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Vanquish Warrior(ヴァンキッシュウォリアー)とは、2010年生まれの競走馬。牡馬・種牡馬。「太陽の皇帝」ハレヒノカイザーの2年目産駒でいろいろとネタが多い馬である。
14戦11勝
主な勝ち鞍
2012年:デューハーストステークス(GⅠ)
2013年:牡馬クラシック二冠[2000ギニー(GⅠ)、ダービーステークス(GⅠ)]、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークス(GⅠ)、愛チャンピオンステークス(GⅠ)、凱旋門賞(GⅠ)
2014年:プリンスオブウェールズステークス(GⅠ)、英チャンピオンステークス(GⅠ)
2013年カルティエ賞最優秀3歳牡馬、年度代表馬
■誕生したネ……期待馬
2010年3月11日にアイルランドで誕生。父は日本のハレヒノカイザー、母はアイルランドの繁殖牝馬ディングル、母父デインヒルの血統。母ディングルは競走馬ではあったものの、未勝利に終わっている。
2008年より種牡馬として活躍しているハレヒノカイザー。あまりにも貴重なバイアリーターク直系ということもあり、世界中の馬産家がハレヒノカイザーの血を欲しがった。本当にヒトカスはさぁ。
無論、アイルランドも例外ではない。初年度から何頭もの牝馬に種付けしてもらおうと画策していたのである。結果としては……コンスタントに走ってくれるため、馬産家としてはありがたい限りだったそうな。
そんな折に種付けされたのがこのディングル。目立った活躍馬はいないが、物は試しとハレヒノカイザーをつけることに。そうして生まれたのが後のヴァンキッシュウォリアーである。
で、このヴァンキッシュウォリアーだが、気性はまぁまぁ荒かった。カイザー産駒の中でも気性が荒く、紐を千切りそうな勢いで抵抗したこともあったそう。
これもまた闘争心の表れ、期待が持てるぞ!と楽観視。それに走るかどうかも未知数な段階で、貴重な後継になりうる存在を失いたくないとの思いから去勢は免れている。もしこの時点で後継がいたら去勢されていた可能性は微粒子レベルで存在していたかもしれない……それぐらい気性が荒かったそうだ。
厩舎はイギリスのフランケルが所属している厩舎に。調教も苦労するのではないかと予想されていたが、意外にもそんなことはなく。調教師に懐いていたこともあってか順調、レースに関しても真面目に取り組むようでゲート試験も一発で通ったどこぞの聖帝も見習ってほしいもんである。
果たしてどのような結果を出してくれるのか。立派な成績を残してくれるのか。期待をされていた。
■デビュー戦と露呈する弱点
デビュー戦となったメイドン(未勝利戦)は8月の半ば頃。他に有力馬がおらず、最終追い切りで抜群の手ごたえを見せていた本馬は断トツの1番人気に推される。
馬場の状態はfirm(良馬場)で開催。ヴァンキッシュウォリアーはというと、後続を10馬身以上突き放す大差で圧勝した。ちなみに馬なり。う~ん強い。
この勝利に馬産家たちは大盛り上がり。これは来年のクラシックが楽しみだ、間違いなくハレヒノカイザーの後継になってくれる!とあまりにも気が早い予想を立てていたそうな。
その後調教師はフランケルと同様のレースプランを立てる。デューハーストステークスを見据えて、段階的に競争の経験を積ませようとしたのである。
そんでもって次走に据えられた条件戦。あれだけのパフォーマンスを披露してくれたのだから今回も大丈夫だろう、と高を括っていたのだが……なんと半馬身差の辛勝である。なんで?
メンバー的にもそれほど強い馬がいたわけではない。もっと千切ってくれると思っていたのに、なんでこんな結果に?と思われていたが。よ~く見てみると……コイツ馬っけ出してやがる!
