| 【ハレヒノカイザー圧巻の7馬身差V!次走はまさかの!?富士澤調教師「これから先の選択肢を増やすため」】
4月2日に開催された第50回産経大阪杯はハレヒノカイザーが他馬を一蹴して勝利を飾った。逃げ馬のシルクフェイマスを見る形で2番手追走、アドマイヤジャパンのマークをものともせず第3コーナーで進出を開始。第4コーナーで先頭に立ったかと思うと、そのまま突き放しての圧勝劇を披露。怪我明けとは思えない強さを見せてくれた。 ハレヒノカイザーはトウカイテイオーの子。今回のレースでは、トウカイテイオーの大阪杯を思い出した人も多いだろう。鞭を抜かず、ほとんど追わない状態での勝利。今回のハレヒノカイザーもまた、鞭は入らず馬なりでの勝利だ。祖父であるシンボリルドルフの日経賞もまた、手綱を持ったままの完勝。この系譜はもしかすると、年明け初戦に強いのかもしれない。そんな圧倒っぷりだ。 さて、ここで気になるのはハレヒノカイザーの次走だ。この勝ちっぷりから宝塚記念を目標に進めると思われていたが、陣営は大胆な選択をする。 富士澤調教師はハレヒノカイザーの目標を安田記念に据えた。東京競馬場で開催される、1600mのマイル戦だ。安田記念を踏まえた上で、次走には京王杯スプリングカップを選択したと発表。
富士澤「元々スピードがある馬。この大阪杯でさらに自信を深めることができた。重馬場であれだけの強さを披露してくれたのだから、マイルもきっとこなせる、確信している。ただ、ぶっつけ本番は不安が残るから1つレースを叩きたい。それが京王杯スプリングカップだった」
京王杯スプリングカップは東京競馬場で開催される1400mのレース。安田記念の前哨戦にはもってこいの舞台だろう。 この選択に、主戦である岡邉騎手も納得している。ただ、もう一つのプランもあったようだ。
岡邉「キングジョージもどうか?と提案したがさすがに断られた。このまま海外遠征に行くのも悪くないと思ったんですけどね」
ハレヒノカイザーならば海外でも通用する。そう熱く語る岡邉騎手。我々も同じ思いだ。 初の重馬場でありながら、ディープインパクトに勝るとも劣らない圧勝劇を披露してくれたハレヒノカイザー。今後、彼のレースは一層注目されることだろう。贅沢を言うならば、ディープインパクトとの再戦も早いうちに実現してほしいものである。
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大阪杯後の陣営のコメント
富士澤調教師
「ケガ明けの復帰戦で、しかも重馬場でこれだけの強さを見せるとは思わなかった。我々が一番びっくりしている。ほとんど馬なりで他馬との差を広げていくから、こんなに強くなっているのか、と感動すら覚えた。
まだまだ全然本気ではないのか、疲労もほとんどない。ハレヒノカイザーからすれば遊んでいるような感覚だったんだろう。それでこれだけのレースを披露するのだから、潜在能力は計り知れない。
今後は選択肢を広げるという意味でもマイルの安田記念を狙う。その前に、レースを一叩きするつもりだ」
岡邉騎手
「本当にびっくりしている。まぁ勝てるだろう、と確信はしていたけれど、これほどの力を発揮するなんてさすがに思わない。ケガ明けを感じさせない、力強い走りだったよ。
本当にスピードが突出している。しかも、エンジンがかかるまでが凄く早い。あっという間にかかるんだ。だから、並ぼうとしてもすぐに突き放すことができる。これはハレヒノカイザー独自の強み。
今ならばディープインパクトにも負けないよ。断言してもいい」
春陽オーナー
「もう、本当にね。とんでもない孝行息子ですよ。G1を取ってくれて、重賞もたくさん取ってくれて。感無量です。これは、行けるかもしれませんね。海外挑戦」
◇
はろはろ、私です。大阪杯で大勝利しましたよ、フンスフンス。
いや~、大阪杯はアレでしたね。疲れるレースでした。
(初めての重馬場? ってやつだったからな~。いつも以上に芝は重いし、それのせいでペースは遅いし)
私は別に重馬場とやらは問題ありません。雨でぬかるんだ地面を走るのは嫌いじゃないですし、雪の上だって走るのは好きですから。そこまで苦にはしませんとも。
ただ、問題は他の子達ですよ。私みたいにはいかないらしく、結構なスローペースだったんですよね。そのせいで、かえって疲れました。
(先行の位置につけるのも一苦労でしたよ)
逃げたら逃げたで、多分手綱を絞られるので。岡邉さんに無駄な負担をかけさせるのもどうかと思いますし……こういうとこなんでしょうね、ロブロイさんやジャパン君にも言われるのは。
そう、ジャパン君といえば……彼は引退するらしいです。この前の新聞で見ました。まぁ、レース後のジャパン君を見てなんとなく察してはいましたが。
(もう走れなくなった、みたいな雰囲気でしたからね。その原因は、私なのでしょう)
さすがの私もそこまでバカじゃありません。誰が原因であぁなったのか分からないほど、察しの悪い馬ではないですよ。
ジャパン君はもうレースを走れない。だったら、私のすることはただ一つ。彼の分まで走ることです。
(なにより、ジャパン君に託されましたからね。ジャパン君が胸を張れるような結果を出してくれって、プイちゃんに負けないでくれって)
ならば頑張りましょう。私はできる子ハレヒノカイザー。みなさんの思いを背負って、これからも頑張りますとも。
そうだ、新聞では私のことがまーた大絶賛されていますよ! いやはや、もうこれはハリウッドデビューもできちまうんじゃあないですか? どうも、ハリウッド出演を果たした馬です。気が早いか。
(大阪杯の勝利でみんなが褒めてくれましたからね。あの時の大歓声はまだ覚えていますよ!)
