
しばらくして話を聞きつけてきたセシルさんと妹のアーリアさんがきた。とても慌てているようだ。
「そんなに心配しなても大丈夫だよ!!一生会えない訳でもないし!」
「うぅ、キアラお姉ちゃんいかないでよ…」
アーリアさんが涙目で見つめてくるけど、僕にはどうしようもないし。
「アーリアちゃんごめんね。私にはどうすることもできないんだ」
しばらく泣きつかれてしまったが気持ちの整理がついたのか僕から離れてくれた。
「何であんた聖女に選ばれるのよ…」
「キアラがいない何て私は嫌だぞ!」
その後、アイシャとアルジェが入れ替わるように僕のもとを訪れた。
「「「「絶対キアラを迎えに行くから待ってて!!」」」」
みんな共通して最後にそう言っていた。やっぱりお姉ちゃんは皆んなにとても愛されている。
お姉ちゃんのフリをしていて本当にそう思う。
だから、僕はみんなにこう返答した。
「いつか、
お姉ちゃんが聖女だって女神様に言われたってことは、多分お姉ちゃんは生きてるってことだよね?
お姉ちゃんが本当に死んじゃってたら女神様が分からないわけもん。
僕がこの位置にいちゃダメなんだから早く見つけてあげないと。
それから数日後、僕はこれから王都に行く馬車に乗り込もうとしている。
とても豪華な馬車だ。
護衛?の騎士さんたちも沢山いた。何だか萎縮してしまう。
「キアラ、気をつけて行ってくるのよ」
「うん。お母さん行ってくる」
「ここから我々が王都まで聖女様を護衛させていただきます。」
馬車の前で女騎士の人が僕に跪いている。それに続くように他の騎士の人たちも跪いている。
「あの、そんな皆さんで跪いて頂かなくても」
流石にこんな立派な人たちに跪かれるというのは落ち着かないというか、申し訳なくなってくる。
「いえ、聖女様にそんな恐れ多いことは出来ません」
女騎士の人が頭を下げた状態をキープしたままその体制を動かさない。これどうすればいいんだろう。
「そ、そうなんですね。えっと、よろしくお願いします」
「はい。我々の命に変えてもお守りします!」
先が思いやられるな…
「出立だ!」
ガタ
馬車が動き出した。窓から外を眺めていると建物が徐々に小さくなっていく。
これからはどうにかしてセシルさんの為にも、お姉ちゃんを探す。
それで元に戻って
それで、そのあとは…
僕はどうなるんだろう。家に帰ってもお母さんは僕を覚えてないし。僕アデルは友達もいないし。
お父さんもお姉ちゃんさえいれば問題ないだろうし。
「やっぱり、僕はいらないかな」
ーーー
セシル視点
俺はキアラのことが好きだ。
いつから好意を抱いていたのかはもう分からない。気が付いたら好きになっていた。
「おはよう、キアラ」
「おはよう、セシル!」
そんなキアラと俺は今日買い物に来ている。
キアラの笑顔を見るとやっぱり嬉しくなる。
「今日はどこに買い物に行くの?」
キアラが首を傾げながら今日の行き先を問いかけてくる。そんなちょっとした動作がどうしてこんなに可愛いんだろう。
「セシル?」
いけない。ついキアラに見惚れてしまった。
「特に決めてないから色々見て回ろうぜ」
「何それ。まぁいいけど」
今日は何を隠そうキアラにプレゼントを買うために呼び出したんだ。
喜んでくれるといいな。
「へぇ〜、こんなの売ってるんだ」
そう言ってキアラが見ていたのは何か青い石がついたネックレスだ。
「綺麗な石だな」
「うん。そうだね」
その後も色々な店を回ったけどキアラが特に興味を示したものはなかった。
つまり俺がキアラに何をプレゼントするかは決まった。
「もう遅い時間だし、そろそろ帰ろうよ」
「そうだな。その前にキアラにプレゼントがあるんだ!」
「プレゼント?」
「そう。これだ!」
俺はキアラに内緒で購入しておいたネックレスを取り出した。
「あ、さっきの…」
「そう!キアラがさっきみてたやつだよ」
「でも、なんでプレゼント?」
「それはまぁいいじゃん!」
ただ、好きな子にプレゼントをしたいからなんて言えないよな。
「ん?まぁ、でもありがとう!」
「せっかくだから着けてあげるよ」
「じゃあ、お願い!」
「じっとしててくれよ」
「わかった」
「ぐっ」
キアラの後ろに回りこんでネックレスを取り付けようとするとき俺の目は一点に集中してしまった。
ネックレスを着けやすいように髪の毛をかきあげてくれているのはいいんだけ、そのせいで白いうなじが。
「ありがとう」
なんとかネックレスを着けることができた。
「どう?似合ってるかな?」
「うん。とても似合ってる!」
「ありがとう!」
そう笑顔で答えたキアラはとてもきれいだった。
いつか絶対に告白をする。
そう思っていたのに
「セシル、アーリア」
ある日お母さんが神妙な面持ちで俺とアーリアに話しかけてきた。
いつもは笑顔な母さんとは違う雰囲気に何かあったのだと察した。
「女神様から信託があってキアラちゃんが聖女に認定されたらしいわ」
伝えられた内容は、突拍子もない内容だった。
「聖女様?それって凄いことじゃないの?」
アーリアがお母さんに疑問をぶつける。俺もあんまり聖女様?について詳しくないけど、そんなに深刻なことなんだろうか。
「そうね。とても凄いことよ」
「じゃあ、なんでそんな顔してるの?」
「キアラちゃんはこれから聖女として王都に向かうことになってるらしいの」
「それって、キアラは帰ってくるの?」
「分からないけど。聖女って言うのは国中でも一人しかいないもので、女神様が任命した人しかなることが出来ないの。だからおそらく」
お母さんは暗にこう言いたいのだろう。
キアラは王都から帰ってくることはないだろうと。
「と言っても、本当に会えなくなるってことはないと思うわよ。ただ、いつでも会えるってことはなくなっちゃうでしょうけど」
俺とアーリアはいてもたってもいられずキアラの家に走り込んだ。
「おい、キアラどういうことだよ!」
「そうだよ!お姉ちゃんがいなくなっちゃうってなんでなの!」
家から出てきたキアラは何となく元気がなさそうだった。
「そんなに心配しなても大丈夫だよ!!一生会えない訳でもないし!」
そんな状態でもいつも通りの笑顔を俺たちに向けてくれている。
「うぅ、キアラお姉ちゃんいかないでよ…」
「アーリアちゃんごめんね。私にはどうすることもできないんだ」
アーリアに泣きつかれているキアラは困ったような笑顔を浮かべている。
「キアラ!」
「うん?」
「キアラは聖女になって嬉しいか?」
「う~ん、嬉しい…嬉しくはないかな」
そういうキアラの表情は悲しそうだった。
「俺が絶対迎えに行くから待っててくれ!」
気づけば俺はキアラにそう言い切っていた。
「迎えに?」
キアラが俺の発言に面食らった表情をしている。
「そうだ、キアラだって聖女やりたくないんだろう。だったら待っててくれ。俺が絶対に迎えに行くから」
「私も、絶対にお姉ちゃんを迎えに行く!」
俺とアーリアの決意にキアラは儚い笑み浮かべていた。
「…そうだね。いつか私を迎えに来てあげてほしいな」
「あぁ、任せておけ!」
キアラの言い回しに少し違和感を覚えたながらも俺は力強く返事をした。