……はい。これがヴァンキッシュウォリアーを語る上で外せない第一のネタ。牝馬がいるとほぼ確定で馬っけを出すことである。
実はこのレース、牝馬も出走しており、よりにもよってヴァンキッシュウォリアーの近くにいたのだ。
それによってヴァンキッシュウォリアーは興奮。幸いにも暴れまわりはしなかったものの、競走にすら影響を与えるレベル。勝ったから良いものの、これで負けたらいい飯のタネになるところだったすでになってるけど。
なお、牝馬がいなければ圧倒的強さを発揮する。次走のロイヤルロッジステークスは7馬身差、2歳G1最高峰のデューハーストステークスは9馬身差の圧勝を飾っていた。お前牝馬がいる時といない時で極端すぎるんだよ!
とんでもない弱点が発覚したヴァンキッシュウォリアー。これがまだ序章に過ぎないことを、我々は思い知ることになる。
■いざ、強さを証明するために
いろいろとあったものの年が明けて。カルティエ賞の最優秀2歳牡馬に選ばれてこれからはクラシックシーズン。
クラシック競走は種牡馬価値に多大な影響を与えるレース。ハレヒノカイザーの後継となるのであれば、是が非でも取りたいタイトルだ。
特に、ヴァンキッシュウォリアーは好スタートからの快速で勝利を収めるスタイル。牝馬も出走してこないから今年のクラシックの大本命と目されていた。
前哨戦を挟まずに2000ギニーへ。対抗馬としてデューハーストステークス2着のドーンアプローチが挙げられていたが、それでも本馬が圧倒的な人気を誇る。
レースは好スタートからの3番手をキープしながら進む。特に行きたがる素振りも見せず、騎手の指示に従順に従うヴァンキッシュウォリアーは、鞭を使われた瞬間爆発的な加速を見せる。残り400となったところで先頭に立ち、後は後続を突き放しての圧勝劇を披露した。
最終的な着差は5馬身差。しかもレースレコード。マイル戦でこれは恐ろしい限りである。
次走はそのままダービーステークスへ。距離不安が少しだけ心配されていたが、それでも最大級の栄誉を求めて出走することになる。
レース本番は、やはりヴァンキッシュウォリアーが1番人気、ドーンアプローチが2番人気と変わらない。エプソムの競馬場はタフなコースで有名、走破することができるかとドキドキしながら見守っていた。
結果は──ヴァンキッシュウォリアーが最後の直線に立った段階で先頭に立つと、3馬身のリードを保ったまま独走。他馬を寄せ付けることなくクラシック二冠を制した。
2000ギニーにダービーステークスも制した。こーれはもう後継として文句なしですわガハハ!と向こうの馬産家は大喜び。ついでにハレヒノカイザー産駒の大物が誕生したことで日本も大盛り上がりただしフランスてめーはダメだ。
これには調教師もご満悦。担当してた厩務員がコイツに蹴られてケガしたけど順調に進んでいるということで、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスに出走することになった。
キングジョージに出走する理由はごく単純なもの。古馬戦の経験を積むためと、牝馬を見ても馬っけを出さないようにするためである。なんともアレな理由だ。
ただ、この8日後にヴァンキッシュウォリアーに不幸が訪れる。なんと調教師を務めていたハイムリックが死去してしまったのだ。調教師自体は彼の妻が引き継いだものの、ダービーステークスを制覇してからわずか数日後の悲劇。ヴァンキッシュウォリアーも元気をなくしていたらしい。
陣営は次走であるキングジョージに闘志を燃やす。絶対に勝つぞと一丸となって挑んだ。
調子も絶好調、沈んでいたのが嘘のように燃えているヴァンキッシュウォリアー。絶対に負けられない戦いに、万全の状態で臨むことができた。ヴァンキッシュウォリアーは1番人気での出走となる。
対抗馬は古豪シリュスデゼーグル、そのシリュスデゼーグルをサンクルー大賞で倒したノヴェリスト、さらには同期の愛ダービー馬トレーディングレザーが相手。果たしてどんなパフォーマンスを披露してくれるのか、注目が集まる。