さすがにG1級、とはいきませんが、それでも多くの人間さんからお褒めの言葉をもらいました。新聞記事では大絶賛! むはは、気持ちいいぞよ~!
さて、読み返したくなりましたね。というわけで壬生さん頼みます。
「ブモ」
「なんだ? また新聞もって来いって? 新しいのはないぞ?」
「ブルル(読み返したいんですよ)」
「分かった分かった。持ってくるよ」
持ってきてくれた新聞を読み返します。そこにあるのは、私のことを絶賛する記事ばかり。
【太陽の皇帝ハレヒノカイザーここにあり!圧巻の7馬身差で大阪杯を制す!】
【怪我明けでも問題なし!これがテイオーの息子だ!】
【ダービー馬は始動戦で威光を示す。皇帝から繋がる系譜】
むっふー! 最高! もっと褒めて!
「お前今回の新聞記事好きだな~。やっぱ褒められてるからか?」
「だろうよ。元々ハレヒノカイザーは褒められるの好きだし、文字が読めてるんだから何度も読み返したくなるんじゃないのか?」
「だよなぁ。しかも、今回熱烈な新聞記者の人が増えたしな」
「あ~氷見さんな。アレにはびっくりしたな」
ご覧くださいよ。太陽の皇帝ですってよ、太陽の皇帝! なんとカッコいい響きでしょうか! あ、ちなみに太陽の皇帝というのは私の異名みたいなもんです。プイちゃんは英雄って呼ばれてますね。それと似たようなもの。
名づけになったのは私のダービー戦。実況の人が叫んだのが基になっているのだとか。後は、私が皇帝と呼ばれたシンボリルドルフの孫だから、レーススタイルが非常に似ているから、というのもあるそうです。
いやはや、なんにせよこのかっちょいい異名ですよ異名。熱烈なファンも増えちまうってもんです。ふっ、サインは一人につき一枚までですよ?
「氷見さん、特集記事も組みたいってぐらいなんだろ? 新人なのに凄い熱量だよな」
「ま、新人だから許してもらえなかったみたいだけどな。ゆくゆくは、かもしれないな」
「お前も幸せもんだな~」
撫でてくれる壬生さんと他のスタッフさん。むふん、これからも頑張りますよ。
◇
大阪杯では、ハレヒノカイザーの素質を垣間見た。
(なんと、恐ろしいことか)
震えた。底の見えなさに、彼がもちうる素質に、歓喜を覚えた。
一部ファンの間では公開調教とも呼ばれているあの大阪杯。あぁなるほど、確かに道理かもしれん。ルドルフの日経賞やテイオーの大阪杯に類するものがある。
今回の大阪杯。雨での開催とカイザーにとって初の経験となる重馬場での開催となった。正直に白状すると、私は少しばかり不安を抱えていた。
未知の体験に加え、復帰戦。テイオーの前例があるとはいえ、力を発揮することができるだろうか? と思うのは当然のこと。果たして重い馬場でも問題なくやれるだろうか、と一抹の不安がよぎった。
その不安は──第3コーナーで一蹴された。
(暴走かと思った。しかし、違った)
突如としてペースアップするカイザー。掛かっていると思われた。スタミナがある方ではないのに、ロングスパートを仕掛けたのだから、そう思うのも当然だろう。
だが、掛かったのではない。適正のスピードに戻しただけだ。遅くなったペースで溜まったフラストレーションを、元のペースに戻したことで解放したのだ。
重馬場であっても発揮されるスピード。ただ走っているだけで、他を圧倒するスピード。
(彼は純粋に速いのだ。レースが巧い、曲がるのが巧い。そういう次元の話ではない!)