レースはいつものように好スタートを決めると、2番手で追走。ラビッドの馬が作り出すペースに合わせて走り、オールドマイルコースで5番手まで順位を落とそうが関係なく走る。
最後の直線。ヴァンキッシュウォリアーは一気に捲って上がってきた。一頭、また一頭と瞬く間に躱していく。父譲りの快速で、他の馬を圧倒していた。
最後には3馬身差をつけての優勝。亡きハイムリックに捧げるキングジョージのレコード勝ちである。関係者は涙を流した。
調子を良くした陣営は愛チャンピオンステークスに照準を定める。狙う理由はキングジョージと一緒だ。セントレジャー?距離がね……。
そしてこの愛チャンピオンステークスは牝馬が2頭出走。ヨークシャーオークスを制してやってきたザフューグが対抗に挙げられていた。
牝馬がいるということでヴァンキッシュウォリアーは2番人気。ついでに馬っけを出していたのでちょっと離されての2番人気だった。どうにかならんのかそれは。
なおレースに関してはヴァンキッシュウォリアーの辛勝で終わる。なんとかクビ差残しての勝利を収めた。残り200mで並ばれた時には冷や汗をかいたものである。
それでも勝利は勝利。これを弾みにして凱旋門賞へと挑戦することになる。
今回の凱旋門賞は豪華なメンバー。日本から前年度2着の三冠馬オルフェーヴル、フランスダービー馬アンテロ、さらには同期で同じく無敗のトレヴが出走を表明。一応日本のダービー馬でありニエル賞を制したキズナも出走予定だったものの、ニエル賞後に歩様に乱れがあるとのことで出走取消となっていた。
さぁ行くぞ……という矢先、なんとヴァンキッシュウォリアーの主戦騎手が別のレースで騎乗停止処分を食らうという不運に見舞われる。
凱旋門賞まで日がない。これまで乗ってきた騎手が乗れなくなるというのはあまりにも痛手。しかも牝馬がいる。どうしたものか……と陣営は頭を悩ませていた。
そんな状況で手を上げたのが日本のレジェンドタッケである。本来キズナに騎乗予定だった岳だが、キズナが出走できないということで帰国予定だったそう。
別に親交があるわけではなかったが、手を上げてくれるだけでもありがたい。こうして初コンビが決まったのである。なお出走まであと10日しかなかった。
凱旋門賞本番。牝馬がいる上にアクシデントが重なったことで4番人気になる。仮にもクラシック二冠馬なのにあんまりである。
だが、本番になると様子は一変する。好スタートからの内につけることができたヴァンキッシュウォリアーは、前を走る馬を風除けにすることでスタミナの消耗を抑えながら進む。道中は5番手で追走していた。
フォルスストレートを超えて最後の直線。溜めていた末脚を一気に爆発させる。オルフェーヴルを瞬く間に捉え、前を走るトレヴへと猛然と襲い掛かる。
その差を瞬く間に詰めていく。さらにはオルフェーヴルもヴァンキッシュウォリアーにあてられたか、トレヴへと猛然と襲い掛かる。残り200mで3頭が並んだ。
そして100m。ついにヴァンキッシュウォリアーがトレヴを躱して先頭に立った。オルフェーヴルはトレヴに並んだまで、トレヴと一緒に千切り捨てられる。
そして、ヴァンキッシュウォリアーが凱旋門賞を制した。トレヴとの無敗対決を制したのはヴァンキッシュウォリアーである。
トレヴ陣営は「さすがに強かった」とヴァンキッシュウォリアーを称賛。ヴァンキッシュウォリアー陣営もトレヴとオルフェーヴルの2頭を称賛するコメントを残している。2着のトレヴは半馬身差、3着のオルフェーヴルはトレヴのクビ差なのでかなりの接戦だ。
また、騎手である岳隆は初の凱旋門賞取得である。涙を流して喜んでいた。
というか
・本来騎乗予定の馬が歩様の乱れで出走取消
・本命候補の主戦騎手が騎乗停止により騎乗できない
・もうすぐで帰国するところでじゃあ自分が、と手を上げる
まさかこんな運命の巡り合わせがあるとは思わんかった。
この圧倒的活躍により、カルティエ賞の最優秀3歳牡馬と年度代表馬を獲得。納得の選出である。
■年明け初戦から暗雲が
結果残したしこれで引退……とはならず。なぜか現役続行となった。なんで?
陣営曰く、「牝馬に対する耐性がなさすぎるのでどうにかしないと種牡馬にできない」とのことらしい……ついでにここで第二のネタについて触れておこう。
なんとこのヴァンキッシュウォリアー、馬っけを出す割には牝馬に対する耐性があまりにもないのである。ウッソだろお前!?
馬っけを出しても襲い掛からない。うんうん、紳士だね……なんできょどってんだお前は。おい、なんだその怯えるような目は。本当に何なんだお前は!
牝馬に近づくどころか逆に遠ざかる。なぜかおびえたように後ずさるのだ。誰が言ったか「童貞みたいな動き」。クラシック二冠馬の姿か?これが……。
そんなこともあってか、こんなんじゃ種牡馬にできないよ~とのことで泣く泣く現役続行。最低限牝馬に対する耐性をどうにかするまでは現役を続けることになった。ちなみにこれが第三のネタ、異性慣れさせるための現役続行である。後にも先にもこいつだけじゃねぇかな……?
年明け始動戦はドバイシーマクラシック。2014年のドバイシーマということで、もうみなさんお分かりだろう。
はい、あの鬼婦人・ジェンティルドンナが出走してくるレースである。
ジェンティルドンナは一応牝馬。古馬になると馬っけは出さなくなった。成長したが牝馬に慣れろお前は。
それでもこれまでの実績から1番人気。きっと勝ってくれるだろうと誰もが思っていた……レース前までは。
レース本番。ヴァンキッシュウォリアーは5番手で追走。ジェンティルドンナは馬群に囲まれており、抜け出すのに手間取っていた。
最後の直線。抜け出したヴァンキッシュウォリアー、馬群で手間取るジェンティルドンナ。これはもう勝ったな!と酒を傾けていたファンが多い中で……なんとジェンティルドンナが横っ飛びで包囲網を抜け出してきた。えぇ?
包囲網を力業で抜け出したジェンティルドンナはヴァンキッシュウォリアーへと襲い掛かる。逃げるヴァンキッシュウォリアーだが、ジェンティルドンナの勢いに負けて2着と後塵を拝した。
2着。これがヴァンキッシュウォリアーの初敗北である。やっぱ牝馬に土つけられたかコイツ……。
余談だが、この頃になると気性はまともに。というよりは、ハイムリックの死去以降人(馬?)が変わったかのように真面目になったのだ。真面目になったのにネタには事欠かない馬よ……。
■低迷する古馬戦。それでも実力は確か
その後は中距離路線に狙いをつけて進むことに。調教相手に牝馬をあてがうなどいろいろと対策を講じたものの、一考に慣れる気配がない。慣れさえすればすぐにでも引退できるのに、難儀なものである。
次走にはプリンスオブウェールズステークスを選択。愛チャンピオンステークス以来となるザフューグに凱旋門賞以来のトレヴがいたのだが……さすがに二度目は慣れたのか大丈夫だった。
ただし、初対面であるダンクに後ずさりしていた。コイツホンマに。
それでもレースは真面目に走る。お得意の好位追走のスタイルでザフューグを4馬身差で下した。安心していいのかよく分からん。
次走には二連覇をかけてキングジョージへ。今回は……牝馬が1頭出走してきていた。
タグルーダ。英オークスを制して参戦してきた若き女王であり、3番人気と結構高かった。
対する1番人気ヴァンキッシュウォリアー……年下の牝馬相手にビビり散らしたかのような動きをする。情けなくないのかお前。
とにかく出走。ヴァンキッシュウォリアーはというと。派手に出遅れた。おい。
派手に出遅れ、道中掛かりっぱなしでいいとこなしの5着。なんとか掲示板を確保できたと言わんばかりの凡走だった。仮にもカルティエ賞年度代表馬を受賞した馬の走りか?これが。
いい加減牝馬に慣れてほしいと思う今日この頃。でもどうにもならなかった。陣営の苦労が伺えるわ本当に……。