元のスピードが飛び抜けている。かつてのマルゼンスキーのように。
とどめに、7馬身差という圧勝。最後は馬なりで走っていたのにも関わらず、他馬が近づくどころか離されていく圧勝っぷり。常日頃からとんでもないと口にしていたが、足りないぐらいだ。
あぁ、本当に素晴らしい逸材だ。彼ほどの馬に騎乗できる私は贅沢者だな。
(ふっ、あれほどの馬が売れ残っていたというのだから面白い。まさか、こんなことになろうとはな)
「随分と楽しそうだな岡邉。またカイザーのことか?」
「一雄さんか。その通りだ」
気づけば一雄さんが来ていた。今日はハレヒノカイザーの今後を相談する会議、少し遅れて春陽さんもやってきた。
まずは、一雄さんのプラン。今回の会議の大本命だ。
「安田記念を目指す。そのために、京王杯スプリングカップを叩く予定だ。いきなり安田記念はさすがに厳しいものがあるからな」
「ペースをマイル戦に慣れさせるため、だな」
「そういうことだ」
一雄さんが提示するのは、元より計画していた安田記念を目標に据えるもの。宝塚記念は出走しない選択肢だ。
スピードに優れているカイザーならば、マイル戦であろうとも合わせることができる。もしかすると、マイルの方が適性が高いかもしれない。もっとも、カイザーならばスプリントだろうとこなせる気がするが。
安田記念を目標に据え、前哨戦として京王杯スプリングカップを使う。これが通常のプランだ。
「春陽さんも、このプランで構いませんね?」
「俺は構わないよ。それにしても……まさかここまでの馬だなんてねぇ」
同意する春陽さん。しみじみと、カイザーの活躍をかみしめているようだった。気持ちは分からないでもない。
「それで、岡邉はどんなプランを考える? 何もなければ、これで決まりだが」
私の言葉を待つ一雄さん。私は、考えをめぐらす。
一雄さんのプランは悪くない。カイザーの選択肢を広げるという意味ならば、これ以上はないだろう。
ただ、それでいいのだろうか? 騎乗している私だからこそ、分かることがある。
(カイザーはもっと上に行ける。そう考えると)
ある一つの選択肢が、頭に浮かんでいた。
「私は──早い段階で海外の経験を積むのも悪くないと思っている。それこそ、キングジョージの出走だ」
「……キングジョージ、か」
キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス。欧州で開催されるこのレースを、走るのもいいんじゃないかと思い始めていた。
まぁ、いろいろと無理があるが。一雄さんも首を横に振っていた。
「さすがに無理だな。カイザーならばこなせるとは思うが、負担を考えるとどうしても尻込みする」
「……だと思っていた」
カイザーの負担。無視できない事情がある限り、キングジョージの出走は得策ではないだろう。しかもアスコットのコースはカイザーに不向き。見送るのも仕方ない。
加えて、凱旋門賞だ。
「まだ確定ではないが、秋は凱旋門賞に出走することがほぼ確定的だ。でしょう? 春陽さん」
「あ、あぁ。ディープインパクトの馬主である金田さんから、一緒に来てくれないかと相談されていてねぇ。ストレスの軽減を考えると、悪くない提案だ」
まだ発表しておらず、計画段階のことではあるがディープインパクトと一緒にフランスに渡ってくれないか? という誘いが、春陽さんに来ている。依頼主は金田さん。ディープインパクトの馬主だ。
環境の変化が馬に及ぼす影響は大きい。そのため、一頭だけではなく他の馬も一緒に遠征してくれ、というのはよくある話だ。
ディープインパクトとカイザーは仲が良い。だからハレヒノカイザーに来てもらえないか? というお誘いが春陽さんにきた。
元より、こちらも海外遠征には乗り気だった身。結果は言うまでもなく。
「秋は凱旋門賞。でも、発表はまだですよね?」
「はい。金田さんがいずれ発表すると思いますので、そこで話をすることになります」
賛成。カイザーも凱旋門賞に出走することになる。もっとも、あくまで計画段階。この話がなくなる可能性も0じゃないわけだが。
それにしても、凱旋門賞か。
(かつてルドルフでは挑めなかった舞台。その舞台に、彼の孫で挑むことができる)
勝てるか勝てないか? 違うな。カイザーなら勝つ。だからこそ、後は私の騎乗をどうにかするだけだ。
下手な騎乗はできない。私のジョッキー人生の全てを注ぎ込む覚悟で挑む。遥かなる高み、世界最高峰の舞台──凱旋門賞に。
次走は京王杯スプリングカップ。印象がもう京王杯スリリングカップなんですよね()