■圧倒的なラストラン。並ぶものなしの強さ
続いては凱旋門賞に直行。結構レース間隔が空くが大丈夫か?と心配される。
凱旋門賞の相手にはまたしてもトレヴ。こちらも年明け以降調子を崩しており、前走のヴェルメイユ賞も4着といいとこなし。前年度凱旋門賞を沸かせた2頭が、今年に入ってからは何とも言えない成績を残している現状だ。
この年の凱旋門賞には日本から3頭。ハープスターにゴールドシップ、ジャスタウェイが出走していた。
そしてヴァンキッシュウォリアー。近くにいたハープスターに馬っけを出しながら後ずさりをしていた模様。鞍上にいた河田の奇怪なものを見る目はもはや芸術である。
レースはいつもの好位追走で進む。4番手の良い位置につけていた。
……良い位置につけていただけであり、道中ずっとトレヴが近くにいたせいでヴァンキッシュウォリアーは全然集中していなかったらしい。
精彩を欠いた状態で絶好調状態のトレヴに勝てるはずもなく。トレヴの2着に敗北した……精彩欠いてるのに2着なのがヴァンキッシュウォリアーのポテンシャルを物語っている。
もうこのまま引退か?さすがに牝馬には慣れてきただろ、と周りも心配する頃合い。さすがにこの頃になると牝馬に慣れてきた(当社比)ので今年度いっぱいで引退することが決まった。
ラストランには英チャンピオンステークスが選ばれる。なんかハレヒノカイザー産駒ってラストランに英チャンピオンステークスが選ばれがち。
ちなみに当日は牝馬がいなかった。これはきっとヴァンキッシュウォリアーの本気がみられるとファンは大興奮。突き抜けた1番人気での出走となる。
で、レースはというと。好スタートからの2番手でレースを進めたかと思えば、最後の直線で他馬を一気に突き放しての15馬身差勝利を収めていた。だから牝馬がいる時といない時で極端すぎるんだよお前は!
最終的な戦績は14戦11勝2着2回。GⅠを8勝するなどの活躍を残し、ラストランで圧倒的なパフォーマンスを見せたもののあまりにもネタ臭が凄いせいでそっちばかりが擦られる馬である。
ただ、誤解しないために伝えておくがヴァンキッシュウォリアーはマジで強い。万全の状態で出走したらたとえ牝馬がいてもちゃんと勝ち切ることができる。いなければどうなるかは、ラストランが証明しているだろう。
色々と愛される名馬。それがヴァンキッシュウォリアーだ。
■競走馬としての評価
他のハレヒノカイザー産駒に漏れず、快速を武器にしている。
とりわけヴァンキッシュウォリアーは瞬発力に優れており、わずか数完歩でトップスピードに乗ることができた。ついぞ出る機会はなかったものの、スプリンターとしても大成できただろうと証言されている。
ややスタミナに不安が残る血統ではあるが、エプソムダービーやキングジョージを制することができた。これは父のような賢さがあったからだと陣営は口を揃える。
レースにおいては優等生そのものであり、普段の気性難っぷりも鳴りを潜めていた。これについては「自分の我を通すよりも負けることの方が嫌だったのだろう。自分よりも人間の方がレースを知っていると理解していた」と、調教師だったハイムリックは言っていたらしい。これは彼の妻も同じようなことを証言している。
反面、消耗戦はやはり得意ではないらしく、スタミナがある方ではないとも言われている。先行というよりはどちらかと言えば捲りを得意とした競走馬だったようだ。
スピードに関しては天下一品、ギアが入れば勝てるものはいないと欧州では評判。トップスピードならばあの怪物フランケルにすら並ぶだろうと言われるほどだ。
事実、ラストランの英チャンピオンステークスの末脚は群を抜いており、2着のノーブルミッションが手も足も出ずに千切り捨てられていく光景は記憶に新しい。決して遅くはないのに、ヴァンキッシュウォリアーはさらに速かったのである。
スタートも悪くない。気性も(レースに限定すれば)大丈夫と、欧州ではオーソドックスな好位追走のスタイルを選んでいた。出遅れたことはほぼない。
……だからこそ、本馬の唯一の弱点とも言っていい牝馬に弱いことがどこまでも足を引っ張っていた。牝馬がいるだけで弱体化を食らうのはあまりにも痛すぎる。
しかも、その下がり幅も凄い。普段の実力の半分も出せていないんじゃないか?とまで言われる始末。どこまでも牝馬に弱い馬だった。
■牝馬恐怖症?
何故こんなにも牝馬に弱いのか?その原因に関して、生産牧場のスタッフに心当たりがあるらしい。
なんでも当歳馬の頃、1つ上の牝馬に蹴られかけたことがあったとのこと。幸いにもケガはなかったが、その日以来ヴァンキッシュウォリアーはその牝馬に近づくことはなくなった。
おそらくだが、この経験を覚えていたのだろう。彼に牝馬は怖い存在であると刻みつけられたのではないか?とスタッフは推測している。
馬っけを出すことから女好き。でも身体が恐怖の象徴であることを覚えている……だからこそ、馬っけを出していても恐ろしさから後ずさっていたのではないか。それが陣営の推論だった。
実際のところどうなのかは分からない。ただ、牝馬に対する恐怖症は種牡馬をやる頃にはどうにか緩和。種付け業務には影響が出ないようにはなった。
なお、ネット民からは結構ネタにされているし、なんならヴァンキッシュウォリアー陣営もかなりネタにしている。というか陣営が最大手と言わんばかりにいじり倒している。
「これくらいのハンデがないとヴァンキッシュウォリアーは千切っちまうからね!HAHAHA!」みたいなコメントも日常茶飯事。「チェリーボーイなのさ、彼は」とか主戦騎手直々に言われるのはこいつぐらいのもんだろう。
ただ、再三いうようにヴァンキッシュウォリアーの強さは世代でも最強格。本気を出せばフランケルにすら比肩するレベルとまで言われている。
最高レーティングは英チャンピオンステークスの137。あのレースの圧倒的なパフォーマンスは、まさしく時代の最強と呼んでも過言ではなかったレベルだ。
■欧州での価値
ヴァンキッシュウォリアーの種牡馬価値、それは凄く高い。ハレヒノカイザー自体がバイアリーターク直系ということもあり、欧州でも絶滅寸前の血統だった。
ドクターデヴィアスにインディアンリッジがなんとか奮闘しているものの、淘汰されていくのが目に見えていた現状。そこに彗星のごとく現れた快速を武器にして戦うヘロド系。こんなん需要が生まれない方がおかしいで。
初年度から結構な数の牝馬が種付けされる。名牝と呼ばれる牝馬もおり、期待がかけられているのが分かるお仕事はキョドり散らかしていたけどどうにか遂行しました。ちなみに初年度種付け料は日本円で1500万円である。
そんでもって走るかどうかが期待される中……初年度から大ブレイクしたのである。
父から遺伝したスピードが産駒にも遺伝。ガリレオとリーディング争いをするほどの活躍。まさかこの時代にヘロド直系がガリレオとリーディング争いするとは思わんかったと馬産家も大喜びである。
加えて、初年度産駒からデューハーストステークスを制したスペリオルクラウンを輩出。スペリオルクラウンはその後2000ギニーを制したことで、父との2代で2000ギニーを制したことになる。
一時は絶滅寸前だったバイアリーターク系改めヘロド系。それを持ち直してくれるかもしれない救世主が現れたのだ。種付け料は年々上がり続け、その血を絶やすなと大切に管理されている。
というか、ハレヒノカイザーの功績があまりにもでかすぎる。本当に救世主だよ。
この大ブレイクもあってか、欧州でのハレヒノカイザーの権威はものすごく大きい。中には信者とまで言うべきファンがいるんだとか。それゆえにいつまでも擦られるフランスである。そろそろ許してやれって?無理に決まってんだろ。
余談だけど女王陛下もハレヒノカイザーの産駒を所持している。GⅠ級レースも制しており、こちらも種牡馬としての未来が明るい、かもしれない。まだ1年目だから分からんね。
■世界に名を轟かせる(良い意味ではない)
ヴァンキッシュウォリアー、実はアメリカのRhodolite Garnet(ロードライトガーネット)と日本のソルサンクトゥムと合わせてカイザー産駒三大ネタ馬とかいう大変不名誉な呼ばれ方をしている。誰が呼んだか三馬カ。
カイザー産駒にも気性が悪い競走馬はいるが、結果を残してなおかつ気性難と言われるとこの3頭があまりにも目立っているのだ。ただでさえ全員GⅠ競走を8勝以上している猛者、注目が集まるのも仕方ないと言えるが……。
この3頭の中ではソルサンクトゥムが比較的マシ。アイツは出遅れ癖が酷いだけで他はまぁまぁ許せる範疇だから。次点でヴァンキッシュウォリアー。童貞臭いムーブするけどこちらも比較的マシな部類。
ただし、ロードライトガーネットに関しては満場一致で一番ヤバいと口を揃えられている。牝馬なのに、コイツがカイザー産駒の中で一番ヤバいとまで言われているのだ。
ネタ的な美味しさもあってか、三馬カと呼ばれる始末。しかも一番勝っていて気性が穏やかなオーストラリアのスプリント女王・Sunlight Ocean(サンライトオーシャン)がいるから余計に目立つ。引退後もネタを擦られ続ける馬である。
■関連エピソード
・育成牧場時代にスタッフを病院送りにしたことがある。気性の悪さは当歳馬の頃からだったそう。
・人間嫌いというわけではない。本馬からしたら遊びの範疇だったかもしれない……らしい。遊びで病院送りはたまったもんじゃねぇよ。
・特に懐いていたのは調教師であるハイムリック。ハイムリック調教師にだけは何もしなかったらしい。だからこそ、彼が死去した時はかなり落ち込んでいたそうな。
・馬体は480kg前後。ただ、あまり食べる方ではなく小食。
・大好物は青草。変なものを混ぜるとキレ散らかす。
・種牡馬時代の最初の方では相変わらず牝馬を苦手そうにしていたが、今は慣れてきたのかしっかりと仕事をこなすように。とにかく一安心だ。
■血統表
| ハレヒノカイザー | トウカイテイオー | シンボリルドルフ | パーソロン |
| スイートルナ | |||
| トウカイナチュラル | ナイスダンサー | ||
| トウカイミドリ | |||
| ブランシュテル | ダイタクヘリオス | ビゼンニシキ | |
| ネヴアーイチバン | |||
| ブランウラノス | タイテエム | ||
| プリテイキャスト | |||
| Dingle | デインヒル | Danzig | Northern Dancer |
| Pas de Nom | |||
| Razyana | His Majesty | ||
| Spring Adieu | |||
| Rainbow Lake | Rainbow Quest | Blushing Groom | |
| I Will Follow | |||
| Rockfest | Stage Door Johnny | ||
| Rock Garden |
■その他
随時更新予定です
ネタとして美味しすぎる。